SSブログ

『アイアンマウンテン報告 平和の実現可能性とその望ましさに関する調査』 [☆☆]

・金儲けが目的であり、われわれの最高つまり最低のアイデアは、最も広範な読者層をつまりもっとも低級な水準の読者にウケるよう計算されたものだった。

・マクロ経済は国家の臨戦態勢に基づいているので、戦争の脅威がなくては経済が崩壊してしまうから、平和はとてもまかないきれないと結論したら?

・ノンフィクションよりフィクションの方が、深い真実への道となることもある。

・戦争は、社会の安定にとって不可欠な機能を果たしている。それを満たす他の手段が開発されない限り、戦争システムは維持されなければならない。

・宇宙開発計画やミサイル迎撃用ミサイルや核シェルター計画の主目標が、科学の進歩や国防などではなく、単に大量の金を遣うことだという点には、さほど驚かないかもしれない。

・会議の議事録もなし──口が重くなるから。

・正しい質問さえ見つければ、答えは必ずある。

・現代の思考に対するコンピュータの影響は刮目するべきものだけれど、基本的な判断はいまだに人間がするしかない。

・戦争研究における純粋な客観性は、非人間的であると称して非難される。

・物理学の基本原理は、一般に考えられているような定量化ではなく、「あらゆる価値判断、たとえば美的価値や道徳判断をすべて無視する」ということである。

・専門化された職能は、非常に漠然と「オートメーション」と称される産業技術トレンドの加速によって、その価値がさらに低下している。総合的軍備解除は、経済の中でもっとも高度に発達した特殊職能の廃棄につながるといっても過言ではない。

・年間数十万ドルに値するミサイル生産を、同額の食糧や衣服やプレファブ住宅やテレビの生産に変換する力はない。

・戦争こそは有史以来のほとんどの人間社会を律してきたシステムなのであり、それは今日も同じである。

・経済システムや政治哲学や法体系の方が、戦争システムに奉仕し、それを拡張するものであって、その逆ではないのだ。

・社会の戦争遂行能力は、他の社会から受けるとされている「脅威」の存在の結果ではない。「国益」に対する「脅威」は、戦争システムのニーズの変動に伴い、創造ないし強化されるものである。

・戦争は国際的な利害対立によって「生じる」ものではない。正しい論理的な順序から言えば、戦争遂行社会がそうした対立を必要とし、したがってそれを生み出す、という方が正しい場合が多い。

・なぜ戦争はかくもすばらしいのか? それが人工的な需要を生みだすからだ。戦争、そして戦争だけが、在庫問題を解決できるのだ。

・警察は、「内部の敵」を軍事的に処理するという任務をはっきり与えられている武装組織である。

・社会の好戦的な者、虚無的な者など、潜在的な不穏分子を制御するツールとして、徴兵は「軍事的」必要物なのだ。

・あらゆる文明において、軍はわれわれが「就業能力がない」と称する階層に対し、国家扶養の逃げ道を提供してきた。

・忠誠は、理由を必要とする。その理由をつくるには、敵が必要なのである。

・攻撃の脅しに対して唯一受け入れられる反応とは、広い社会的文脈においてはいまだに「目には目を」なのである。

・われわれは時速30キロの速度制限を受け入れるよりも、自動車が毎年4万人の人々を殺すのを受け入れる方を選ぶのである。

・古代文明の中で、大規模かつ複雑で繁栄した文明に共通した特徴的な機能は、その生け贄儀式の広範な使用である。ほぼ完全な地域的覇権を獲得したために「戦争」の可能性がほとんどなくなってしまった文明に限定すると、そのすべてにおいて、何らかの形の儀式殺人が最高の社会的重要性を持っていたことがわかる。

・食糧供給の不足という避けがたい歴史的サイクルの機先を制するため、新石器時代以降の人類は、組織化された戦争によって、余剰人員を抹消するのである。

・伝統的に、環境に適応した動物が定期的な窮乏の危機に直面した場合、通常消え去るのは種の「劣等」メンバーである。

・こうした危機への動物の社会的反応は、集団移住という形をとる場合もあるが、その過程で弱者は落伍していくのである。

・人間社会では、生存のための戦争で戦い、死ぬのは、通常は生物学的に強い成員である。これは自然淘汰とは逆行している。

・自然淘汰の根本的な目的は、種の生存であって改良ではないという事実を強調しておく。

・伝統的な戦争手段では、消費人口を種の生存に適した水準にまで引き下げるのに不十分となるのはほぼ確実であろう。

・疫病は、もはや人口抑制の重要要因ではない。

・かつては自滅していった望ましからぬ遺伝傾向が、いまや医学的に維持されてしまう。かつては再生産可能年齢以前に死を招いた病気が、現代では治療されてしまう。この結果、望ましくない虚弱傾向や変異が永続する。

・アメリカのような先進的かつ複雑な経済においては、安定化機能を十分に果たすためにはGNPの1割以上を無駄にしなくてはならない。

・アメリカの不況は常に、軍事支出がきわめて不十分な時に生じているのである。

・宇宙研究は、これまでに考案された中で、古代社会におけるピラミッド建設などの儀式的機構の等価物にもっとも近いといえる。

・社会に対する潜在的な敵をコントロールするための代替物としてもう一つ可能なのは、奴隷制の再導入である。

・洗練された奴隷制度の開発が、平和世界における社会コントロールの絶対的な必要条件となることは十分にあり得る。

・反社会集団を設立し、それを社会団結のための「新たな敵」とするのである。社会のあらゆる水準において、雇用不可能な者たちが容赦なく不可逆的に増大しており、一般的価値観からの全般的疎外も拡大している以上、このような構想は戦争システムの付属物としても必要となるかもしれない。

・余剰人口は戦争の原料となる。

・浅い考えでうなずく前に、よく考える必要がある。

・戦争システムは、「世論」の重要な部分が主観的な嫌悪をいくら示そうとも、有史以来その有効性をはっきりと実証してきた。戦争は、今日のわれわれのものを含め、驚異的に継続性の高い文明の発展基盤を提供してきた。

・怒りやヒステリー、未熟で幼稚な道徳的糾弾が、根本的な真実の冷静な認知を妨げてしまうであろう。

・戦後の「平和」教育を受けた多くの人々にとって、平和とは宗教であり、無条件でよいものであり、そこにたどりつけば思考停止が許される、一種のゴールである。

・個別の正論を積み重ねて到達した結論が、従来の常識と整合しない場合、それは理論展開に穴があったか、あるいは常識がまちがっているかのどちらかだ。

・終戦記念日だの「平和」式典だの、死人をダシにした愚劣な儀式がいくらも行われる。

・戦争では人が死ぬ。それは事実。が、平和でも人は死ぬのである。

・戦争の理論はあっても、平和の理論はないのである。戦争には目的がある。したがって、戦争はある目的にむけて組織化される、一つの大きな秩序である。逆に、平和には目的がない。そもそも平和とは、戦争がない状態としか定義できないのである。よって平和とは無秩序であり、無秩序を記述する有効な理論はいまのところない。



アイアンマウンテン報告―平和の実現可能性とその望ましさに関する調査

アイアンマウンテン報告―平和の実現可能性とその望ましさに関する調査

  • 作者: レナード・C. リュイン
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 1997/07
  • メディア: 単行本



nice!(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

トラックバック 0