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『本へのとびら 岩波少年文庫を語る』 [☆☆]

・僕は大人の小説には向いていない人間だということを思い知らされました。何でこんな残酷なものを人は読めるのだろう、と疑問に思ってしまってね。

・戦争に負けたのが大きなきっかけになったと思います。「ものを考えないからこういう愚かな戦争をやって国を滅ぼすんだ」って。それで「本を読まなきゃいけない」って変わったんだと思います。

・本を読むと情操教育になる、価値観を豊かにするためには本を読まなければいけないとごく一般的に言われるようになったのは、まさに戦後だと思います。

・自我というのは、だいたい周りの、両親や兄弟や友人たちに対する反発でつくられている。

・企画が通るわけじゃないんですが、何かのチャンスに、「これを」と出せる企画を持たずに、手ぶらでいてもしょうがないわけです。

・一円でも安いほうがいい、なんていうつまんないことのために右往左往している。

・見ている範囲もほんとうに狭くなってきた。歴史的視野とか人間のあるべき姿とかの大きな主題が、健康とか年金の話にすりかえられてしまいました。

・挿絵がひじょうに大きな意味を持っているということは、世界のものが何も分からないときに、手がかりになるということです。

・屋敷のなかに飾る切り花を育てるためだけの温室があったりするんだ。

・たとえば、頭がたくさんある竜を描くのでも、その首のつけ根が生物学的にはいったいどうなっているのか、ヨーロッパの人のようにあいまいにできない民族と、日本人のようにすぐ放棄してしまう民族がいるんです。

・殺人事件ばかりあつかう絵入りの日曜新聞のようなものもあったようです。

・油絵を展覧会場のきまった照明で見るのとちがって、自然光で見る機会があると、天候や時刻の変化で、色や質感がどんどん変化して、絵そのものが生きているようで驚きます。その変化こそその絵画の深さであったりするんです。

・立派なことは言わず、むずかしいことも言わず、ただ損をするなとだけ子供たちにときどき言いました。

・九歳の少年が関東大震災で体験したことの重さが分かったように思いました。彼のアナーキーなニヒリズムは被服廠跡で体験したことと無縁ではなかったはずです。

・ニヒリズムにもいろいろあって、深いそれは生命への根源への問いに発していると思いますが、安っぽいそれは怠惰の言いのがれだったりします。

・要するに児童文学というのは、「どうにもならない、これが人間という存在だ」という、人間の存在に対する厳格で批判的な文学とはちがって、「生まれてきてよかったんだ」というものなんです。

・まだ以前の生活を、いつまで続けられるかって必死でやっている最中でしょう。それはどんなにやっても駄目な時がくるんです。



本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)

本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)

  • 作者: 宮崎 駿
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/10/21
  • メディア: 新書



タグ:宮崎駿
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