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『星を創る者たち』 [☆☆]

・重大な事故や労働災害は、かならず些細な齟齬をともなっている。日常的な作業に生じたわずかな不具合が、いくつも重なって破局をもたらすのだ。

・露天現場で使用する重機械や輸送車両は、電力で駆動する型式が主流になっている。燃料電池や水素エンジンを動力源にしたのでは、水素の他に酸素も搭載せざるをえなかった。

・端末の画面にデータを表示させれば、場所ふさぎなプリントアウトなど出力する必要はなかった。

・誤差には二種類ある。方向性のある誤差と、ランダムに発生する誤差だった。

・技術者といっても研究職に近く、作業効率よりも発想の柔軟さを重視していた。

・カメラにむかって解説しているのかと思うほど、冷静で客観的な話し方だった。もしかすると本当に、音声記録をとっていたのかもしれない。

・開発に手間と時間をかけるくらいなら、既存の技術から磁場の影響が少ないものを選択する方が現実的だった。

・眼についた事例が多いというだけで、客観性があるわけではない。

・木星の大気は、もっとも軽い二種類の気体――水素とヘリウムで構成されている。そのような大気中で浮力を維持できるのは、周囲の大気よりも高熱の水素ガスだけだった。

・業務に私情を持ちこむことを、極度に嫌った部長だった。清廉潔白というより、足をすくわれないための用心だろう。さもなければ、管理職に昇りつめることは不可能だった。

・急がばまわれということもある。拙速で無理をするよりは、確実な方法を選択すべきだった。

・躊躇してはならない。ほんの少しでも立ちどまれば、迷いはさらに大きくなる。自分の行動に自信が持てなくなって、足踏みをくり返すことになるだろう。それを避けるには、目標を見定めて動きつづけることだ。

・「技術顧問」も多かった。といっても、技術的な助言に期待したわけではなさそうだ。復旧作業の放棄と事故現場からの全面的な避難という現在の方針を、権威づけるために配置されたとしか思えない。

・過酷な環境下にある工事現場では作業員一人のコストが非常に高い。何の仕事もしなくても、そこに存在しているというだけで経費が必要になってくる。

・緊迫感のある映像がともなっていなければ、報道する価値がないと考えているようだ。その結果、迷惑をかえりみず現場に肉薄することになる。

・重要なのは観測者の注意を引くことで、情報の伝達ではなさそうだ。

・前例がなければ、自分たちが作ればいい。我々が先駆者と考えれば、ビジネスチャンスは無数にあるはずです。

・暗号は資格や権限を有するもの以外の解読を拒否し、可能なかぎり強度をあげていきます。ところがメッセージの場合は、不特定多数の相手に意味を伝えなければなりません。

・かりに地球の死に立ちあうことになったら、粛々と殉じればいいと公言するものもいた。無論この主張には、明確な嘘がふくまれている。詭弁ですらなかった。殉死の意思をあきらかにしたものは、誰もその時期までは生きられないのだ。





星を創る者たち (NOVAコレクション)

星を創る者たち (NOVAコレクション)

  • 作者: 谷 甲州
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2013/09/26
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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