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『衆愚の時代』 [☆☆]

・世の中からいい人と言われる人間になるのは簡単です。耳ざわりのいい言葉を操り、困窮した立場にある人間、いわゆる弱者と呼ばれる人々の側に立ってものを語ればいいんです。

・世に言われる賃金格差とは、誰でもできる労働なのか、そうではないのかによって生じているのが現実です。

・職務をまっとうするのに相応しい能力を持っているのを客観的に示せぬ人間を、その仕事に就けることを社会は認めません。

・そもそもテレビ局は、携帯電話会社が高値で買い受けている電波をタダ同然で使い続けている日本最大の利権集団です。

・いまの日本で、都市部と地方の生活にかかるコストの違いといえば、住にまつわる部分ぐらいしかない。衣食、教育費などの他の生活にかかるコストは全国どこへ行ってもそれほど変わるものではありません。

・ブランドは自国のものであっても、原産地が海外である製品が市場を席巻することになるのは、確実に国内での雇用が減少していることの現われである。

・「非常事態なのだからしかたがない。困った時はお互い様」なんて、呑気なことを言っているのは、連日テレビに出続けては、奇麗事ばかり言って、その実「額に汗することなく」金を得ているエセ識者だけです。

・人間とは、いざ自分が利害関係の当事者になり、損をする側に回れば牙を剥くものです。

・もし、製造業への派遣労働者就労が禁じられれば、それこそ日本の製造業は今までにも増す勢いで海外へと生産拠点を移して行く。結果、日本社会は本物の失業者で溢れ返ることになるでしょう。

・ガソリン代に加え高速料金を払った上に、渋滞に巻き込まれ難儀しながら移動するより、公共交通機関を利用した方が、遥かに経済的で速く、かつ正確です。これでは車を持つ意味を見つける方が難しい。

・人間の気質は変わっても、社会の厳しさは変わってはいません。

・社会はいつの時代にも自ら生き抜く意思を持たない人間には厳しいものです。

・今の報道のあり方、とくにテレビのそれは、問題を解決する糸口を提供するどころか、逆に騒ぎを大きくしているのではないかと思われる節が多々ある。

・人間が社会生活を送って行く上で、恐怖と思うものの一つに、疎外がある。

・自分がとっている行動は許容される範囲を超えているのではないか……。人間は潜在的にそうした恐怖を抱いているからこそ、周囲と自分との関係の間合いを計り、折り合いをつけながら社会に同調して行くものだと思うのです。

・社会規範から外れてはならない、他人に迷惑をかけてはならない。つまり自らの行動に責任を持ち、社会の一般常識から逸脱しない範囲において、好きに振る舞うことが許される。自らを律する能力のある人間であって、初めて行使できる権利。それが自由なのです。

・誰もが考えつくような無難な応答をしておいて、「うまくやった」と思っているのは、落とされたあなただけ。

・多くの企業が人が足りないと言っているのは、職を求める人間はたくさんいても、使いたい、ウチで働いて欲しいという人材がいないのです。

・自分の評価を客観的に知りたいならば、異動の際に代わりに配属されて来た人物を見ればいいでしょう。代わりとなる人物がイコール、もしくはベターと上司は判断した。

・管理職への昇進は、誰もに与えられるものではなく、仕事ぶりが評価されて初めて与えられるもので、逆に言い方をすれば、現場で留まるような人間は、組織において管理職に登用するだけの能力無し、つまり不用の人材であるとの烙印を押されたのと同じ事です。

・人間の好み、合う合わないなんてものは、第一印象に加えて、二言三言言葉を交わせば、おおよそ察しがついてしまうものです。

・「できるやつだけを集めてチームを作っても、目覚ましい働きをするのは二割」 組織論を語らせると、まことしやかにそうおっしゃる方がいらっしゃいますが、何のことはない、相対評価をしている限り、そうなるのは当たり前のことなんです。

・景気が悪くなれば、正社員よりもお手伝いに来ていただいていた派遣労働者を切るのは当たり前。そんなことは、誰もが知っているはずのことです。それを今さら、切った企業に非があると騒ぎ立てるのは筋違い、見当違いも甚だしい。

・昔の男は、押せば何とかなる、としきりに言ったものですが、今ではストーカーとしてすぐに訴えられます。

・自分では当たり前の仕事でも、当たり前のレベルの違う会社というのは、世の中にごまんとある。

・この世の中に、従業員の将来を保証する会社なんてあるわけがない。なのに、世の多くの人は、一定の年齢に差しかかると、まるでそれが決まり事であるかのようにマイホームを買う。

・日本版サブプライムとも言うべき、「ゆとりローン」なんて、使う方より、むしろ考え出す方の頭の中を疑いたくなる代物を利用する方々もいる。

・絶対になくなる筈はないと思っていた仕事が不要になる可能性だって捨て切れない。

・一つの製品の出現が、百年を優に越える産業自体をあっと言う間に消滅させることだって起こるのがいまの時代です。

・デジタルカメラの出現と同時に、写真屋さんはおろか、一大産業であったフィルム産業まで消滅しようとしている。

・無駄な資産は持たないというのも、これからの時代の選択肢として考慮してみるだけの価値がある。

・営業の現場では、体力に加えて良心も捨て去らぬと務まるものではないんだそうな。

・所詮、FXは為替が安いか高いかどちらに動くか賭ける「大小」博打。

・魅力的なのは買収する会社の技術なり販売網であって、人ではないのです。

・人が三人集まれば、閥ができるというがごとく、端から同じ会社に就職しても、学閥、出身地別とお互いの共通点を見いだし、結束するのが人間です。途中から紛れ込んで来る人間に、寛容であるということはまずないでしょう。

・日本企業における必要な労働力とは、頭に汗する労働者でありこそすれ、額に汗する労働者はもはやそれほどの需要がないのです。

・官僚なんてマフィアそのものです。いやもっと質が悪い。税金はみかじめ料。それをどう使うかは、自分たちの勝手。

・農産物、海産物共に市場の競りによって価格が決まりますから、消費者が買える程度の値しかつかない。つまり高値がつきにくい状態にある。

・より高い値がつくところに物が流れるのは経済の大原則です。ならば、日本が他国で生産される食料に依存するには、これから先もこれらの国々以上の高い経済成長率と地位を世界の中で保って行かなければならないということになる。

・本来、内容物を保護するための包装ですら、外箱に小さな凹みがあっても事故品扱い。これがジャパンスペックといって堂々とまかり通るのです。

・賞味期限が来ると、食べられるかどうかではなく、食べられないものだと思い込んで廃棄する主婦も多い。

・保冷ケースの中に並べられた弁当やおにぎりが、半日やそこらで悪くなるなら、我々世代の人間は、毎日食あたりを起こしていたでしょう。完全給食のなかった頃なんて、学童、あるいは勤め人だってみんな弁当を持参するもにでした。学校はもちろん、職場にだって冷房が完備されていない時代、夏になっても朝つめた弁当を学校や職場に持って行き、机の中に入れておいたんです。だけど、食あたりする人間なんて、誰一人としていやしなかった。

・やがて、輸入食材に頼ろうとも、買うに買えない、いや、売って貰えない時代が来るかも知れない。

・購買力の落ちた日本の市場には、大量生産ゆえに安い外国産食料が流通し、国産の美味しい食料は、根こそぎ高値で外国に持って行かれる。そんな日が来る可能性は決して低くはないでしょう。

・運営は国、地方自治体ではなく民間企業。つまりビジネスとして成り立つものでなくてはなりません。税金を投入すれば、万人に等しく解放されなければならないからです。

・ホームヘルパーの滞在時間は極めて短い。その理由の一つは、介護を必要としている老人が、地域のあちらこちらに点在しており、移動に時間がかかるために効率が上がらないという点にもあるわけです。

・大枚はたくのがレジャーじゃない。

・一生懸命働けば、楽しい老後が待っている。そういう未来を見せずして、誰が労働意欲を持ちますか。

・公約実現のための財源は、無駄を削ることで捻出できると大見得を切っておきながら、予算は減ったどころか史上最大に膨れ上がった。

・官僚としての能力を測られる尺度が、いかに多くの天下り先をつくったかにかかっている。

・権力を後ろ盾にして、甘い汁を吸おうとする。自分たちを雇っておけば、万が一の時に役に立つなんて言い草は、用心棒そのものです。

・「友達じゃないか」「オレとお前の仲じゃないか」 そうした言葉で借金を申し込んでくる人間に会うたび、お前とオレとの仲はそんなもんだったのか、と物凄く裏切られた気持ちになる。

・次の世代に借金を残すような公約を掲げる政党は、端から信じるに足りはしない。

・弱者という言葉をまず最初に挙げて論じれば、それが正論になってしまって、反論すると、「上から目線」と返されて、とてつもない人でなし、傲慢不遜な人間のように世間様から思われてしまう。

・とかく「いい人」と呼ばれる人、定義は曖昧だけれど弱者と呼ばれる側に立つ人には、一つの共通点を見出せるような気がします。それは、社会的地位、および経済面で、絶対的優位にあることです。

・人生には目的が必要です。目的を見出してこそ、アクションを起こすのが人間です。



衆愚の時代 (新潮新書)

衆愚の時代 (新潮新書)

  • 作者: 楡 周平
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2010/03
  • メディア: 新書



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