SSブログ

『複雑さと共に暮らす デザインの挑戦』 [☆☆]

・生活の営みにつりあうためには、テクノロジーは複雑でなければならないのである。

・複雑さは良いのだが、分かりにくいのはいけない。つまり、複雑なものと混乱しているものを区別しなければならない。混乱しているということは、分かりにくいということである。

・「複雑さ」という言葉は、世界の状態を表わすために用いる。「分かりにくい」という言葉は、心の状態を表わす。

・複雑さの中には望ましいものもある。ものごとが単純すぎればつまらないし、何事もなさすぎるように思えてしまう。人は中くらいの複雑さを好む。簡単すぎるものは退屈で、複雑すぎるものは混乱する。

・テクノロジーにおいて、使用の段階で簡素化するということは、常に基盤となるメカニズムに複雑さを加えることになる。車のオートマチックトランスミッションを考えてみるとよい。ドライバーにとって簡単になるということは、その背後の機械がより複雑になるということを伴っている。

・簡単さというのは、理解と強く結びついた心的状態である。モノはその動き、選択肢、外見が知覚する人の概念モデルに合っているとき、簡単であると知覚される。

・誰しも上下の違いを覚えることはやさしいが、子供にとって左右の区別はとても難しく、多くの人はそれが大人になるまで続くのである。ヒューマンエラーの歴史を振り返れば、左右の混乱は頻繁に見られ、上下ではほとんど起きていないのだ。

・ボタン一個のガレージのドア開閉装置は簡単だろうが、それ以外は何もできない。

・機能リストは、そのほとんどをたぶん使わないだろうと買う人自身も気がついていても、購買意思決定に影響を与えることをマーケティングの専門家は知っている。

・六角形のミツバチの巣など、動物の複雑な構築物は、それを造ろうという明白で意図的な目的がなく築かれる。そうではなく前の行動が先の行動を制限し規定するのである。結果として複雑な構造物ができ、目的やリーダーを要さない自己組織化プロセスを介しての行動となる。

・もちろん、機械に知性はない。しかし、知性があろうとなかろうと、社会的なマナーは必要だ。

・装置の前面のデザインは非常に注意が払われ、美しくエレガントになっているが、背面は無視されている。しかし、多くのビジネスの環境では、あるいは、家庭ですら、美しい前面はそのデバイスを用いる本人にしか見えず、訪問者、顧客、友人、家族など他の人は、背面から見ることになる。たいていの背面は、動物でもテクノロジーでも、美しいものとは思われていない。

・人が作った踏み跡は「望みのライン(けもの道)」と呼ばれる。公式の街路や歩道の配置はそれらと適合しなかったけれども、望みの経路を反映しているからだ。

・怠惰さは実のところ、「エネルギー最小化」原理と言われる物理学の基本法則なのだ。すべての物理システムはエネルギー消費を最小化する状態を好む。人も同じだ。

・絶対に、顧客が解決しろといった問題を解いてはいけない。顧客はたいてい症状に対して反応しているからである。デザイナーの最初の仕事は、根本的な問題は何か、本当に解決すべき問題は何かを発見することである。

・良いホテルとは何か頼むと、それを手に入れられるもの。素晴らしいホテルでは、それを頼む必要すらない。

・医師の視点からは、患者は検査結果と計測数値の集まりなのである。人としての患者は忘れられがちとなる。

・参加者のイベントに関する記憶の重要な要素は、彼らの撮った写真から得られる。これらの写真を見て、家族は悪い思い出を思い起こすことなく、良い思い出を強化するのだ。

・何もすることがない時間はやることが詰まった時間よりも長いと知覚される。しかし後で思い出すと、やることがなかった時間はあった時間よりも短かったと知覚される。

・車を洗って磨き上げると運転が快適になる。体を洗って、おしゃれな服を着れば世界が明るく見える。車を洗ったことで機械的に何かがよくなったわけではないのは明らかだが、人の受取り方が違ってくるのだ。

・現実はめったに期待通りにはならないもので、多くのことがうまくいかないのだ。しかし、記憶の段階になると、不愉快なことは消えていき、良い部分が残るのである。現実を超えて強められ、増幅されてさえいるだろう。

・何かを学ぶ最も良い時期とは、それが必要であると学習者が気づいた直後だ。早すぎる時期に教えると退屈し興味を失う。

・今日の世界では、選択肢は増える一方だが、皮肉にも満足感は減少している。



複雑さと共に暮らす―デザインの挑戦

複雑さと共に暮らす―デザインの挑戦

  • 作者: ドナルド・ノーマン
  • 出版社/メーカー: 新曜社
  • 発売日: 2011/07/28
  • メディア: 単行本



nice!(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

トラックバック 0