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『この国の経済常識はウソばかり』 [☆☆]

・75歳以上の後期高齢者は、これまで自分がかけてきた年金保険料の数倍もの年金をもらっています。

・もともと、福祉制度は数が多い若い世代から数が少ない貧乏な退職世代に送られる制度でした。ところが、今は貧乏な若い世代から時間も資産も豊かなお年寄りの世代に向けられています。

・その昔、人口ボーナス力によって成長した若々しい郊外都市(新興住宅地)は今、団塊の世代の退職などで、急速に陰りを見せています。

・子供を育て上げたちょうどそのころ、子供より手のかかる親がいるという状況を長寿社会がもたらしました。

・東海道新幹線ができたころは、投資によって大幅な時間節約効果が達成できましたが、これからつくる長崎新幹線では、在来線に比べて10分ほどの短縮効果しかないとされています。それなのに、莫大な資金が投入されています。

・鉄道だけではなく、在来の道路と比べ5分や10分しか短縮できないバイパスや高速道路が全国に建設されています。

・国交省は、乗用車利用の場合、経済効果を1時間3000円強と試算しています。しかし、1時間早く目的地に到着でき、その1時間で3000円以上稼げる人は田舎にどれだけいるのか、については検証されなかったのです。

・報道されるのは、高齢者の不安や痛みばかり。「高齢者はみな弱者」という記憶がマスコミや政治家に刷り込まれているからでしょう。

・バブル崩壊後の90年代、住宅価格が値下がりしてしまい、担保価値も下がってローンが清算できないため、住み替えもままならない物件を、私は「生涯監獄」という言葉で表現しました。

・それでも買ってしまうのは、「不動産はまた値上がりする」というサラリーマンの持ち家に対する記憶と信仰が変わっていないからです。目の前で変化が起きていても、判断に影響する記憶を書き換えられない限り、行動の修正はできないのです。

・報道に歩調を合わせ、付和雷同的に「けしからん!」と連発するだけでは、自分の判断基準をつくって、自分で考えるということにはつながりません。

・高級な牛肉などは、貧しい人たちが食べている穀物より質的によいものを食べさせて、得られることもあります。

・新世紀に入ってからの資源・食糧の価格の暴騰は、先進国による途上国に対する植民地主義が真に終焉した証しとして見ることができます。

・高度成長時代、親の世代は、今から考えれば大した結婚力もないのに、異性に対して自分たちの将来性を豊かに感じさせることができました。幸せな時代でした。

・人間には自由を求めると同時に、拘束されたいという願望もあります。拘束されると自分で考える必要性から解放されて、「仕方ない」「なるようにしかならない」という気休めの言葉が自分にしっくりしみ込むようになります。

・企業活動を長期として捉えれば、経営の軸としては、何事も「所有」という概念がふさわしいのですが、短期で捉えれば、状況変化に合わせて「レンタル」でしのいでも、とにかくよい数字を出せという発想になります。

・マスコミや政治家の関心領域は、従来型の年長者が考えたがるテーマに偏っています。ですから、年長者の利害にかかわっている問題が優先的に議題になってしまいます。

・年長者には、将来の債務を少なくする政策と、将来にツケを残さないなるべく小さな政府をつくる哲学が日本の未来や将来世代のためになるという根本原則が理解されていないのです。

・中立命題は、政府が国債を発行して借金して景気対策を施しても、借金はやがて増税として国民にツケが回ってくるので、国民は政府の景気対策の分だけ消費を抑え、将来の増税にそなえて節約する。このことによって景気対策の効果が相殺されてしまうという視点です。

・孫子の世代が払うことになるクレジットカードがドンドン使えるという状況なら、借金で政府投資をすることが歓迎されます。どうせ他人の借金なら、どんどん公共事業をしてほしいというのが本音なのではないでしょうか。

・ゆがんだ市場でまじめに競争するものはバカをみるだけです。

・何千万円もする住宅を借金して買うと、それ以上、家以外のリスク資産にお金を投じて資産を運用することは困難になります。

・格付けは落第生なのに、市場では最も低いリスク(利子)で調達できる最優秀の金融商品が日本国債だったのです。落第生を特待生に変えているのは、国民の力です。それは、国民のマネーを「国債相場の維持」という目的に向けて総動員している政府の偉業でもあるのです。

・福祉といえば、老人福祉が優先され、家族や子孫繁栄のための助成策は戦後ずっと後回しにされてきました。

・高齢者の大半が死ぬまでに寝たきりになって、その寝たきり期間は平均8ヵ月超という実態があります。

・実はATMばかりでなく、コンビニのレジも銀行機能をはたしているのです。つまり、水道料金、電気料金、電話代等のコンビニ支払いです。その他、コンビニの持つ能力には目を見張るものはあります。税金を納める役所の窓口としての機能です。高給の公務員はたいてい5時には仕事をあがってしまい、税金を納める側の都合を無視していますが、コンビニは24時間営業です。

・妻や夫や母親がいなくても近くに便利なコンビニさえあれば、生活に何ら不自由を感じない。だとすると、少子化、晩婚化、非婚化の影の立役者のひとつはコンビニともいえるのではないでしょうか。

・今、コンビニに目をつけているのは、警察です。監視カメラ機能を強化してもらうと、防犯活動、捜査活動に役立つからです。コンビニを拠点にした監視網ができあがる時代は近いかもしれません。

・悲しいことに、ボーっとしながら普通に家を持ち、ボチボチ出世するという日本型の「幸せなサラリーマン像」は崩れてしまったのです。

・一人っ子同士が結婚したら、それぞれの親の住宅2軒を相続することになります。同居しないなら、いずれ処分することにもなるでしょう。どうみても、中古住宅は供給が増えます。

・子供の数が減り大きな家は必要でなくなると、面積の小さい都心の住宅が見直されます。郊外でなければ住めないような大家族は減っているのです。

・日本の土地税制は、建物への課税が重いので、どうしても税金があまりかからない地面を持っていたいという人が多くなります。これが土地神話の本質です。

・ローンの支払いが終わる30年以内に大地震が起こる確率は約7割。最大100兆円の被害のうちには、我が家の損失も含まれそうなので、持ち家は売却して賃貸にすることにしました。

・普通は誰しもあまり考えないこと、考えたくないことも時々考えておくことは、どんな時にも対処できる「経済脳」を作るうえで無駄にはなりません。どこかで危機を想定して生きてゆくことで、ひと味違う着想力がつくはずです。

・テレビ画面を薄くする技術が脚光を浴びたわけですが、カラーテレビが生まれたことの革新性に比べれば見劣りします。高度成長時代も今も乗用車のタイヤは4つのままで、劇的な技術進歩があるわけではありません。

・米国では、「ノンリコース融資」といって、住宅ローンが支払えなくなったら、暴落してしまって含み損を抱えた物件でも、その物件を担保に差し出せば、残りのローンをほぼ帳消しにできる住宅ローンが一般的です。

・人口が減少する人口オーナス時代には、無駄を排し、莫大な公的債務を減らすため、既得権益者にも不利益を分配する覚悟が必要です。

・政府や自治体、特殊法人が、将来世代の負担(公的債務)を担保に、不要なものをつくって、自分たちの時代だけ繁栄を楽しむ──こうした仕組みも、将来世代という大切な資産を使って景気をよくするという点から見ると「資産担保成長モデル」の一種といえます。

・年長者ら既得権益者は歳出カットを嫌いますが、増税も嫌なのです。そして、最後は問題の先送りです。歳出カットもイヤ、構造改革もイヤ、増税もイヤとなると、あとに残されたメニューはインフレか国家破産しかないのです。

・近年の「骨太方針」にしても、骨の髄は空洞化しており、そこをバラ色の夢で補っていたのですから、景気が後退すると「歳出削減反対」といった風圧を受けただけで、ぽっきり折れてしまうことになるのです。

・大きな構造、大きな物語の中で日常の些末な現象を見ていくことが、この国を変える上でとても大切なのです。



この国の経済常識はウソばかり (新書y)

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  • 作者: トラスト 立木
  • 出版社/メーカー: 洋泉社
  • 発売日: 2008/09/06
  • メディア: 新書



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