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『「アジア半球」が世界を動かす』 [☆☆]

・多くのアジア諸国が発展しているのにアフリカで発展している国が少ないのは、アジアでは日本の成功がアジアの同胞の国々を鼓舞したが、アフリカでは日本のような国がなかったからだ。

・私の暮らしがいつ近代世界に入ったか思うかと尋ねられたら、間違いなく私は、トイレが水洗式になった日だと答えるだろう。同世代の西欧人で、こうした変化の持つ重みが真に理解できる人などほとんどいないだろう。彼らにはそんな経験がないのだから。

・水洗トイレのある生活をしている人は、全世界の人口のわずか15~20パーセントとされている。

・人類の42パーセント近く(26億人)がトイレのない家で暮らしている──そのほとんどがアジアとアフリカに暮らす人々である。

・どの発展途上国でも、援助に頼っているのはその国の国民ではなく、政府であることがわかるはずだ。そういう国の政府は、自国民のことに関心を持つ必要もない。援助がある以上、財源として国民を当てにしなくてよいからだ。

・ゴルバチョフはソ連の改革に当たり、ペレストロイカ(経済の再構築)よりもグラスノスチ(政府の公開性)の方を優先した。彼の選択は、ロシアにとって誤りだった。

・とう小平は鋼鉄の意志を持っていた。天安門で抗議の声を上げていた学生たちが中国の進路を決めるのを、とう小平が許さなかった理由の一つは、学生たちがゴルバチョフの例に続くことを望んでいたからだ。彼らが成功していたら、中国はロシアと同じような苦境に陥っていただろう。

・先生は、太陽光線をレンズで紙の上に集中させ、紙とレンズの距離が焦点距離だと説明した。先生はそれから、紙が燃えだすまでレンズをじっと握っていた。紙が燃え出したとき、先生は私の方を向いて、「マシェルカー、君が自分のエネルギーをこのように集中させ、拡散させずにいることができるなら、君は世界にあるいかなるものをも燃え上がらせることができるんだよ」と、教えてくれた。私が科学者になろうと決心したのは、その瞬間だった。

・実力主義の原理は、驚くほど単純である。社会に存在するすべての人は潜在的な資源であるため、すべての人が能力を伸ばし、社会に貢献できるように、(できるだけ)等しい機会を与えてやらなければならない。才能が無視されてはならない。

・貧困者は社会の重荷なのか、それとも、開拓されるのを待つ潜在的に豊かな資源なのか?

・よかれ悪しかれ、ヨーロッパの過去は、、アジアの未来になり得るのである。

・インドの裁判所は非効率なことで悪名高く、未処理のままの案件が山積みになっている。一部の民事裁判では、判決が出るまでに数十年かかることもある。正義を遅らせることは、正義を否定するのと同じである。

・アジア人は、長いこと、西欧の教育の長所を進んで取り入れてきた。今や、アジアにいる膨大な数の人々が、西欧教育の甘い果実を口にした結果、皆が中毒にでもなったように教育に打ち込んでいる。

・サウジアラビアが民主化すれば、おそらくそれは親アメリカ的支配の終焉を意味し、しかも、選挙で選ばれるのは、オサマ・ビン・ラディンの世界観に親近感を持つような政党だろう。

・世界で最も影響力のある週刊誌といえば、おそらく『エコノミスト』だろう。

・自由を享受するために欠かせないのは、生き続けることだ。死者では自由を味わえない。だからこそ、イラクに住む多くの人々は、いかに過酷で抑圧的だったとはいえ、サダム・フセイン統治下の時代よりも、現在の方が大きな自由を得ているとは、とても信じられないだろう。道路脇に仕掛けられた爆弾で、唐突に予期せぬ死を迎える可能性がある事態は、サダム・フセイン統治下の頃には考えられないことだった。

・イスラム教徒のほとんどが暮らすのは南アジアと東南アジアであり、こうした地域では、既に「近代化への行進」の動きが浸透している。

・アラブ人はイスラム世界の言論の主導権を握っているものの、イスラム世界全体から見れば少数派であることを、ほとんどの西欧人は知らない。

・ボリウッドが力を発揮した一例として、ヒンドゥー教徒イスラム教徒の断絶を何とか克服した点が挙げられる。ヒンドゥー教徒とイスラム教徒の両方から一流のプロデューサーと俳優が出てきて、協力した。

・アメリカが大量の石油を消費することは、膨大な富をアメリカから独裁体制の国に渡すこと。

・世界に対するアメリカの影響力がますます強まり、世界もアメリカについて知識を深めているこの時代において、他国の歴史と文化に対するアメリカの無知は、まさに驚く他はない。

・とう小平の使った有名な28文字の箴言。
(1)冷静観察──(発展を)冷静に観察して分析せよ。
(2)站穏■根──忍耐強く自信を持って(変化に)対処せよ。
(3)沈著應付──地位を確保せよ。
(4)韜光養晦──能力を隠して注目を避けよ。
(5)善於守拙──巧みに目立たぬよう身を保て。
(6)絶不當頭──決してリーダーになるな。
(7)有所作為──なすべきことを達成せよ。

・国籍、人種、信条に関わりなく一番有能で資質の優れた人間──つまり一番すぐれたコネを持つ人間ではなく、純粋に一番すぐれた人間──を選んだ組織は繁栄する。

・IMFから融資を受ける国が減ったので、IMFの収入は大きく落ち込んだ。気がつくと、IMFの側も、少なくとも発展途上世界がIMFを必要とするのと同じくらいに、発展途上世界を必要とするようになっていたのだ。

・ハーレムに暮らす100万人以上の住民が法の支配を破る決心をして、パーク・アヴェニューに暮らす数千人の富裕な市民の豪華な家への略奪と破壊を始めたら、警察にできることなどほとんど何もない。パーク・アヴェニューの住民を実際に守っているのは、警察ではなく、金持ちと貧しい人々の間の社会契約なのだ。貧しい人々は金持ちの財産を侵害しないことに同意する代わりに、金持ちもまた、貧しい人々と同じ法をきちんと守ることに同意する。

・中国では、商人の社会的地位は低く、農民や、農地からの生産物に依存していた貴族よりも下位だった。中華帝国が外国からの物資の補給を必要とせず、自給自足が可能だったという事情が、こうした認識をさらに強めたのだろう。

・冷戦の際、巨大な悲劇が起こらなかった理由は、あらゆる敵対者同士の間で、会話が維持されていたからだ。冷戦の時代、アメリカ、ヨーロッパのどちらも、モスクワと外交関係を持つことが、収容所群島と呼ばれたソビエト連邦の体制を容認することになるとは言わなかった。


・近代化への流れは速い。ところが日本では冷戦構造下のような固定された世界を前提としている人々が多い。そのほうが楽だからであろうか。あるいは、構造的な変化に気づかないからであろうか。

・日本には素晴らしい科学技術があるのに、それをどこにどのように使えば良いのか、アフリカでそしてアジアの奥地でそれをどのように使うのかという視野の広い発想が必要である。



「アジア半球」が世界を動かす

「アジア半球」が世界を動かす

  • 作者: キショール・マブバニ
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2010/02/04
  • メディア: 単行本



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