『独裁者のためのハンドブック』 [☆☆]
・政治とは、政治権力を握り、それを保持することである。政治とは「我ら、人民」一般の福祉に関することではない。
・私たちは、政治について論じるときは国益とか公共財とか国民一般の福祉といったファジーな概念について考えたり話したりするよりも、特定のリーダーを名指しして、その行動や利害について考えたり、話したりする習慣を身につけなければならない。
・政府や組織の態度の違いは、取り換えのきく者、影響力のある者、かけがえのない盟友の絶対的、相対的なサイズの違いによる。
・必要に迫られるまで決して手の内を明かさない、これがうっかりと秘密の意図を悟られない方法である。
・賢明なリーダーは、権力掌握のために働いた盟友をそれほど考慮しない。カストロの側近の多くがどんな末路を辿ったか思い出してほしい。
・かけがえのない盟友を排除し、入れ替え、絞り込んだ末にこそリーダーの将来は、安泰になる。
・頂点に立つことができない者を身近なアドバイザーとして選ぶことは、重要なことである。イラク大統領としてフセインが、キリスト教徒のアジズをナンバー2の地位に就けたのは、決して偶然ではない。
・リー・クワン・ユー率いる人民行動党(PAP)は、選挙で議席を独占したが、この議席独占は多くのシンガポール市民が頼りにしている公営住宅への予算配分によって強化されていた。選挙のときPAPに票を集めるのに失敗した地区では、公営住宅の供給や修繕のための予算が削減された。
・多くの進歩的思考を持つ者が、カストロのキューバや金正日の北朝鮮のような抑圧的国家における教育の質について激賞している。そして、それはいい点を突いている。キューバも北朝鮮も、初等教育が充実している。
・ばか正直な人は、ひどい政治体制をみても、その中で国営の保健機関や初等教育といったものから、民主国家よりも望ましいものと考えてしまう。
・独裁者は、農民を働くことができる程度に健康に、仕事ができる程度に教育を受けさせようとする。
・もし、反乱が起きれば、独裁者は自分が造った道路に悩まされることになる。粗悪なインフラは、多くの国ではわざとそうなっているのであり、思いがけない不幸のせいではない。
・もし、政治的生き残りに必要な悪しき振る舞いに関与する覚悟ができていないと皆が知るなら、その暴虐であることにためらう者の地位は、長続きしない。
・モンゴルのチンギス・ハーンは、この原理を知っていた。もし、即座に降伏しなかった町に彼が来たら、彼はそこで暮らしているすべての者を殺し、そして、次の町にそのことを知らせた。そのため、結果的に、彼は多くの町の人々を殺すことなく終わった。
・人々は、自分たちに利益をもたらしてくれるリーダーを支援する。いわゆるバラ撒きと呼ばれる援助が一般的には非難されるものの、そこに金が流れ込むとき、いずれの選挙区でも愛されるのである。
・穀物を貯蔵する技術は、ファラオの時代から知られ始めていたのに、なぜ北アフリカの子供たちが飢餓に苦しめられ続けなければならないのか、不思議に思わざるをえない。
・援助によって貧困が撲滅されなかったのは、援助国が貧困を救うに足るだけの金を送らなかったためではない。むしろ、被援助国の有権者の生活を向上させ、それによって在職中の指導者が再任されるという目的を達するのに充分な額が送られている。
・いいことをしていると思い込みながら、本来よりいい生活を送りうる多くの貧しい人々を苦しめていることには気づかないでいる、善意の人々によって進められてゆくのである。
・パキスタン政府は援助を受け入れ、国境地帯での民兵の掃討を強めた。2010年までにタリバンのナンバー2の幹部を逮捕したが、タリバンの脅威を完全に払拭しないよう注意を払った。タリバンの一掃は、アメリカからの援助の流入の終わりを意味するからである。
・平均してみると、非常任理事国に選出された国は選出されていない国に比べると、その経済成長はゆっくりとしたものになっており、やや民主主義が抑制的になり、また報道の自由が制限されがちになっている。
・安保理での二年間の任期中に、選出された国は選出されていない国に比べ、経済成長率は1.2パーセント下回っている。
・援助は、独裁者に、問題解決を妨げようとする動機を与えてしまう。援助国からさらに金を巻き上げる口実がなくなってしまうのである。
・彼らは、世界の本当の貧しい国を助けたいけれども、自腹を切らずに支援したいというのである。
・あらゆる革命や大衆運動は、民主的改革、新政府が虐げられた者を掬い上げ、苦しみを和らげることを約束することから始まる。これは、起きあがる人々を仲間に引き入れるための必須の要素である。
・自然資源があることで民衆の支持を買い取る必要がなかったのである。ビルマは、天然ガス、木材、宝石、金、銅、そして鉄の一大輸出国である。
・ビルマは、貧しい。しかし、タン・シュエは豊かである。彼は幸運であった。なぜなら、彼は民衆の労働に依存する必要がなく、冷酷にも弾圧することができたからである。
・革命のチャンスというものはしばしば経済がほぼ崩壊しているときに訪れる。ほぼ崩壊しているとき、指導者はもはや軍の忠誠を買うことができない。
・民主国家、すなわち多くの者に拘束される支配者に開戦を促すときには、公共の福祉が強調される。他方で、孫子の教えは、小さな盟友集団を頼みとする支配者にとっては妥当である。
・もし当初から軍備が不足しているか、再三の補給が必要になるとすれば、指揮官が必要な資質を欠いているからである。そのような場合の孫子の助言は、国家の蓄えを食い潰すよりは、戦わずに退く方が得策であるという。
・指導者がなすべきことは、国民に、攻撃されていると告げ、不戦論者を、愛国心に欠け祖国を危機に晒すものだと糾弾することであり、これはどこの国でも同じである。
・エチオピア軍司令部は、重火器が敵の手に渡ることを恐れた。エチオピアは、幸いにもかなりな規模の空軍を具えていたので、立ち往生している同国人と友軍将兵の救出を試みる代わりに、二時間にわたる空爆を敢行し、すべて灰燼に帰した。
・エチオピア軍のモットーは「使える兵器は置き去りにするな」で、エチオピアの将軍に言わせれば「撤退するときには、兵器は破壊する方がいい。これは戦争の鉄則というものだ。もしも、兵士が兵器から離れることができないなら、双方まとめて爆破してしまえ」ということになる。
・民主的指導者は政策を成功させる必要があり、さもなければその地位を失う。こうした理由から、彼らは勝利が見込める場合にだけ戦争をする。
・エジプトが成熟した民主国家になったときには、その指導者は勝利を確信した暁にはイスラエルと戦うようになるだろう。
・現実の政治とビジネスの世界では、一歩前進、二歩後退で問題に対処し、結果的に直面する問題に対して何の進歩もないことがやたらと多すぎる。
・万人にとってのユートピアを夢見るなど時間の浪費であって、多くの人々のためにより良い世界で築くという難事業に取り組まないための口実に過ぎない。
・私たちは、政治について論じるときは国益とか公共財とか国民一般の福祉といったファジーな概念について考えたり話したりするよりも、特定のリーダーを名指しして、その行動や利害について考えたり、話したりする習慣を身につけなければならない。
・政府や組織の態度の違いは、取り換えのきく者、影響力のある者、かけがえのない盟友の絶対的、相対的なサイズの違いによる。
・必要に迫られるまで決して手の内を明かさない、これがうっかりと秘密の意図を悟られない方法である。
・賢明なリーダーは、権力掌握のために働いた盟友をそれほど考慮しない。カストロの側近の多くがどんな末路を辿ったか思い出してほしい。
・かけがえのない盟友を排除し、入れ替え、絞り込んだ末にこそリーダーの将来は、安泰になる。
・頂点に立つことができない者を身近なアドバイザーとして選ぶことは、重要なことである。イラク大統領としてフセインが、キリスト教徒のアジズをナンバー2の地位に就けたのは、決して偶然ではない。
・リー・クワン・ユー率いる人民行動党(PAP)は、選挙で議席を独占したが、この議席独占は多くのシンガポール市民が頼りにしている公営住宅への予算配分によって強化されていた。選挙のときPAPに票を集めるのに失敗した地区では、公営住宅の供給や修繕のための予算が削減された。
・多くの進歩的思考を持つ者が、カストロのキューバや金正日の北朝鮮のような抑圧的国家における教育の質について激賞している。そして、それはいい点を突いている。キューバも北朝鮮も、初等教育が充実している。
・ばか正直な人は、ひどい政治体制をみても、その中で国営の保健機関や初等教育といったものから、民主国家よりも望ましいものと考えてしまう。
・独裁者は、農民を働くことができる程度に健康に、仕事ができる程度に教育を受けさせようとする。
・もし、反乱が起きれば、独裁者は自分が造った道路に悩まされることになる。粗悪なインフラは、多くの国ではわざとそうなっているのであり、思いがけない不幸のせいではない。
・もし、政治的生き残りに必要な悪しき振る舞いに関与する覚悟ができていないと皆が知るなら、その暴虐であることにためらう者の地位は、長続きしない。
・モンゴルのチンギス・ハーンは、この原理を知っていた。もし、即座に降伏しなかった町に彼が来たら、彼はそこで暮らしているすべての者を殺し、そして、次の町にそのことを知らせた。そのため、結果的に、彼は多くの町の人々を殺すことなく終わった。
・人々は、自分たちに利益をもたらしてくれるリーダーを支援する。いわゆるバラ撒きと呼ばれる援助が一般的には非難されるものの、そこに金が流れ込むとき、いずれの選挙区でも愛されるのである。
・穀物を貯蔵する技術は、ファラオの時代から知られ始めていたのに、なぜ北アフリカの子供たちが飢餓に苦しめられ続けなければならないのか、不思議に思わざるをえない。
・援助によって貧困が撲滅されなかったのは、援助国が貧困を救うに足るだけの金を送らなかったためではない。むしろ、被援助国の有権者の生活を向上させ、それによって在職中の指導者が再任されるという目的を達するのに充分な額が送られている。
・いいことをしていると思い込みながら、本来よりいい生活を送りうる多くの貧しい人々を苦しめていることには気づかないでいる、善意の人々によって進められてゆくのである。
・パキスタン政府は援助を受け入れ、国境地帯での民兵の掃討を強めた。2010年までにタリバンのナンバー2の幹部を逮捕したが、タリバンの脅威を完全に払拭しないよう注意を払った。タリバンの一掃は、アメリカからの援助の流入の終わりを意味するからである。
・平均してみると、非常任理事国に選出された国は選出されていない国に比べると、その経済成長はゆっくりとしたものになっており、やや民主主義が抑制的になり、また報道の自由が制限されがちになっている。
・安保理での二年間の任期中に、選出された国は選出されていない国に比べ、経済成長率は1.2パーセント下回っている。
・援助は、独裁者に、問題解決を妨げようとする動機を与えてしまう。援助国からさらに金を巻き上げる口実がなくなってしまうのである。
・彼らは、世界の本当の貧しい国を助けたいけれども、自腹を切らずに支援したいというのである。
・あらゆる革命や大衆運動は、民主的改革、新政府が虐げられた者を掬い上げ、苦しみを和らげることを約束することから始まる。これは、起きあがる人々を仲間に引き入れるための必須の要素である。
・自然資源があることで民衆の支持を買い取る必要がなかったのである。ビルマは、天然ガス、木材、宝石、金、銅、そして鉄の一大輸出国である。
・ビルマは、貧しい。しかし、タン・シュエは豊かである。彼は幸運であった。なぜなら、彼は民衆の労働に依存する必要がなく、冷酷にも弾圧することができたからである。
・革命のチャンスというものはしばしば経済がほぼ崩壊しているときに訪れる。ほぼ崩壊しているとき、指導者はもはや軍の忠誠を買うことができない。
・民主国家、すなわち多くの者に拘束される支配者に開戦を促すときには、公共の福祉が強調される。他方で、孫子の教えは、小さな盟友集団を頼みとする支配者にとっては妥当である。
・もし当初から軍備が不足しているか、再三の補給が必要になるとすれば、指揮官が必要な資質を欠いているからである。そのような場合の孫子の助言は、国家の蓄えを食い潰すよりは、戦わずに退く方が得策であるという。
・指導者がなすべきことは、国民に、攻撃されていると告げ、不戦論者を、愛国心に欠け祖国を危機に晒すものだと糾弾することであり、これはどこの国でも同じである。
・エチオピア軍司令部は、重火器が敵の手に渡ることを恐れた。エチオピアは、幸いにもかなりな規模の空軍を具えていたので、立ち往生している同国人と友軍将兵の救出を試みる代わりに、二時間にわたる空爆を敢行し、すべて灰燼に帰した。
・エチオピア軍のモットーは「使える兵器は置き去りにするな」で、エチオピアの将軍に言わせれば「撤退するときには、兵器は破壊する方がいい。これは戦争の鉄則というものだ。もしも、兵士が兵器から離れることができないなら、双方まとめて爆破してしまえ」ということになる。
・民主的指導者は政策を成功させる必要があり、さもなければその地位を失う。こうした理由から、彼らは勝利が見込める場合にだけ戦争をする。
・エジプトが成熟した民主国家になったときには、その指導者は勝利を確信した暁にはイスラエルと戦うようになるだろう。
・現実の政治とビジネスの世界では、一歩前進、二歩後退で問題に対処し、結果的に直面する問題に対して何の進歩もないことがやたらと多すぎる。
・万人にとってのユートピアを夢見るなど時間の浪費であって、多くの人々のためにより良い世界で築くという難事業に取り組まないための口実に過ぎない。