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『子どもの「10歳の壁」とは何か?』 [☆☆]

・どんなに、よいと言われる胎教を行い、母親が栄養、睡眠をいっぱいとったとしても、いまだかつて、どの国においても、出産時に分娩台で立ち上がったというニュースは聞いたことがありません。ましてや、生まれて数か月で大人にわかる言葉でしゃべり始めたという情報も聞いたことがないのです。

・大人の安易な評価や励ましは、逆に子供の不信感をつのらせることになります。子供自身が、これはちょっと不得手だなと思っていることに、「すごいねー、できてるよ」と安易に声かけをしても、調子にのるというよりは、逆に声をかけた大人に対して、「いいかげんな人だ」といった不信感を持つというわけです。

・人は誰でも、日々の生活の中で、外側から見ることのできない人の心の中の状態を、あれこれと推測しています。そして、いろいろな経験をもとに、心がどのような状態にあるときに、人はどのような行動をするのかといった推測を重ねながら、ある規則性を理解していきます。

・「Aは、Bが○○と考えている、と思っている」ことを理解することは、9歳、10歳ごろからできるようになることがわかりました。この時期、こうした二次的信念が難しいと、日常生活における友達関係などで、しょっちゅうトラブルを起こしがちになることが予想されます。

・名探偵ホームズや怪盗ルパンのような、推理小説を楽しむためには、こうした二次的信念が必要になってきます。「ルパンは、××というトリックで、警察に○○と信じさせているが、これを△△警部は見破っている」といったような理解です。これができないと、わけのわからないややこしい話になってしまうからです。

・考える力の発達は、10歳前後に転換期を迎えます。7歳から11歳までは、「具体的操作期」という段階にありますが、11歳以降は「形式的操作期」の段階に移行します。

・具体的操作期というのは、見たり、聞いたり、経験したことやものについて考えるときに、具体物を用いて、あれやこれやとシンプルに考える時期です。ですから7~11歳ぐらいまでのこの時期には、身の回りの事物をよく観察させて、いろいろな発見や体験の機会を増やしてあげることが大切です。

・具体的操作期においては、現実に目の前にある具体物や経験したことでしか考えられなかったのが、形式的操作期の段階になると、現実と食い違うような仮想的な、仮説といった認識を持つことができるようになるわけです。

・女の子同士の友達関係は、男の子のように、スポーツなどの活動を共に楽しんだりするよりも、むしろおしゃべりに花が咲く場合が多いものです。しかし、まだまだお互いに未熟で解決する力がないのにもかかわらず、自分の問題だけでなく、友達の問題も抱えてしまい、不安を高めてしまうことになるわけです。

・何かの小説で読んだのですが、女同士の親友の話で、「いつしか親友が、私の心のごみ箱にみえてきた」という表現がありました。今となっては忘れてしまいたい自分の過去を、友達はずっとキープしているというのです。

・人を助ける援助行動や、ものを分けてあげる分配行動は、モデルとなる身近な人の行動を摸倣することにより獲得されると考えられています。

・せっかちな親は、もうこれくらいできてもいいだろうと、早め早めに背中を押しがちです。他方、過保護や甘やかしがちな親であれば、まだまだこれくらいでいいよ、と子供の背中を後ろに引っ張りがちです。

・仲間関係が築けていても、非行のように道徳的に逸脱している人もいますし、道徳的に高いレベルの考えができても、人とかかわらず孤立している者もいます。

・「やさしく話しなさい」という言葉かけは、簡単な言葉のようで、実は抽象度が高く、いったいどのような話し方をすれば、友達や親、先生が「やさしい」と評価してくれるのかがわかりません。「お友達が泣いていたら、だいじょうぶ? って聞いてごらん」といったように、具体的に何をすればよいのかについて、教えてあげることが必要なのです。同様に、「仲良くしなさい」「落ち着きなさい」「頑張りなさい」といった、日ごろ大人がよく口にする言葉がけも同じです。すべて抽象的で漠然としているので、具体的な行動をその子がわかるようにかみくだいて伝えることが肝要です。

・大人は、子供の問題をよく性格のせいにしがちです。「乱暴な性格ね」「内気な性格ね」と。しかし、悪い性格のせいにされて、子供は変化しようと思うでしょうか。いいえ、ますますその枠組みにはまるような行動に追い込みがちです。

・「未熟なだけ」「練習すればうまくなる」という発想に切りかえる。つまり、「気がかりな」点を性格のせいにせず、まだソーシャルスキルが未熟、あるいは知らない、下手だと考えるのです。

・実際には、やってみて初めて気付くことが実に多いことがわかります。それだけ、頭で予想することには限界があるのです。しょせん頭の中は、自分だけで考えている世界です。頭だけで実際に他人の世界までを想像することは、不可能に近いほど難しいものなのです。

・楽しいことがあるとケラケラ笑い、嫌なことがあるとワーンと泣くことができる年齢は、ある意味では、幸せです。それが成長とともにいつしか、笑いたくても抑え込んだり、嫌なことがあっても愛想笑いをしてしまうような心の世界を意識するようになります。



子どもの「10歳の壁」とは何か? 乗りこえるための発達心理学 (光文社新書)

子どもの「10歳の壁」とは何か? 乗りこえるための発達心理学 (光文社新書)

  • 作者: 渡辺弥生
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2011/04/15
  • メディア: 新書



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