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『ツンドラモンスーン』 [☆☆]

・大勢が「大化の改新」を知っているけれど、それが何なのか本当に知っているだろうか。

・相手のことを理解するよりも、もっと考えるべきことがある。それは、相手の出方である。つまり、相手の内面を理解するよりも、外に出てくる行動の可能性を分析した方が良い。

・相手が人間だから、「理解」といった温かい言葉が人を唸らせてしまうのだが、たとえば、相手が信号機だったら、信号機を理解するよりも、表に出る現象を観察した方が有益だ。

・情報は無料だが、発想は有料、ということなのだ。何か新しいものを見つけて写真を撮り、これをみんなに見せる。これは「情報」である。同じものを誰でも撮影することができる。「私が見つけたものだから、他の人は遠慮してほしい」とは言えない。

・アメリカ人は大勢いるとAmericansと複数形になるが、日本人は大勢いてもJapaneseである。なんと、日本人は単複同形なのだ。これは。群れを成すからだろうか。

・あらゆる医療技術が進歩して、病気や怪我で人間が死ぬことがなくなったら、自殺は間違いなく死因の一位になるはずだ。

・一人の投票者が百点を持ち点として、投票のときに候補者それぞれに点数を入れる、という投票にすれば、この格差は解消する。

・「私の青い鳥を探して下さい。私の好きな○○と××みたいな感じです。よろしくお願いします」とYahoo!知恵袋に投稿している若者を想像すると、「ネット依存症」というよりは、「私を助けてくれる不特定多数幻想依存症」とでも呼べそうな症状である。

・果物や野菜の漢字は難しい。どれもキラキラネームである。

・ローンを組むのは、金持ちではない。ローンを組ませる方が金持ちだ。

・ローンで買った「持ち家」などというものもない。実は、「借家」である。ローンで買った車は、レンタカーなのだ。そんなことはない、所有しているのだから、これは自分のものだ、と反論するかもしれないが、では、それを人に売れるだろうか。売る前に、借金を返さないといけないはずだ。

・「資本」というのは、貸すことで大きくなる金のことで、その金を持っている資本家が、不労所得を受ける社会の仕組みなので、必ず「格差」を大きくする。

・社会の役に立つ人間になれ、というのは、昔からよく言われてきた言葉で、教育というのは、つまりはこのポリシィを子供に教えるものかもしれない。

・小さいときに一人遊びをしていない人の多くは、人に褒められる嬉しさに目を向けすぎていて、自分に褒められる嬉しさを見逃している。「単なる自己満足」という言葉で退けている人もいる。

・オークションを観察していると、世の中の人がどんな価値観を持っているかが如実にわかる。世間が何を欲しがっているかがわかる。

・没個性というのは、個性的な人間にとっては簡単な切換なのだ。「今日はちょっとおとなしくしていよう」というだけで、シフトを変えることができる。一方、没個性の人が個性的に振る舞うことはほぼ不可能である。

・日本の組織では、配置換えが頻繁だ。数年で違う部署へ移ることが多い。仕事に慣れた頃、効率が高まった頃に交替になる。すぐに交替することがわかっているから、仕事を最適化しない。自分がずっと続けるならば、発展的に解決する問題も、そのまま放置して、「恙無く任期を全うする」ことに徹しがちになる。

・意見と情報は違う。意見には、、信憑性というものがない。基本的に、正しい、間違っている、という属性が存在しないからだ。

・「戦争をなくそう」という綺麗な意見であっても、では、これはどうする、あれはどうしたら良い、という関連を考えなければ、単に好き嫌いという「感情」と同じ扱いにされる。

・「私は絶対に反対」と主張しても、「ああ、そんなに嫌いなんだね」と思われるだけで、意見として認識してもらえない。つまり、議論にならない。

・民主主義になって、みんなが投票するようになったけれど、多くの票は、意見ではなく感情であるから、正しい道が示されない例が目立ってきた。

・感情に流され、「嫌だ」で決めてしまうと、結果的に大きな損失が待っていて、もっと嫌な目に遭うことになる。

・「Aに反対しているけれど、じゃあ、Bについてはどうするの?」という質問に答えられない人は、Aに関する議論に参加できない。

・悲しいときに冗談を言って笑ってみたり、もの凄く怒っているのに優しいことが言えたり、楽しくて大喜びしているときに冷静な思考をしたり、そういった反対の性格を同時に持つことが、「大人だなあ」と思わせる要素の一つではないか。子供とか、若い人は、そういった複雑さをまだ持っていない場合が多い。



ツンドラモンスーン The cream of the notes 4 (講談社文庫)

ツンドラモンスーン The cream of the notes 4 (講談社文庫)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/12/15
  • メディア: 文庫






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