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『キング&クイーン』 [☆☆]

・本来英語でセキュリティ・ポリスは公安警察を意味するが、野球の「ナイター」同様、SPは純然たる和製英語であり、役割としてはむしろアメリカのシークレットサービスに近い。

・いくら示してみせたところで、いつまで経ってもそこに開けるべき扉があることさえわからない様子で、きょとんとしていたのである。

・刃物に対する恐怖心は人の身体を竦ませ、強ばらせ、凍てつかせる。ほとんどの人が、刃物が自分に向かって突き出されることがわかっていながら、為す術もなく致命的な瞬間を迎えてしまうのだ。

・アメリカのシークレットサービスとは異なり、日本のSPは任務中も濃い色のサングラス等で顔を隠すことはほとんどしない。日本国内ではその方が逆に目立ってしまうからだ。

・少々の法律違反に目をつむることはあっても、進んで法律違反をするつもりはない。

・SPには考えているひまなどない。危険か、否か。状況をとっさに判断して、行動する。考えるのは、その後だ。

・現実問題として警護対象である政治家が国民の規範となる志の持ち主であることは、ましてや人として惚れ込むことができる対象であることは、残念ながらまれだ。

・古武術や合気道では一般に「後の先」と呼ばれる呼吸で動くことが多い。攻撃してきた相手の力を最大限利用して反撃に転じる。「先の先」は逆に、相手が動こうとする気配を読み、一瞬早く動くことで相手の動きを封じる。

・自分が自分自身として振る舞うことのできる仕事に出会うのは、この御時世、奇跡と言っていいほどの幸運だ。

・よく聞けば彼の言説は決して論理的でも、また問題を根本からつきつめているわけでもないのだが、テレビの視聴者には「くるくると良く回る舌」と「歯に衣を着せぬ型破りな物言い」、何より「わかりやすい一言」こそが求められる。

・強いストレスを感じる者は、精神のバランスを図るために、しばしば身近にいる弱者に自分が感じているストレスを押し付けようとする。

・弱音を吐くわけにはいかなかった。自分が「弱者」であると認めるわけにはいかないのだ。

・たいていの人は、知っている相手に殺される。統計によれば、殺人事件のほとんどは「顔見知り」による犯行。被害者の多くは家族や友人、恋人、仕事のパートナーといった知り合いに殺される。むしろ、知らない人──通り魔や留守宅で鉢合わせした居直り強盗──に殺される確立は極めて低い。

・ふだん持ちつけない銃があるからこそ、彼らの側に油断があった。銃を突きつければ何とでもなる、そう思ったに違いない。だから彼らは、人通りの途絶えたマンション前で漫然と待っていた。お陰で警察を呼ばれるというヘマをしでかしたのだ。

・テレビの視聴者は、それが嘘であろうと、真実であろうと、ハラハラドキドキできさえすれば満足なのだ。彼らはそれ以外の番組を受けつけない。

・戦略に欠陥があるか否かなどは真の問題ではない。なぜなら完璧な手などというものは存在しないのだから。

・対戦相手に負けを宣言させる。そのために必要なのは相手の戦意を喪失させること、この相手には勝てないと思わせること、相手の心を折ることだった。

・祈りに応えてくれたのは神ではなかった、現れたのは、死神。

・一般的に、プロとしての意識が強い者ほどアマチュアと組むのを嫌がる傾向がある。

・どんなジャンルにおいても「良いセコンド」なしには良い仕事はできない。言い換えれば、自分の周囲に良いセコンドを作れるか否かが、プロとしての条件なのだ。

・数人の天才と、紙一重で天才に届かない多くの者たち。その違いは天と地ほどにも大きい。



キング&クイーン (100周年書き下ろし)

キング&クイーン (100周年書き下ろし)

  • 作者: 柳 広司
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2010/05/26
  • メディア: 単行本



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