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『誰も語らなかった防衛産業』 [☆☆]

・防衛予算をもっと削って装備品の生産が縮小された場合、これらの何千社にものぼる中小企業にとっては計り知れない打撃となるのだ。

・町工場はノウハウを持った「人」が存在し、注文があって常に機械が動いてこそ、血液が循環し呼吸をして、日本の心臓部となり得るのである。延命治療をしようにも注文という酸素を送り込まなければ、その行く末にあるのは「死」だけだろう。

・こだわりは大事だが、自分の考えだけに拘泥する気難しさがあると、物作りはできないという。

・一度製造をやめてしまったら、次に始めたい時には、もう技術者はいないということです。

・「戦車」を「特車」と呼んでいた時代もあった。世の中の軍事に対する無理解は、こうした誤魔化しの積み重ねによって、かえって助長してしまったのかもしれない。

・愛機の整備が済んでいないのに、自分だけくつろいで待つことに抵抗があるとも聞く。このあたりの精神性の違いは、常に戦争が身近にある国とそうでない国の差のようにも思える。

・よく若い人が仕事がないというけれど、本当にないわけではありません。やはりこういう3K職場に来る若者は少ないですよ。

・一種類の部品を百個作れれば工場は助かりますが、極端な話、今は百種類を一個ずつという状況に近く、時間ばかりかかって、非常に苦労しています。

・防衛省相手の仕事は審査が難しいというのは、防衛関連企業の共通した認識である。だが、その厳しさが果たして然るべきものであるかどうか、という指摘もある。

・そもそも日本の防衛産業は、規模として1.9兆円、工業生産額に占める比率は0.7%で自動車の20分の1に過ぎず、産業としての規模が小さい。

・政治家が武器輸出や、ひいては安全保障の議論をまともにすることもなく、「なぜこのような原則があるのか? なぜ必要なのか?」をまったく検証せず、下手にいじって騒がれたくないという思いと、官僚の前例主義が原因であろう。

・作り置きはリスクが高く事実上できない。製品を置いておくことは、お金を置いているのと同じで金利も税金も発生し、場所も取る。

・「思いやり」です。これは今の日本人に決定的に欠けているものです。そこで隊員たちには「自分の汚れを他人に与えるな」と教えています。

・トイレで自分の汚れをきれいに拭いたか? 風呂に入ってアカが一片でも浮いてないだろうか? ちゃんと体を洗ったか? そんな基本的なことすら、今の家庭では教えていないという。

・クラスター爆弾という、極めて短時間で「面」を制圧できる兵器は、四面環海で広い海岸線に囲まれたわが国にとって、敵の上陸を阻み、被害を最小限にとどめるために必要不可欠である。こうした国防上の利点を充分に理解せぬまま、安直なセンチメンタリズムと俗論に迎合し、国家を守るための兵器をみすみす捨てるというのは、それこそ「無駄使い」だと、私は思う。

・途上国に医療機器や精密機器を寄付したが、修理ができずに放置されているという話をニュースで聞いたことがあるが、どんなに良いものでも、メンテナンスや再生産の能力がないと無用の長物になるだけだ。技術あっての国力なのである。

・職人になるには知識と自信が必要です。教育することで知識は得られますが、実際に作るものがないと、いつまでも「自信」がつきません。

・よく「軍事産業は儲かる」と言われますが、世界の流通市場における規模は決して大きくなく、日本の防衛産業に至っては、コンビニ市場と比べても約4分の1であり、果たして「防衛産業」などと大仰に言っていいものか、という声もあるほどです。

・弾一個なくなっただけで大騒ぎになり、訓練後、薬莢をすべて拾い集めている軍隊は、おそらく世界中探しても他にないだろう。

・「技術」というものはハイテク機器やITといったものだけではなく、むしろ「同じものを同じように作る」ことかもしれない。

・自衛隊では使えなくなって処分する弾を「不用弾」と呼んでいた。ところがその呼び方は止めようということで、「退役弾」に改称したと聞いたことがある。耐用年数を経過してリタイアする装備品は「退役」と言われているが、なぜか弾だけは「不用」と言われたのを、弾に失礼だということでの配慮だったようだ。

・審査への対応が、企業の負担となっていることも否定できません。書類の量は莫大で、「森林が一つ消えるほど」という関係者の声もあるほどです。

・「契約額よりコストオーバーしたら余分な経費は企業持ちですよ。でも努力してコスト削減ができたら、その浮いた分は返してくださいね」という非常にユニーク(?)な仕組みです。

・リーマンショック後は、防衛産業は安定性のある分野と目されていますが、長期的に見れば「それ以上にも、それ以下にもならない」つまり成長の見込めない分野に変わりありません。

・わが国の防衛技術はもはやどこにも欲しがられていない――そんなことが言われるようになりました。防衛生産基盤の維持のために輸出をして量産に結びつけてはどうかというプランは、すでにその能力からして実現が難しくなっているのです。

・「私たちは真面目なんです」と胸を張る人までいるので、そんな時は返す言葉もない。これは、もはや真面目を通り越して、失礼な態度である。

・まだ「人を殺傷するものを輸出するのか」と言われることがある。武器は人を守るものでもあり、その点をしっかり議論しないといけないと思う。

・PKOも1か所だったが、今は2か所。その2か所に施設部隊が派遣されていて、万が一国内で災害が起きたときは、瓦礫の片づけがこの前のようにできなくなっている。



誰も語らなかった防衛産業 [増補版]

誰も語らなかった防衛産業 [増補版]

  • 作者: 桜林 美佐
  • 出版社/メーカー: 並木書房
  • 発売日: 2012/09/28
  • メディア: 単行本



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