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『空を飛ぶための三つの動機』 [☆☆]

・目つきは鋭いのに、小猫が威嚇しているようで迫力に欠ける。

・事実だからこそ言ってはいけないこともある。

・人間関係の軋轢を飲み会で何とかしようというのはバブル世代の発想だと思った。

・足下の枯れ枝を拾いながら歩くの。火をおこそうと思ってから薪を集めようとしても遅いんだよ。

・山菜採りの人が間違えて年間何人死んでいるか! キノコと山菜採りは日本で一番危険な趣味なんですよ。

・栄光あるプロフィールは、すべてが人界でしか通用しないものだった。

・人間が管理していたから緑が美しく歩きやすい癒しの森になった。懐かしい自然の風景というのは大抵が本物の自然とは違う。人間の手が入っているんです。

・対策できない以上、教えたって不安になるだけでいいことないから黙っていたんですよ。

・世の中にこうした場所があるのは事実だ。老人の病室で誰かが生命維持装置のコードを引っかけて止めてしまう。だがなぜか誰も事故に気づかなかった──そういう魔法の使える場所か、ここに限らずどこにでも。

・ショットガンには硝煙反応とかないだから自殺に見せかけるために被害者の手に銃を持たせて引き金を引くとかしなくてもいいんだよ。硝煙っていうのはマズルから出るもんだからこういうバレルの長い銃じゃ射手の手にはつかない。

・人間は普通、自分が後ろめたいときは他人にも同じようなことをされるかもしれないと思ってしまうものですよ。奥さんの浮気を疑う旦那さんって大抵自分が浮気しているものじゃないですか。

・ぼくはよくわからない時期に意味不明な理由で裏切るかもしれない最悪のパートナーです。組みやすい相手はこの逆ということになります。一本筋の通った主張のある人。裏切らない、あるいは裏切る理由のわかる人。

・真剣勝負では誰にでもいい顔をする奴は嫌われますよ。多少そりが合わなくても目的がわかりやすい人は信用しやすい。

・実のない言葉だけで説得できる相手は、他の誰かの言葉で簡単に裏切ってしまう可能性がある。

・思考が柔軟で瞬発力がある──悪く言えば持続力がなく落ち着かない。

・「面白そう」だからという以外に理由が必要なんですか。ジェットコースターもおばけ屋敷も突き詰めればそうでしょう。

・幻覚・幻聴は自分では偽物だとはわからないんですよ。下手な心霊写真には継ぎ目が見えますけどね、脳が自ら記憶から作り上げたコラージュにはそんな瑕疵はありません。

・思春期の子供は想像力が豊かですからね、その代わりに現実把握能力が低い。

・「他人と違う」のを嫌うのはいつでも子供ではなく大人だ。──でもこの子、もうすぐ小学校に上がるものですから。このまま、というのはちょっと。

・親というものは医者を信じている。医者は自分の専攻する知識を信じている。医者の知識になければ子供は詐病扱いされることもあるだろう。

・爪を切るのにいちいちためらう? 髪形を変えるのに髪の毛と相談する? 嫌だって泣かれても困るでしょ?

・ジェンガ。木のブロックを積み上げていく。崩れないように積み上げていく。慎重に。自分のターンは無難にやりすごして、誰か自分より要領の悪い馬鹿が全部を台なしにするのを待つ。それにロジックはない。ただただ大人しく無難に振る舞うだけのゲームだ。

・催眠術じゃ犯罪とかを無理強いできない代わり、本人が望んでいることをやらせるのはすごく簡単なんだ。

・裏切らない味方を作るコツは、裏切るタイミングを把握しておくこと。

・三十代からすれば一年は三十分の一に過ぎないが十歳なら十分の一、五歳なら五分の一。歳を経るほどに時間感覚は早まっていく。

・水気を断つのがまず基本。トイレが近いのはどんな商売でも欠点になりえる。

・携帯電話で暇を潰せるようになったのは素晴らしい文明の進歩だ。クロスワードでもナンバープレイスでもテトリスでも、眠気さえ我慢すれば無限に時間を潰していられる。

・「ぼ、暴力はやめてください! 子供の前ですよ!」 子供の前って。あんたが連れてきたんじゃないのか。

・あの人はきっと知れば親身になってくれるのでしょう。でも知らないのです。あの人が親切かどうかは関係ないのです。

・カツオドリはたくさんトビウオを食べる。──空を飛べば魚から逃げることはできる。でも鳥よりうまく飛ぶことなんてできない。

・「たとえ動物といえどもその努力を嘲笑うのはどうかと思います」 「──それは「努力」を選択できる人にだけ言えることだと思いますよ」

・得意技があるとそればかり注目されるけど本当は皆平凡に生きたいんだ。鳥だって、飛ばなくて済むなら地べたを這う方を選ぶ。

・きっと人類は南極や宇宙でも空気を読めないことをしでかして数百年後に先祖の悪口を言うんでしょう。歴史は繰り返す。

・ドードーがのろまだったとかガラパゴスゾウガメが捕まえやすかったとか、そんなのは卑怯な後付けの理屈だ。いじめはいじめられる方に原因があるっていうのとどう違うんですか。滅ぼしたかったから滅ぼした、それだけのことです。

・マンボウは三億も卵を生む。成魚になれない二億九千九百九十九万九千九百九十八匹のマンボウたちにとって生こそがイレギュラーな結果で、死こそがその定められた運命なのかもしれない。

・催眠術じゃ犯罪とかは強制できないけど記憶の改竄は簡単だ。悪い催眠術師に引っかかったばっかりに実のオヤジにレイプされたとか思い込んでいる気の毒な人がアメリカ辺りにたくさんいる。

・チャンスはこの瞬間だけ。思い切らないのなら、今日も明日もいつまでもずっとそのままでいればいい。

・かつて星新一は一粒飲めば完璧に栄養が補給できるカプセルよりも、おいしくていくら食べても太らない食べ物こそ発明されるべきだと言った。

・君が、こんな世界滅んでしまえと望むなら。手を握って、一緒に滅びの呪文を唱える。男が女の子にしてあげられることは、そのくらいのものだ。

・日本人は潔癖症なんだよ。──トリハロメタンが除去できる浄水器って何なんだろう。そんなものあったら水道局が実装してるよ。



空を飛ぶための三つの動機 THANATOS (講談社ノベルス)

空を飛ぶための三つの動機 THANATOS (講談社ノベルス)

  • 作者: 汀 こるもの
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2011/10/06
  • メディア: 新書



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