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『21世紀の戦争テクノロジー 科学が変える未来の戦争』 [☆☆]

・科学に懐疑的な人々は人間をモルモットのように扱う科学が横行している現状を非難し、科学が未発達だった過去へ戻ることに逃げ場を求めている。

・トゥキュディデスは、人間を紛争に駆り立てる三つの主な動機として恐怖と名誉と利益を指摘し、これらの本能的な欲望は、絶えることなくすべての時代のすべての人間にあると主張した。

・ニコロ・マキャベリ同じく三つの動機を挙げたが、その三つに順序をつけている。三つとは、安全と富と威信である。

・人間は持っているものを手放したがらない。失わないと確信できて初めて、もっと多くを手に入れよう、富を殖やそうという気になる。

・懐が肥えるにつれて、金回りのよさを正当化するために他者から賞賛されたがるようになる。

・自尊心は賛辞と特権と尊敬を要求するのだ。

・防衛側が戦おうとしなければ、戦争になりようがない。殺戮はあっても、あるいはジェノサイドさえあるだろうが、戦争はない。

・政治とは、端的にいえばその社会において「誰がどれだけ所有するか」を決めるプロセスなのである。

・戦争の性質は時代が移るとともに変わるが、本質は変わらない。

・戦争の研究は実戦に加わる前の予備訓練であり、帰還後は戦争の苦痛をやわらげる黙想の時間になった。

・本当の革新と呼べる、まったく新しい発想や技術の発見は、充分な知識と経験と専門性を身につけた者、さもなければ経験的にそれを見逃さない者に、雷に打たれたような一瞬の理解が訪れたときに生まれる。

・農民はただの労働力として地元の領主の物欲を満たすのではなく、武装して国のために戦うようになり、この新しい戦争のやり方が定着していくにつれて封建制度は傾いていった。

・ヨーロッパ諸国が戦争を続ける能力は1815年までに最大に達していた。軍隊をさらに強大にするには、火薬革命を達成したような重大な技術革新がなくてはならない。戦争を支援する科学技術は行き詰まり、戦争は予測できるものになった。

・ここに近代的な産業社会への移行がはじまった。「人間」が補充と取り替えのきく「人員」としてビジネスや戦争で消費される社会である。

・「ひらめき」は、常日ごろ気になっていたことに、それとは別の思いがけない現象があるとき突然結びついた瞬間に訪れ、他の誰も思いつかなかった斬新なアイデアを発想させてくれる。

・第一次世界大戦も「直前」の戦争を教訓にして同じ武器で戦われた。たとえば騎兵隊一筋でやってきた兵士は、装甲車が開発されても馬を捨ててまで歓迎しなかった。

・とくに勝者の場合には、今回の戦争で勝利をもたらした兵器と戦術が次の戦争では使いものにならなくなるという予測は20世紀の初期には説得力がなかった。

・戦争とは情けや優しさがあだになる、危険きわまりない行為なのである。

・試行錯誤はほとんどの場合、錯誤に終わる。

・医療に例えるのを戦争撲滅に役立てようとするなら、戦争の根本の原因をはっきりさせて戦争勃発を効果的に防ぐということになる。まずしなくてはならないのは、原因は人間の本性に根ざしたものか、したがって抜きがたいものなのか、それとも原因は外部にあって治療できるのかを見定めることだ。

・指向性エネルギー兵器は非致死性兵器として最も有望で、勝敗を左右するといっても過言ではない。皮膚を焼かれるように感じる電磁波兵器、フラッシュバン(閃光弾)とスタングレネード、(一時的に)目を見えなくするレーザー兵器などだ。

・レーザーポインターが普及した現在、いたずらでレーザーを照射されたという報告が航空機のパイロットから多数寄せられており、愚か者がハイテク機器を使って悪ふざけをすることから安全面の問題が浮上している。

・戦死した者はいなくなってしまうが、目が見えなくなった者は助けを必要とし、一度に数人の兵士が手当てや看護に拘束される――手足を吹き飛ばす地雷の使用と同じような考え方だ。

・視力を奪うレーザー兵器の使用については激しい議論があり、1995年の国連議定書が将来の紛争において使用を規制していることにそれが表われている。

・音響兵器はさまざまな不快感を与える。その一つが音の「弾丸」を発射し、激しい苦痛で相手を無力化する高強度指向性音響効果(HIDA)である。神経ガスに似て、方向感覚の失調やめまい、吐き気、嘔吐、かゆみ、失神、頭痛などをもたらす。

・音楽は責め苦にもなる。ティーンエイジャーが入り浸らないようにクラシック音楽を流すところもあるほどだ。

・2010年に、アメリカ軍は群衆制御と特定の作戦にアクティブ・ディナイアル・システム(ADS)を導入した。ADSは高周波のミリ波を照射して集団やエリア全体を動きを封じるものだが。、1キロメートルまでの距離なら1人の人間に目標を絞ることもできる。

・ADSでミリ波を皮膚に2秒間照射すると、約0.04ミリメートルの深さまで浸透し、火で焼かれたように感じる。実際に皮膚を約55℃まで熱する。

・兵器に利用する指向性エネルギーで非常に有望なのが、高強度電磁界(HEM)と電磁パルス(EMP)である。半導体が組み込まれた現代の電子機器はみなこれで焼かれてしまう。

・開発中の指向性エネルギー兵器は、波動エネルギー弾(PEP)である。発射されたレーザーが人や物に接触するとプラズマが生成されて広がり、撃たれた人は衝撃で倒れて意識を失い、後遺症として痛みや吐き気、めまいが残る。

・戦争の計画者の頭の中には前回の闘いでわかったことが第一番にあり、首尾よくいったことが作戦計画として継続される。

・製造活動はメディアと同じ方向へ向かうだろう。オンデマンドでプリントするのである。

・ソーシャルメディアと一緒に育った若い層は、何も考えずに個人情報をどんどん投稿する。食事の写真、つき合っている相手、休暇の計画、性的志向……。群れの魚と同じで、安全だと思ってやっているのだろう。食べられるのは最初に見つかった魚だろうから、あとの魚は何事もなくやっていける。

・もしそれがものすごく大きい魚だったら、群れは丸ごと飲み込まれてしまう。現在の世の中はそういう状態なのである。

・直径30センチメートル、長さ6メートルのチタン製か劣化ウラン性の棒を軌道衛星から地球に向けて落とすか発射した時の破壊力が試算されている。その爆発力はTNT換算で11キロトン以上になると見られている――広島に投下された原子爆弾とほぼ同じだ。

・衛星カメラで宇宙から撮影した写真が精細なのはなぜだろうと思ったことはないだろうか。人の顔まで識別できるほどだが、同じカメラを地球から空に向けて写真と撮っても軌道衛星の輪郭を正しく捉えられず、ましてや技術特性はわからない。これは光の性質の生だ。光が密度の高い媒質から密度の低い媒質へと進むとき、光の経路の前面に収差が生じ、先に行くほどそれが大きくなる。

・社会的衝突は統合をもたらすのだ。集団の帰属を明確にし、内部を団結させ、外部ととの間に境界を引く。社会にとって戦争は、ある種の安心をもたらすという価値があるとさえ考えるものもいる。

・科学は知識をもたらし、テクノロジーを与えてくれた。そのおかげで地球は、自然状態ではとても持ちこたえられないほどの過剰な人口を支えることができている。後戻りするには、70億超の死を受け入れる覚悟でなくてはできない。



21世紀の戦争テクノロジー: 科学が変える未来の戦争

21世紀の戦争テクノロジー: 科学が変える未来の戦争

  • 作者: エヴァレット・カール ドルマン
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2016/12/09
  • メディア: 単行本



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