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『動乱のインテリジェンス』 [☆☆]

・永遠に交わらない平行線を交わったとみせる技こそ外交である。

・民族というもの自体が近代的な現象であり、言ってみれば近代の宗教なんだと。

・21世紀の世界で国家が生き残るには、帝国じゃないとだめなのです。ヨーロッパは、帝国への道を歩むにあたって、EU・欧州連合という形を選んだ。

・じつは、戦後の日本にも外部領域があるんですよ、これが沖縄です。ここは天皇信仰を持っていない。歴史的な経緯が違う、自己認識が違う。そういうところを包摂できるのが帝国です。

・帝国は必ずしも広大な領土を持つ必要はない。しかし異質なるものを内に包み込む力を持っていなければならない。外の力を包摂し、自己に吸収して、初めて生き残ることが出来る。

・永世中立の条件というのは、外国軍隊が駐在していないこと、軍事同盟を結ばないこと。それと、隣接国が全部、中立化を承認することなのです。

・妥協する時っていうのは、原則以外のところは全部譲っちゃえばいいと思う。

・厚い氷に閉ざされていた北極海に新たな航路が拓かれつつある。いわゆる北西航路と呼ばれる海の道は、一大流通革命を起こそうとしています。欧州の港を出た対氷タンカーは、北極海を通り抜けて日本海や太平洋に至り、中国の港に続々と姿を見せています。コストは三分の二に削減され、時間は何と半分になります。

・将来、中国は必ず食糧危機に見舞われる。これは日本の農業、とりわけコメ作り農家にはチャンス。

・世界史上、航空母艦を5隻以上運用した国は、日本とアメリカだけしかないんです。

・ウクライナは旧ソ連邦の兵器廠そのものであり、核兵器も多く配備されていました。その点でウクライナこそ、世界の枢要な兵器廠でもあり、戦略上の要衝でありました。

・大切な外交交渉では、双方からの通訳がいます。外交交渉で相手側が用意した通訳に頼ってしまえば、正確さもさることながら、相手のペースになってしまう。

・不良少年にも、よい不良少年と悪い不良少年がいる。よい不良少年は、社会や親が悪いのでこうなったとは決して言わない。ところが、悪い不良少年は、社会や親のせいにする。

・自らが行った戦闘に対して、自らが評価する。そうすると、大成功か成功かのいずれかにしかならないわけです。この大成功と成功を、帝国陸軍が中国で何度も続けた結果、日本は壊滅しました。

・正論を述べているとみえる人も、しょせんは軍事オタクに過ぎない感じがします。日本の軍事評論家が、プラモデル愛好家とあまり変わらないのと似ています。

・今回の大震災によって、東アジアの新しい局面の幕が開けたと受け取るべきなんです。1986年のチェルノブイリ原発事故は、ソ連の統治機構が崩壊する引き金となったことを忘れてはいけない。

・危機の指導者というものは、自分が限られた知識しか持っていないことを自覚することが何より大切だ。知っていると奢る指導者ほど過ちを犯しやすい。

・インテリジェンスにとって一番の障害は何か。ずばりナルシシズムなんですよ。インテリジェンスの要諦は、自己を冷静にみつめて、対象として突き放し、時に自分をも徹底的に客体化し、怜悧に決断することにあります。ナルシシズムはその対極にある。

・「合意は拘束する」といった原則はローマ法の約束事で、それが近代法の原点になりました。しかし、ギリシャではこれが通用しない。ギリシャの古典劇には、「約束はしたが、心はそれにとらわれていない」というような台詞がよく出てきます。





動乱のインテリジェンス (新潮新書)

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  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/10/26
  • メディア: 単行本



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