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『損したくないニッポン人』 [☆☆]

・同じやりとりを1日に10回ほど繰り返すとさすがに疲れてくる。口癖というより認知症の常同行動のようで私は心配になり、ある日、こう答えてみたのである。

・「景気はよくない」というのはニッポン人の口癖で、「景気がよい」と言う人をこれまで私は見たことがない。いうなれば日本の挨拶のようなもので、その挨拶を集計して日本銀行や内閣府などは景気調査をしているのだから、景気がよくなるわけがないのだ。

・貧乏は客観的な経済状況だが、「貧乏くさい」は生活態度、いうなれば人格である。

・「買ってはいけない」と禁じられるとあれも欲しいこれも欲しいと欲望が広がるのだが、こうして「買わなくてはいけない」と義務づけられると欲望がしぼむ。

・有名ファッションブランドも必ず、異常に高い商品を陳列している。これは売り物というより、「この品と比べると、他のすべての商品が買えそうに見えてくる」ようにするためのいわばダミー。専門用語で「アンカー」と呼ばれるものなのだ。

・人は安いから買うのではなく、高いモノがあるから買いたくなる。高い値段があるから安さを感じて買いたくなる。これは17世紀から存在する伝統的な販売戦略なのである。

・ヒッピー世代の彼女はポイントで体制に反逆していた。現金は一切使わず、すべてポイントが付くクレジットカードで決済し、ダメージを与えた後に「切る」。企業に損させることが彼女の得ということらしい。

・大体、モノを買うってことは騙されてあげるってことじゃない。騙される覚悟がなければ、何も試せないでしょ。

・買えないから買わないのは貧乏だが、損したくないから何も買わないというのは貧乏くさい。

・値段は同じほうがいいと思います。いつも同じ定価のほうが。だって値段がいつも同じなら、買いたい時に買えるじゃないですか。セールや割引があったら、買いたいと思ってもその時まで買えなくなる。定価なら買いたいと思った時にいつでも買えると思うんです。

・僕は、安いからここを買ったんですけどね。ケーブル回線を入れたり修繕をする時に、必ず「そんなのやらなくていい」と反対する人がいるんです。人の迷惑を考えない人。安いマンションには、それなりの人が入るんです。

・博物館には半分に切った小判が展示されている。これは半分の価格を渡すための「切り使い」らしい。そもそも小判の形というのは、平たく延ばすことで中に異物が入っていないことを示し、切り取りやすくするためだったそうなのである。

・家計に貨幣が入ってきたのは1960年代以降ですよ。1960年まで日本は80%以上が農民だったんですから。まだ貨幣を扱い慣れていないんです。

・考えてみれば、銭洗いとは「マネーロンダリング」ということで、どこか罪つくりなのかもしれない。

・損したくない社会では人は常に自分は「損はしていない」と確認したがる。損はしていないのだから、おそらく得だろうと。ところが誰かが本当に得してしまうと、自分たちは「得をしていない」と思い知らされ、得していないのだから損していると気づいてしまうので、それだけは絶対に封じ込めなければならないのである。損しないためには得をさせない。

・「今日は何年の何月何日?」 そう訊かれて、すぐに答えられる人はお金が貯まるのだという。

・「ポックリ」とは大和言葉の「保久利(ほくり)」に由来するそうで、保久利とは「ご利益を久しく保つ」あるいは「永久にご利益を保つ」の略らしいのだ。

・損しているのを「損してる」と言ったって何の意味もないでしょう。愚の骨頂じゃないかしら。





損したくないニッポン人 (講談社現代新書)

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  • 作者: 高橋 秀実
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/09/17
  • メディア: 新書



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