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『なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか 人間の心の芯に巣くう虫』 [☆☆]

・対照グループの判事たちは、50ドルという平均的な保釈金を課した。ところが、自分の死を思い起こされた判事は、はるかに懲罰的な保釈金を課した――平均で455ドル、標準的な金額の9倍以上である。

・死を思い起こされることは、私たちの価値観にかなう生活をしない人たちに対する、よりネガティブな反応を起こすだけではない。その価値観を守る人たちに対する、よりポジティブな反応も生じさせる。

・人は死を思い起こさせられた後、自分の大切な信念を強める人や物に対して寛大に反応し、その信念に疑問を投げかける人や物を拒否する。

・被験者が死を思い起こさせられる方法はさまざまだ。死についての質問に答える方法のほか、むごたらしい事故の映像を見たり、死についての文を書いたり、葬儀場や墓場のそばに立つだけということもあった。

・我々は20の穴埋め単語を用意したが、そのうち6個は、死に関する単語にも死に関係のない単語にもなるものだった。そして死に関係する穴埋めをする人ほど、その意識の縁に死の考えがつきまとっているのだと、我々は考えた。案の定、自分が死ぬことについて書いた人たちの方が、対象条件の人たちよりも、死に関係する単語を作ることが多かった。

・COFF□□、SK□□L、GR□□/COFFEE(コーヒー)、SKILL(わざ)、GRIND(挽く)/COFFIN(棺)、SKULL(頭蓋骨)、GRAVE(墓)

・死ぬ運命を前にして、人がより高い自尊心を求めて努力することは、研究によって裏づけられている。自尊心が運転能力と強く結びついているイスラエルの兵士たちは、自分の死について考えた後の方が、シミュレーターで速く運転した。

・有名な作家、映画スター、ミュージシャン、スポーツ選手になる男性も女性も子供も、ほとんどいない。そのような非現実的な価値基準を踏まえると、アメリカでは不安定な自尊心が普通なのも不思議はない。

・アメリカ人の10人に1人が鬱病にかかり、大勢が不安や摂食障害や薬物依存に苦しんでいることも、決して意外ではない。このような問題の少なくとも一部は、自分に価値があると感じる基準として、ほとんど達成不可能なものを推進する文化の直接的な影響にある。

・儀式の本質は行動による願掛けである。私たちは起こってほしいことを行動で示す。

・人間には儀式、芸術、神話、宗教が「ありながら」、農業、テクノロジー、科学があるのではない。それらが「あったからこそ」、人間は農業、テクノロジー、科学を発展させたのだ。

・空想思考と現実思考は異なる精神過程だが、現実思考は同時に支えてくれる空想がなければ機能しえない。

・アメリカ人を対象に行なった調査で、92パーセントが神の存在を信じていると報告した。3分の2が自分の新興の聖典を神の言葉と考え、74パーセントが天国と来世を信じている。3分の2以上(68パーセント)が天使と悪魔はこの世で活動していると信じ、79パーセントが奇跡は昔と同じように現在も起きると信じている。

・始皇帝やペピ王が来世にたどり着いたのか、確実に知ることはできないが、彼らについて知っている人の数は、本人の時代より現在の方が多いという事実は、彼らが少なくとも若干の象徴的不死を達成したことを証明している。

・死者の名前を言うことは、その人をよみがえらせることである。

・人が欲するのは富ではなく、豊かさにともなう尊敬と高評価である。

・死を思い起こさせることは、自尊心の低い人たちに、より派手なパーティを計画するようしむける。

・紙幣を数えるように言われた人のほうが、同じ大きさの白い紙きれを数えるように言われた人より、死の不安が小さいと報告している。

・ナチスは死者を崇めた。それどころか、他のファシスト組織と同様、死に対して病的な愛着を抱いているようだった。「死よ、万歳」は、有名なファシストのスローガンだ。

・ロシア革命の結果、共産党は宗教を法律で禁止し、代わりにレーニンを崇拝することを決める。ロシア人はレーニンを、天上の生活と言われているものを地上で実現する救い主だと考えた。

・ロシアの農民と労働者は、レーニンの訃報にひどく落胆した。信じようとしない人も大勢いた。エルヴィス・プレスリーと同じように、レーニンもそれから数十年にわたって、生存説が流れていた。

・アウシュビッツのガス室やカンボジアのキリングフィールドが機能するには、「ふつうの」人々、つまり自分は「ただ命令に従っている」、と思っている人々が必要である。

・異なる神を崇拝しているとか、異なる旗に敬礼しているとか、何百年も何千年も前に屈辱を与えられたとか、そういう象徴的侮辱のために、熱狂的に互いを憎み、殺害するのは人間だけである。

・屈辱は人から自尊心を奪い、有意義な世界の重要な存在ではない脆弱な生きものにおとしめる。

・皮肉なことに、この世の多くの悪は、この世から悪を取り除こうという努力から生まれている。

・人間が今日まで生き延びている唯一の理由は、自分たち自身を絶滅させる技術的手段がなかったからかもしれない。

・老けて見えるくらいなら死んだほうがまし、と言う高齢の人もいる。

・使徒パウロは女性の役割を「黙っていること」であると言い、強いキリスト教思想に強い反女性メッセージを吹き込んでいる。

・死のイメージはあふれている。全テレビ番組の57パーセントに暴力シーンがあり、アメリカの若者は18歳までにドラマに描かれた1万6000の殺人と20万の暴行を目にすることになる。

・世界保健機構(WHO)によると、健康とは「病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にある」ことだ。

・死のような大きくて手に負えないものへの恐怖が、恐怖症によってクモのようなもっと小さくて対処できる問題に投影されることになる。

・消耗するほどの社交不安を抱える人にとって、サルトルの有名な言葉どおり、「地獄とは他人のこと」である。

・人が新たな社会的きずなを育み、既存のつながりを強化し、疎遠になった関係を回復するのを助けることは、実存的心理療法の計画で優先されることが多い。

・死を思い起こさせられると、人は信念を共有しない人たちに対する軽蔑の念を増幅させ、彼らの死亡を慰めとするほどになる。

・殺人や凶悪犯罪の発生率が高く、死の恐怖が呼び起こされる可能性の高い物騒な時代には、保守的な州で死刑の宣告と執行が増えているが、リベラルの州では減っていることがわかっている。

・死んでいることは存在しないのと変わりない。自分が生まれる以前のことを怖がる人はいないのに、なぜ死を思い悩むのか?

・見方によっては、死の認識によって人生を味わう力が鋭くなる。野のユリや空の鳥は、私のような存在にまつわる苦しみを免れている。しかし、限定された内省的生きものにしかない畏怖と喜びも感じられない。

・カミュは『カミュの手帖』に、「死を受け入れよう。そのあとならどんなことでも可能だ」と書いている。

・古今東西、死と正面から向き合うためのさまざまなアプローチが実践されてきた。中世の修道僧は机の上に人間の頭蓋骨を置いていた。

・死からその異常さを取り除いてしまって、死とつきあって、慣れ親しみ、もっぱら死のことを思い浮かべるようにしてみたらどうだろうか。

・なぜ、たっぷりと食べた客のように、人生から立ち去らないのか。

・人生がとても単純な人もいる。これは良い、あれは悪い、これは誤り、あれは正しい、と決める。

・すべての「イズム」の根本的な問題は、自分たちのやり方を唯一のやり方だと、はきちがえていることだ。



なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか :  人間の心の芯に巣くう虫

なぜ保守化し、感情的な選択をしてしまうのか : 人間の心の芯に巣くう虫

  • 作者: シェルドン・ソロモン
  • 出版社/メーカー: インターシフト
  • 発売日: 2017/02/15
  • メディア: 単行本



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