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『パラダイス・クローズド』 [☆☆]

・アメフラシは有毒で第二次世界大戦の食糧難の折、後鰓類、ウミウシ研究の第一人者だった昭和天皇が何とか食べられないか、いろいろ工夫したけど全然どうにもならなくて、お腹を壊した側近が音を上げたっていう有名な逸話がある。

・「科学的に証明できない」というのは「科学が未発達なだけ」なのだ。

・軽いノリで話を振ると火傷をするからいっそ全部知らんふりをした方がましだ。

・日本人は体裁を気にするから、冗談にしないと本音が出ないんですよね。

・側線は水圧やわずかな水の振動を感知するので、潜水艦のソナーに近い感覚で周囲の状況がわかります。視覚や嗅覚よりずっと正確に。用事がないときに水槽に触れてはいけないのは、少し水が揺れただけでも彼らにとっては天変地異のように感じられるからですよ。

・今現在ぼくたちを含めほとんどの生物は酸素がなければ生きていけない。植物ですら光合成のできない夜は酸素呼吸です。──これは、ラン藻たちがそれまでの嫌気の世界を滅亡に追いやったため。

・人間にとっては短い一年という期間で、ウィルスは想像を絶する進化を遂げる。そのためにこの世から死病は決してなくならない。いつでも新しいウィルスや病原菌が生まれ続ける。

・フォークランド紛争によってできた地雷原には人間は一人として住めませんが、代わりにマゼランペンギンがたくさん棲んでいる。ペンギンの体重では対人地雷に反応しないんです。ペンギンの天敵であるトドは地雷に反応してしまうため、そこはペンギンだけの楽園になってしまった。

・食物連鎖というものは、上位にいる者ほど数が少ない。人間が罪深いとすれば、下位の者に対する釣り合いが取れていない。それくらいですね。

・逃げる奴は犯人だ、逃げない奴はよく訓練された犯人だ。

・大統領暗殺とか政治的思想的背景が絡む事件ならともかく、個人的な人殺しに志も何もあるのか。

・ホラー映画なら見た目だけそれっぽくすればいいだけですが、現場には匂いが漂う。人間の鼻が鈍いといっても到底ごまかせません。

・こういうパズル系をやっていると漠然と考えてるより、かえっていろいろ集中できるんだ。

・狂人の真似とて大路を走らば、即ち狂人なり。悪人の真似とて人を殺さば、悪人なり。

・何だかんだ言って、努力しなきゃ好きになれないような相手はその時点でナシだと思う。

・ウンコの半分以上は食べたものじゃなくて大腸菌の死骸と消化器の垢なんだ。

・共生関係というのはね、人質を取られているのと同じなんだ。どっちも裏切ってちゃお互いあっさり絶滅して話が進まないから、両方適当なところで妥協しなきゃいけない。

・お互い生かさず殺さず、妥協して生きている状態のことを「共生」とか「寄生」って言うんだ。妥協って言っても生半可な覚悟じゃない、相手が死んだら一緒に死んじゃうんだよ。

・忠犬は野良になって生きていく気概がないんだ。飼い主の他に信じられる者がいないんだ。自分自身の嗅覚で餌の匂いを感知しているはずなのに、それすら信じていない。

・イヌが飼い主に尻尾を振るのは散歩がしたいか餌がほしいかどっちかで、愛情表現じゃない。人間はとかく美化しがちだけど、動物の行動は一番低次元な解釈が正解。

・この星では誰かを殺すのに理由は必要ない。逆に誰かと一緒に生きるためには、何か合理的な理由が必要なんだ。理由がなければ親兄弟でも殺し合い。理由さえあれば、姿の見えない相手とでも一緒に生きることができる。

・子供の中には「蝿の王」がいる。大人はとかく自分の子供時代を美化しすぎて、油断しがちだ。

・犬や猫はヒトから餌をもらうと、ヒトに頼ることを覚える。媚びることを覚える。愛することを覚える。いつかそれは打算を超えて、彼らを隷属の身分に縛りつける。

・軍事機密に匹敵する最先端技術を惜しげもなく子供の玩具に使ってしまうのが、日本人の特性なんです。

・弱肉強食の世界で生き延びるコツ。目先の利益のために軽々しく「裏切り」のカードを出した馬鹿は大体絶滅している。

・日本には司法制度ってものがあるんだから、ここでド素人が雁首揃えて無理に解決する必要ないじゃん。

・気化しやすい青酸カリを実験室やメッキ工場から盗んだりしなくても、猛毒は魚市場やペットショップで簡単に手に入るんですよ。昨今はヤドクガエルも人気ですからね。

・弱肉強食の世界では、反撃は最大の防御。

・この世で一番強いのは、追いつめられた者のやけっぱち。

・他人より目立ちたい、おいしいものが食べたいという子供らしい単純な欲望、恐怖と偏見と無知が集団で弱いものを追いつめ、蹴落とし、賢明に振る舞おうとする者ほどその混沌に飲み込まれる。



パラダイス・クローズド THANATOS (講談社ノベルス)

パラダイス・クローズド THANATOS (講談社ノベルス)

  • 作者: 汀 こるもの
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/01/11
  • メディア: 新書



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