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『ニッチ 新しい市場の生態系にどう適応するか』 [☆☆]

・ギャップがオフィスカジュアルの代名詞となったのも、ちょうどこの頃だった。まるで、ギャップが各職場に制服を降ろしているかのように、誰もがギャップのチノパンと無地のTシャツを着ていて、誰が誰だか見分けがつかないほどだった。

・ギャップは広大な真ん中の市場を捨てて、失いつつあった若者層の奪還に夢中になった。だが、それが間違いだったと気づいて再び真ん中に狙いを定めようとしたときにはもう、真ん中は存在しなかった。

・真ん中の喪失は人々の生活に大きな影響を与えている。ものを買うときの考え方から、観るテレビ番組や愛読する新聞、政治家のメッセージの発信の仕方、パートナーの探し方にまでその影響は及んでいる。その結果、誰もが他者とは違う存在になりたがるという奇妙な世界になり、どんなものにも「ニッチ=生息できる場所」ができた。

・インターネットの登場によって、消費者は自分が求めているものを狙い撃ちで捕食できるようになり、選択肢も豊富になった。

・文化人が「ミドルブラウ」という造語を生み出した。これは、「文学の趣を備えつつ大衆のニーズを満たすもの」を意味する。高尚な文化と前衛的なものを原料に、大量生産の技術を使ってみんながいいと感じるものが量産されるようになったのだ。

・結局、ウールワースに並んだのは、特別安くもなければ、特別変わり映えもしない商品だった。なぜそこで売られているのかもわからなければ、ほかの店ですぐに見つかるようなものばかり。

・スターバックスをはじめとする大手コーヒーショップチェーンは巨大産業に成長したが、しだいにスペシャルティコーヒーを出す店というよりはファストフード店のようになっていくと、筋金入りのコーヒー党の一部は幻滅し店に寄りつかなくなった。

・有権者が投票箱で政治家を決める傍ら、政治家のほうも密かに有権者を選び始めているということだ。

・バラク・オバマの選挙対策チームは、グーグルへの広告出稿に500万ドルを投じ、検索頻度の高いキーワードを買い占めた。その結果、グーグルの検索ウィンドウに「バラク イスラム」と入力されれば、彼がイスラム教徒ではないとわかるページが表示され、「糖尿病」と入力されれば、ジョン・マケインが提唱する医療改革案では糖尿病の治療に保険が適用されなくなる恐れがあると訴えるサイトが表示されるようになった。

・消費者は、自分が欲しいと思うものならわかっているかもしれないが、欲しくなるかもしれないものについてはわからない。欲しくなりそうなものをいつも探し求めているわけではないからね。

・テレビのチャンネル数が増えすぎて、テレビ批評家という存在はもはや絶滅寸前だ。結局、テレビ雑誌の編集者にすれば、ほとんどの読者が見ないであろう番組の批評に何の意味がるのか、ということになるのだ。

・自分が本当に求めるもの、それも、どこを探しても無料で手に入らないものにしかお金を払おうとはしないだろう。

・人は、自分の好きなものや自分が属する会社を自分自身のアイデンティティとしてとらえるものなので、ある種の帰属意識を人々に植えつけた者が大きく繁栄する。

・主流に属さず自分たちだけで群れている、という感覚を視聴者に植えつける――クチコミを広めてもらいたいなら、そうした意識がとても重要なのだ。

・19世紀や20世紀では、自分が住む家や職場が人々のアイデンティティで、それが絶対的な存在でした。ですが現在では、思い出や文化、また、人々が持ち歩けるもの――ノート、携帯電話、フェイスブックのホームページ、ツイッターのフォロワーなど――が人々のアイデンティティと深く結びついています。そういうものが彼らの居場所なんです。

・2001年の国勢調査のとき、調査票の回収日が近づいてきた頃に1通のメールが国内を駆け巡った。それは、1万人の英国人が宗教の欄に「ジェダイ」(映画『スター・ウォーズ』シリーズに登場する架空の集団)と記入すれば、国はそれを宗教として認めざるをえないというものだった。39万人がメールの指示どおりに記入した結果、「ジェダイ」は英国で4番目に大きな宗教となってしまった。

・ネットショップも同じだが、特別感を漂わせれば価値は上がり、どこででも手に入ると思われたら価値は下がる。

・インターネットによって、現実に出会うことが可能なありとあらゆる選択肢を目にするようになったので(酷な言い方をすれば、品定めできるようになったので)、出会った人を過大評価するのではなく過小評価しがちになる。

・自分は特別であると自分で打ち出さなかったら、その他大勢の中に埋もれ、価値が下がるというわけだ。

・自分と同じことに興味を持つ人が簡単に見つかるようになった。それは素晴らしいことだが、、共通の関心を持つ者どうしだけで独自の世界観を固めてしまうと、世間から取り残された種になってしまう。

・アメリカ人は、「同じような考え方を持つ者どうし」で集団を形成することが当たり前になりすぎて、ほんの数キロ離れたところに暮らす「あの人たち」のことを知りもしなければ、理解もできなければ、どんな人たちなのかと想像すらしない。

・今は、誰もが他の人と違う存在になりたがっているので、ハーレーダビッドソンのような大手ブランドのバイクですら、購入者の手によって装飾を施されたりカスタマイズされたりしている。

・みんなが同じ映画やテレビ番組を観ていたのは、他に観るものがなかったからであり、みんなが新聞を読んでいたのは暇を持て余していたからであり、ハイストリートに並ぶ店をうろついていたのは、他に行くところがなかったからだ。

・市場のグローバル化がさらに進めば、どんなニッチでも利益を上げることが可能になる。




ニッチ: 新しい市場の生態系にどう適応するか

ニッチ: 新しい市場の生態系にどう適応するか

  • 作者: ジェームズ ハーキン
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2013/01/18
  • メディア: 単行本



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