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『インテリジェンス 機密から政策へ』 [☆☆]

・鏡像効果(ミラー・イメージング:自分のイメージを相手に投影すること)、すなわち、他の国や個人は自国または自分と同じように行動すると想定することは、分析を損ないうる。

・インテリジェンスは、収集、分析、秘密工作、カウンターインテリジェンスという、4分野の活動に大別される。

・1940年まで、米国は国家レベルにおけるインテリジェンス機関に類するものを保有していなかった。

・ミサイル・ギャップ問題は不正確である。伝説では、インテリジェンス・コミュニティは、おそらく卑劣かつ利己的な動機を持って、ソ連の戦略ミサイルを過大評価したということになっている。しかし、この伝説は真実ではない。過大評価は、主としてアイゼンハワー政権を政治的に批判する人々によってなされたのである。

・政治化は、分析を書いた者によるものではなく、機密指定されないバージョンのインテリジェンスを政治的に有利な形で用いようとした行政府と立法府の関係者によるものであった。

・上院情報委員会と下院軍事委員会との関係は、一番よい時でもよそよそしく、悪い時は敵対的なものである。

・一般的には、予算配分する側は承認する側を軽蔑する(また、時には無視したがる)ものである。

・金銭への愛はすべての悪の根源であるのみではなく、金銭はすべての統治機構の根源でもある。いくら使い、誰がそれを決めるかは根源的な力である。

・インテリジェンスの一つの機能は将来を見通し、現時点では優先順位が高くないが、将来には優先順位が高くなるであろう問題を特定することだ。

・国際関係の性質上、予期しない事態は警告なしにあるいはわずかな警告により持ち上がるのが常である。これらは、アド・ホック(突発事項)と呼ばれることもある。

・クリントンは諸課題の優先順位を再検討することには関心を持たなかった。彼のインプットなしには優先順位は変更できず、結局、優先順位は国際社会の現実からかけ離れていき、インテリジェンス管理者によって順位を押し上げられた問題が高い優先順位を持つようになった。

・収集がなければ、インテリジェンスは推測以上の意味をほとんど持たない。すなわち、それは教育のある者の推測であろうが、それでも推測にすぎない。

・1970年代後半から1980年代にかけて、キューバが第三世界のあらゆる場所に派遣軍を送っていた頃、新しく建設された野球場によって彼らの到着がわかった。

・無人航空機を戦闘行為の前に敵の領土上空を飛行させることは避けるべきだとし(国際法違反の侵犯になる)、したがってステルス性は必要ないと反対する人々もいる。

・ジャーナリストが外国におり、政府関係者と会うことを求め、質問することにはもっともな理由があるので、ジャーナリストはNOCにとって理想的なカバーである。

・ヒューミントの情報源の一部は自ら進んでそうなっている者である。彼らはウォーク・インと呼ばれる。

・こだまとは、あるメディアが見つけ出して報じ、その後他のメディアも追随して報じた結果、それ自体が非常に大きなものとなってしまい、実際以上の重要性を持つかのようになってしまう効果を意味する。

・継続的にインテリジェンスを作成し提供することは、政策決定者を鈍感にする効果がある。

・分析担当官として最低限必要な技術は、一つ以上の専門分野に関する知識、適切な言語能力、そして自らを文章で表現する基礎的な能力である。

・常に二つの質問を尋ねることにしていた。面白い考えが出るかということと、書くのが得意かということである。この二つの能力さえあれば、他はすべて訓練と経験でなんとかなる。

・お役所ではわかりきったことだが、長い文書より短い文書の方が政策決定者の注目を勝ち取るものである。

・どんな分野でもプロというものは、同業者に囲まれて、彼らにはお馴染みだが自分にとってはそうではない状況に直面してみれば、真実のほどはいざ知らず、知っていると主張したがるものである。

・知ったかぶり(「もう行った、もうやった」)と未経験(「えっ! そんなの見たことない!」)に見えることのどちらを選ぶかと問われれば、分析担当官はたいてい知ったかぶりを選ぶ。

・インテリジェンス・コミュニティは、9.11に至る段階で点を結ばなかったことを非難されたが、イラクの大量破壊兵器の疑いに関しては、点をたくさん結びすぎてしまったことを非難された。

・情報がないということは物事が起こっていないということではなく、単に情報が入手できないだけだ。

・テロリズムが政治の道具として好まれる一つの理由は、最小の力で大きな効果を上げられるからである。

・「友好的な」インテリジェンス機関などというものはない。友好国のインテリジェンス機関しかない。

・意思決定者は短期的な問題に集中するあまり、過去に関与した類似の状況を正確に思い出せない傾向がある。彼らは過去からやや誤った教訓を学び、それを新しい環境に誤った形で適用しているのである。

・経済の不安定化は、キューバのような独裁国家より、チリのようなより民主的な国家に対してより効果的である。前者においては不足や欠乏を国民に課すのに良心の咎めはなく、国民の抗議に対して鈍感(あるいは寛容)だからである。

・準軍事作戦には、国家の制服組軍事要員が戦闘員として使用されることはない。

・英国は1998年に、戦争中、遅くは1945年に至っても、インテリジェンス機関がヒトラーを暗殺しようと企てていたことを明らかにした。英国がその計画を断念したのは、良心の咎めや成否の懸念ゆえではなく、ヒトラーは軍事司令官としてあまりに気まぐれなので、彼は連合国にとって価値があると決めたからである。

・インテリジェンスを扱う著述家および専門家のほとんどは、政策決定者をインテリジェンス過程の一部分として捉えていない。政策決定者は、インテリジェンスを受領するだけではなく、形成する。政策を絶えず参照しない限り、インテリジェンスは無意味なものとなる。

・存在するのは、政策の成功とインテリジェンスの失敗だけである。政策の失敗とインテリジェンスの成功は、存在しない。

・パズルには解決策がある。困難かもしれないが、見つけることができる。他方ミステリーは、知りうる解決策が見つからないかもしれない。

・最良の政策決定者は自分が何を知らないかを知っており、さらに学ぶ手段をとる。政策決定者の中には、自覚が足りず、同時進行で学ぶか、ごまかしを行う者もいる。

・悪い知らせに対する最も恐ろしい反応は、悪い知らせを持ち込んだ使者を殺す王の習慣にならって、伝達者を殺すことである。

・メディアは、組織として、うまくいった物事に名誉を与えるよりも、うまくいかなかったことを報道して利益を稼ぐ。インテリジェンスが重要な出来事を正しく分析しても、まずニュースにはならない。

・米国人口が移民を基盤にしていることが外交政策論争に反映される。世界各地の事実上すべての国が米国人口の中に存在する。世界での米国の政策や行動は──実際のものであれ計画段階のものであれ噂にすぎないものであれ──人口のうちある部分に反応を引き起こすだろうし、さまざまな反応を引き出すことにもなろう。

・インテリジェンスとは物事のみを対象とするものでも、場所のみを対象とするものでもない。場所における物事を対象とするものである。

・単純に兵力数を追跡するだけでは、それら兵力が引き起こす脅威を測るには十分ではない。意図のみが、真の脅威レベルを測ることを可能とする。

・インテリジェンスにおける知的罠の一つが鏡像効果(ミラー・イメージング)である。他者に対して、自らと同じような野心、目標、動機をあてはめることには、抗しがたいものがある。

・国家には永遠の友も同盟国もない、あるのは永遠の利益のみである。

・高齢のソ連の専門家やロシア語を話す者をあまりに多く抱えていた。こうした専門家の残りの任期は短いとわかっていながら、彼らを再訓練するために資金を使う価値はあっただろうか。彼らを手放した上で、新しい技能を持ち、より長く働くことが見込まれる若者に投資した方が、賢明に思われた。しかし、高齢の職員を解雇することができず、彼らの多くも引退したがらない中で、新しい職員のための新しいポストを作るための資金が十分ではないという状況が生じた。

・アルカーイダは、かなり長い計画サイクルを有していることが知られている。したがって、テロが休止している期間も、この計画サイクルのどこかに当てはまっている可能性がある。

・ネットワーク戦争により、情報部員は単なる戦闘支援要員ではなく、戦闘要員となりうるようになった。

・政府がインテリジェンス機関を持つのは、相手から提供を拒まれるような情報を政府が必要としているからである。

・「目的は手段を正当化するか」という問いに対する通常の答えは、否である。しかし、目的が手段を正当化しないとすれば、何が正当化するのであろうか。

・国益だけが行動を導くのであって、怒りでも感情でもその他の主観的衝動でもないということである。

・英国と米国のインテリジェンスは、無線諜報によりドイツがユダヤ人を大量殺害していることに気づいていたが、連合国は二つの理由により、軍事活動を(鉄道や収容所の爆撃)を行わなかった。一つは、収容所を直接攻撃するよりも、純粋に軍事的な目標を攻撃した方が、戦争をより早期に終結させ、それによって強制収容所にいるより多くの人間を救えるとの考えである。もう一つの理由は、同盟国が収容所について知るに至った情報源や手法の保全に関する懸念である。

・暗殺はまた、きわめて信頼できないツールでもある。犠牲者の後に誰が地位につき、後任者がどのように振る舞うかについて、完全な確証がない限り、暗殺はそこにある問題を解決する保証にはならない。

・インテリジェンスのジェネラリストの一群を作りだすことは実際的ではなく危険である。広く浅くは知識があるが、どんな問題についても多くを知らない人々になる。



インテリジェンス―機密から政策へ

インテリジェンス―機密から政策へ

  • 作者: マーク・M. ローエンタール
  • 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
  • 発売日: 2011/05
  • メディア: 単行本



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