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『グリーン革命』 [☆☆]

・われわれは敗者になるか英雄になるかだ──その中間の何者かになるような余裕はない。

・今やっていることが、これまでやってきたことと同じなら、これまでに得たものしか得られない。

・学校の地階で核攻撃を受けた場合の避難訓練をやった冷戦時代ですら、私たちは宇宙に人間を送り込む方法を考えていた──次のフロンティアを探し、若い世代にいい刺激を与えていた。

・大衆が常にSUVやハマーのような車をほしがる理由の一つは、自動車メーカーや石油産業が議会に対して執拗なロビー活動を行ない、大衆の求めるものが変わってしまうようなガソリン税の増税に反対しているからだ。

・アメリカの消費者は、いよいよ大きな車をほしがる。石油大手と自動車大手が、ワシントンの人脈を利用してマーケットを創りあげ、大衆がそういう車を買うように仕向けている。大きな車は、石油をいっぱい消費し、石油会社も自動車メーカーも大幅な利益をあげられる。議会がそれに横槍を入れることはない。完全に抱き込まれているからだ。

・現代のガソリン浪費を津々浦々にまでひろめたのは、超党派で手を組んだ特殊利益集団だった。民主党は自動車メーカーとその組合を支え、共和党は石油会社を支える。

・持続的に繁栄している企業や国の特質は、持続的に自分たちを作り直していることです。

・infoplease.comというウェブサイトに行って、誕生年を入力すると、自分が生まれた年の地球の全人口がわかる。

・21世紀半ばには全世界の人口は90億人を超えるとされています。これは40ないし45パーセントの増加にあたります。しかし、この増加の大部分は、それを維持できないような国で起こり、不安定や過激主義を煽るような状況が生まれるでしょう。

・簡単にいってしまうと、人間が必要とし、かつまた使っているエネルギーの主な形は、明かり、熱、機械と移動手段の動力、電気の4つになる。電気は、前の3つにも使われ、なおかつ、その3つにはできない電気通信や情報処理もできる。

・地球の平均気温が1度変化するというのは、大したことがないように思えるが、これは気象に重大な異常があることを物語っている──体温の小さな変化が、体の重大な異常を示しているのと同じことだ。

・欧米の先進国は、農業への助成金として2700億ドルを費やしている。それによって先進国の農民は潤い、消費者は安い食料を買えるが、発展途上国の農民は太刀打ちできない。

・もともとエネルギーが不足していて電気を使っていなかった人々は、大規模な電力削減の影響を受けない。しかし、いま電気を使っていて、電力の消費につれて夢がふくれあがっている人々が突然電気を使えなくなったら、それは政治的な爆弾になるおそれがある。

・ヨウスコウカワイルカの絶滅が地球の遺産にとって手痛い損失であるのは、それが一つの種ではなく、属であるからだ。種の絶滅は、小枝を折るようなものだ。属の絶滅は、枝全体を切り落とすに等しい。ヨウスコウカワイルカは大きな枝だったのだ。

・アフルエンザ(金持ち病)は、コンシューマリズム(経済成長の基盤となる消費拡大を唱えるもの)を批判する言葉として使われる。富裕(アフルエンス)とインフルエンザを混ぜ合わせた合成語である。

・誰もが他人の暮らしを垣間見ることができるフラット化した世界で、成長に待ったをかけることはできない。成長するなというのは、永遠に貧乏なままでいろというのと同じだ。

・中国人の多くは、自分たちの富について語るのを嫌う。しかし、富を見せびらかすのは、なんら恥ずかしくないと思っている。

・成長という機械を誰もとめられない。そんなことをするのは政治的自殺だし、自殺を望むような政治家はいない。つまり、一人で自殺するのはみんな嫌いだから、集団自殺ということになるでしょうね。

・現在は、実に多くの面で、知識を原材料の代わりにすることができる。

・将来、労働コストは平均化し、物流が最も高くつくようになるでしょうから、地元の人間を雇うのはコスト的に最も有利であるばかりか、そうせざるをえなくなる。

・いつの日か、冷蔵庫や電子レンジやテレビのような家電製品ばかりか、自動車まで、すべてリースでまかない、メーカーに戻して何度も繰り返し完璧にリサイクルする。

・インドや中国のエネルギーや資源の消費をあげつらうのは勝手だが、私たちアメリカ人がいまなお世界最大のエネルギーを食う豚であることを忘れてはならない。

・いまではオイルマネーを潤沢に持っているサウジアラビアの投資家が、歌手や俳優の契約を買い占めて、テレビと映画産業を作り変え、自由奔放なエジプトの価値観に根ざしていたメディアの方針を、厳格なサウジアラビアの方針に合わせようとしている。

・サウジアラビアはテロリストを輸出している。二つの面で、自分たちの利益になるからだ。まず、自分たちの国のテロリストを厄介払いできる。次に、テロリストはイラクで、サウジアラビアの憎悪するシーア派の人々を殺している。

・地面に穴を掘るだけで政府が歳入を増やすことができる国では、自由は狭められ、教育予算は不足し、人間の発展が阻害される。

・石油資源が豊富な産油国では、原油価格と自由化の度合いが、逆の動きを示している。すなわち、世界の原油価格が上昇すると、言論の自由、政府の透明性、司法の独立、法の支配、独立した政党やNGOの結成が蝕まれる。こうしたマイナスの傾向は、原油価格が上昇すると、石油主義者の指導者が国際社会の評判を意に介さなくなることによって強まる。

・天然資源が豊富にあることが国の経済と政治に悪影響を及ぼす可能性は、昔からエコノミストたちも指摘していた。その現象は「オランダ病」や「資源の災禍」などと、さまざまに診断されていた。

・オランダ病は、天然資源がたなぼた式に手にはいって産業が衰退することを指す。1960年代に、北海の豊富な天然ガスを発見した直後のオランダがそうなって、その新語が生まれた。

・天然資源が発見されると、急に外貨が流入して通貨価値が上がる。通貨が上がると、外国のバイヤーにとってはその国の商品価格が高くなり、輸出向けの製品の競争力が落ちる。一方その国の国民は、外国製品を安く買えるようになる。金があり余っている国民は、外国の安い製品をがむしゃらに買い、国内の製造業は全滅して、国全体の産業が衰退する。

・変わるべきだと外からいわれても人々は変わらない。変わらなければならないと自分にいい聞かせたときはじめて彼らは変わる。

・1バレル70ドルの後で1バレル10ドルに下落したために、ソ連は崩壊したのです。

・以前は、冬のさなかに季節はずれの暖かな日があれば、天からの授かり物のように思えました。今は、私たちはつけを払っているという気持ちになります。

・アル・ゴアが、気候変動の脅威を大衆化した。

・科学の世界では、俗受けしてしまうとまじめな科学者とは見なされなくなる。だから、まじめな科学者は大衆の前では話をしない。

・科学者は──優秀な科学者ほど──本来、何事でも大げさにいうのを怖れる。大げさにいうと叩かれるが、控えめにいえば叩かれない。だから、一般的に用心深くなる。

・天気はもはや、「今日は傘を持っていくか?」ということだけではなく、「海岸沿いのコンドミニアムを買うべきか?」や「堤防の高さはこれで充分か?」といった問題に関わってきます。

・母なる自然とは、化学、生物学、物理学にすぎない。自然がやることは、それらの合計にすぎない。自然に正邪はない。詩や美術に関心はなく、教会に行こうが行くまいが関係ない。自然とは交渉できないし、ごまかしもきかないし、そのルールを避けることもできない。一つの種としてそこに適合することしかできない。種が母なる自然との適合を学ばないとき、その種は叩き出される。

・熱帯雨林などの種が豊富な生態系を利潤のために破壊するのは、ルーブル美術館の絵を薪にして食事を作るようなものだ。

・ヤシ油やサトウキビのエタノールを得るために熱帯雨林を乱開発すれば、天然の薬一式が入っている薬箱を空っぽにすることになる。

・多くの発展途上国は、電話がない状態から、電柱に固定電話という段階を踏まず、いきなり携帯電話へと発展した。

・イノベーションとは、誰もが知っている99パーセントのことを知っていて、それによって誰も知らない1パーセントを創造できる人間によってなされる。99パーセントを知っているか、あるいはそれを知るすべがなかったら、新しい1パーセントを創造する基盤が持てない。誰もが知っている99パーセントの一部を、ただ作り変えることになるだろう。

・プリウスは、ただのよりよい車ではなく、よりよいシステムなのだ。

・ブレークスルーは、まず間違いなく、予想もしていない方角からやってくる。後で振り返ってはじめて、どうしてそうなったかがわかるんだ。

・太陽が輝いていないときでもこれらの電気が使えるように電気エネルギーを大量に蓄えられるバッテリーを発明しないかぎり、量は豊富にならない。

・車を買えるし買いたいと思っている個人すべてに、買ってはいけないといったら、ライフスタイルが変わってしまう。しかし、一定の重量や排気量を超える車を禁じたり、制限速度を時速90キロに戻したりしても、ライフスタイルを根本的に制限することにはならない。

・iPodやノートパソコンを持つなといえば、たしかにライフスタイルを変えることになる。だが、iPodやノートパソコンを簡単リサイクルできる素材で作るよう求めても、ライフスタイルを根本的に制限することにはならないだろう。

・次善の策とは、やらないほうがましなことを精一杯やることだ。

・GMが特定数のフレックス燃料車を製造している唯一の理由は、そうすればガソリンを大食いするハマーやピックアップトラックをもっと大量に製造しても、議会が義務づけている企業平均燃費規制(CAFE)を満たすことができるからだ。

・反対もなく、利害もぶつからない真の政治などありえない。政治とは、八方美人ではなく、厳しい選択をすることなのだ。

・環境問題に関しては、無関心よりも偽善者のほうがずっといい。


グリーン革命(上)

グリーン革命(上)

  • 作者: トーマス・フリードマン
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2009/03/20
  • メディア: 単行本




・充分に進歩したテクノロジーは、魔法と見分けがつかない。

・「いつどこにでも」と「信頼できる」という義務は、効率とは相反する。

・どうして留守中も電気器具をすべてオンにして、「待機電力」と呼ばれるものを吸い上げなければならないのか? それは電気器具が馬鹿で、それよりましなことができないからだ。

・特定の時間に道路を走る車を減らしたいのであれば、その時間に道路を使う人々からお金をとればいい。実施された場所では、どこでもそれが成功している。

・この会社は、新しい製パン工場を建設せずに、午後三時から翌朝午前六時まで、学校の調理場を使ってベーグルを焼き、市内の直売店や食品スーパーに届けている。二元使用は大きな流れになっている。

・グリーン革命は、なによりもまずイノベーションの問題なのだ。規制がどうのこうのという問題ではない。この問題はエンジニアが解決するしかない。

・OPECが増長し始めた1970年代、ヤマニは同盟国の石油相たちに、原油価格をあまり急激に上げないようにと注意した。西側の政府と市場がそれに対応して、風力、太陽熱その他の再生可能エネルギーの大規模なイノベーションが引き起こされるのを怖れたからだ。

・石器時代が終わったのは、石がなくなったからではない。最初は青銅、次は鉄というぐあいに、代わりになるツールを人間が発見したから、石器時代は終わった。

・現在、われわれは、石炭、天然ガス、石油によって安いエネルギーを得ている。だから、クリーンな燃料に移行するために金を出すよう大衆に求めるのは、サウスウエスト航空が月行きの便を出していて、ただのピーナッツまで配っているのに、NASAが新しい月行きの宇宙船を建造するのに金を出してくれと求めるようなものだ。

・革新をもたらすものは、旧態のもとで栄えているものにくわえ、新秩序のもとで栄える可能性があるのに旧態を中途半端に支持しているものを、すべて敵にまわすことになる。

・地元エリーの教育機関は、数学や科学のレベルがあまり高くない。そこでGE基金は、地元の学校の数学・科学教育振興のために1500万ドルを投入した。エリーの高校卒業生をGEがエンジニアとして雇うわけではないが、優秀なエンジニアがエリーに定住するよう仕向けるには、その子供たちが受けられる教育の質を高める必要があるからだ。

・そもそも家主は、エネルギー効率のいいデザイン、建設、家電への投資を軽んじる。電気料金を払うのは借主だからだ。

・節電型の家電を使ったりする顧客が増えると、電力会社は売上が減ることで損失をこうむる。つまり、電力会社は、私たちが電気をがぶ飲みするほうが基本的に得をする。

・速く進みたければ、一人で行け。遠くまで行きたければ、みんなで行け。

・命取りになる弾丸は、真正面から飛んでこない。つねに横からこめかみをぶち抜く。そっちは見ていないから、飛んでくるのは見えない。

・あのメイドたちはインドネシアの樹木と共通点があると気づいた。非熟練労働と未加工の木材の輸出は、現われ方こそ違うが、根本にはおなじ問題がある。

・大きく考え、はじめは小さく、すぐに行動する。

・オランウータンだけに利益があり、地域社会が恩恵をこうむらないようでは、地域全体を保護する基盤を失います。

・多くの紛争は、自然のエコシステムの中で生きている人々の暮らしに不可欠な天然資源の破壊によって起きている。

・何かを護るには、護るものを実際に見ないとだめだ。スマトラの熱帯雨林をひとたび見たら、護りたくなることは間違いない。

・トラックに軽油10ガロン・タンクを積んで孤絶した前哨に輸送するのは、その地域の海兵隊にとってもっとも危険な任務だった。

・戦争はエネルギーを大量に消費する。それに、これまでの軍の装備は、エネルギー効率などまったく考慮せずに設計されてきた。

・燃料代+末端部隊への配送コスト+配送業者とトラックのコスト+輸送中の護衛コスト+輸送中の死傷者にまつわるコストというのが、軍の燃料コストの内訳になる。

・あらゆるものがつながっている現代の世界では、「どう」ふるまうかによって人間は峻別される。

・今の世界では、どういう製品を作ろうが、どういうサービスを提供しようが、どこの誰でも簡単にコピーして売ることができる。しかし、ビジネスを「どう」やるか、約束を「どう」守るか、得意先や同僚や仕入先と「どう」結びつくか、自分が関わっているコミュニティと「どう」つながっているか、ということは、それらをしっかりやっているかぎり、誰にもコピーできない。

・競争相手に「ふるまい機略」で勝てる見込みがある。どうやって「ふるまい機略」で勝つのか? ミシガン州のある病院では、間違いを犯したときに医師が謝るように指導したところ、医療過誤訴訟が激減したという。

・現在、太陽光や風力は設置費用が高いが、燃料費──太陽や風──は固定している。永久に無料だ。化石燃料システムは、現在は設置費用が安いが、石炭、石油、天然ガスなどの燃料の価格が、この先も上昇することは間違いない。

・グローバリゼーションの時代、都市間の競争はいっそう激しくなっている。優秀な人材が居住し、起業が行なわれ、所得税その他の税収が増えるように、各都市が競っている。観光客の奪い合いもある。

・アイドリングしている車は、時速50キロメートルで走っている車の20倍の汚染を引き起こす。車は走るのが本領で、アイドリングには向いていないからです。

・電気料金が一定の限界を超えて上昇すると、安かったはずの機械は、その耐用年数を通じて考えれば、もっと高価なエネルギー効率のいい機械よりもずっと高くつくことになる。

・縦割り式の思考から脱することができなかったら、一つ買っても、その一つから満足できるだけのものが得られない。全システムに思考をひろげれば、一つ買えば、四つか五つ、ただのおまけが付いてくる。

・多くの州や地方自治体がビルに高いエネルギー効率を要求するようになれば、ソーラーパネルや断熱材や耐寒構造などを取り付けるレトロフィット(既存の設備を新規の設備に交換する改修)工事の仕事がアメリカ中で増える。こうした仕事は、アウトソースできない。

・ブルーカラーの仕事は、どんどん減っている。それに、そういう仕事に代わるものが、何もない。もっと高いスキルを必要とする仕事しかない。だから、若い黒人世代は、経済的にどん底に落ちていくしかないんだ。

・職業訓練には大きな問題がある。仕事があろうがなかろうが、資格だけを与えてすませるということが、えてして多い。

・7000ドルかけて職業教育をして生活できるスキルを身につけさせるほうが、50万ドルかけて刑務所に収監しておくよりも、ずっとましだ。

・最悪の汚染を垂れ流している工場、発電所、有毒廃棄物投棄所が、貧しい地区の近くにあるのは、決して偶然ではない。そこに住む人々に、そういった計画に反対する力がないからだ。

・中国の指導者たちは、中国というバスのエンジンを、燃費が悪く汚染物質を放出するものから、きわめて効率のいいハイブリッドに換装しようとしている──しかし、バスを時速80キロメートルで走らせながら、それをやらなければならないのである。

・買い物客がリサイクル可能な買い物籠か布のショッピングバックを持参するように、中国は厚さが0.025ミリ以下の極薄のポリ袋の生産、販売、使用を完全に禁じた。

・イノベーションはすべてヨーロッパでやり、アメリカにはブルーカラーの組み立ての仕事をやらせる。ドルが安いので、外貨を使える企業は、すべてを半額でやることができるというのだ。「アメリカは新しいインドですね」といわれた。

・100のアイデアに資金を提供しなければならないのは、99がだめで、1つが次のグーグルになるからだ。

・何を言うかではなく、何をやるかがおまえを決める。

・運動に参加する人々が膨れあがって、ワシントンが耳を傾けなければならなくなったときにはじめて、真の変化が訪れる……国を変えるにはそれしか方法がない。

・ここでは、現在と未来が対決する──今の世代と、子供や、まだ生まれていない孫が。問題は、未来は組織化できないことだ。労働組合を作って労働者の権利を護る。年配者は団結してヘルスケアを受ける。だが、未来はどうにも組織化できない。ロビー活動ができない。抗議行動ができない。

・民主主義のモデルでは、いろいろな圧力団体のぶつかり合いから政策が生まれる。

・グリーン運動の指導者たちの多くは、従来、問題ばかりに目を向け、それがビジネスチャンスであることには注目していなかった。

・ミツバチ、アリ、シロアリが、一匹ずつだと頭がよくないのに、集団になると高い知性を示すことに注目し、こんなことを言っています。「人間はまったく逆だ」


グリーン革命(下)

グリーン革命(下)

  • 作者: トーマス・フリードマン
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2009/03/20
  • メディア: 単行本



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