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『屍者の帝国』 [☆☆]

・規格の揃わない木偶の集団を軍事運用するのは不可能だ。

・集団運動の効率は最も能力の低い者によって制限される。

・個別の戦闘能力は高くとも、集団としての運用ができなければ軍事利用は不可能だ。数の力の前にはあらゆる細工は無力となる。

・もしも地球が陸地だらけの星だったなら、大英帝国は今の繁栄を手にすることはなかっただろう。統治には速度が必要であり、世界を線でつないで統治下におきつつある大英帝国と、鈍重に土地を守って面を拡大していく強権的なロシア帝国の勝負の帰趨は明らかに思える。

・多くの帝国が興り、滅びた。中央アジアは数多の帝国の墓地とも言える。

・寒さの中では諦めるしかありません。一面の雪野原を行く場合は特に。体の力を抜いて全てを受け入れ、寒さ自体と同化してしまうよりない。抵抗は無意味です。

・世の中は自分から名乗らない奴らと、質問を質問で返す奴らで一杯だ。

・医学部で過ごす数年間は、ほぼ死体の観察に費やされるといっても過言ではない。ひたすらの暗記と実見は退屈極まるけれど、物質を見分ける力とはそうして養うことしかできない。思い込みを見るのではなく、経験から理解を組み立てていく。

・コレラは戦場でも惨禍を引き起こし、下手をすると戦傷者以上の被害を両陣営に平等に与え、奇妙な平和をもたらしもした。

・吸血鬼の伝承と、ペストやコレラの流行には関連性が見られる。コレラはその特性上、水源の異なる地域へ伝播しにくい。吸血鬼は生身で川を渡ることができないとされる事実と考え合わせると興味深いとは思わないかね。

・もっともらしいお話が当座の時間稼ぎとして働き、他の可能性を封じ込めておく機能を果たす。

・複雑でかつ欠陥のないものは存在しないもの。統計的な性質として常に欠陥は存在する。ただ修正と改善のスピードの遅い速いが存在するだけ。

・鶏とは、卵が卵を産むための手段にすぎない。

・規格化された歯車なんてものは幻ですよ。どんなものでもそれぞれに個性はあるものでね。

・「あんたは、生命とはなんだと思う」 「性交渉によって感染する致死性の病」

・互いに通じることのない言葉を喋る信仰者同士がぶつかり合っても益はない。十字軍や聖戦から人類が学んだこともあるわけだ。

・民衆とは、大局を見ることができず、片言隻句の揚げ足を取り、発言の真意を酌もうともせず、次は我が身に降りかかるはずの悪法を積極的に支持しさえする生き物だ。

・機関銃が登場したとき、非人道兵器とみなされた過去をもう人は忘れた。

・脳自体は痛みを感じる組織を持たない。他の組織の痛みを代わりに感じてやるだけだ。

・ただ吹く風と、誰かが吹かせている風は異なる。

・天才たちの世紀は終わり、大量生産、大量消費へ向けた技術の時代が訪れる。天才の失われた時代では、天才にしか造りえない存在は生まれえない。





屍者の帝国

屍者の帝国

  • 作者: 伊藤 計劃
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/08/24
  • メディア: 単行本



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  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2012/08/27
  • メディア: Kindle版



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