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『環境危機をあおってはいけない』 [☆☆]

・人々をおびえさせて、実在しない問題の解決にリソースと関心が向けられる一方で、本当の重要な問題が無視されることになりがちだ。

・環境論争では、すごく短期のトレンドをもとにして、一般論が展開されるのをよく見かける。

・処女林がほしいか、農地がほしいかは、食糧と手つかずの自然とどっちがいいかという人間の嗜好に依存する。

・生態学者たちは、崩壊が起きることは確信しているのに、どうも「誰も」その崩壊がどんなものかを知らないらしい。

・1997年にみんながインドネシアの森林火災に注目したのは、それが都市住民に迷惑を及ぼした初めての年だったからにすぎない。

・1997年12月の京都議定書に含まれた二酸化炭素排出制限に対するすさまじい支持の背景にあったのは、みんなが思っているような地球温暖化の可能性についての見通しではなく、実は制度化された利害だった、ということだ。

・メディアの役割は、もっぱら出来事を報道することで、将来の出来事の可能性を描いたり、あるいは出来事を位置づけたりする役割はずっと小さい。

・別にみんながウサギみたいにうじゃうじゃ子供を産むようになったんじゃありません。単に、ハエみたいにぼこぼこ死ななくなっただけです。

・時の始まり以来、地上に暮らした人が累計で何人いるかを逆算してやることができるのだ。結果は、500億人から1000億人の間だ。つまり今日生きている61億人は、これまで地上に生まれた総人数の6%から12%くらいを占めるってことだ。

・ぼくたちの寿命が100年前にくらべてかなり延びた主な理由は、みんなが長生きするようになったわけじゃなくて、早死にする人がほとんどいなくなったからだ。

・GDPは、一般には値そのものをどうこうするのではなく、他のGDP(以前、あるいは他の国の)と比較するために使われる。

・持続可能な開発というのは、単に人類が「将来の世代が自分たちのニーズを満たす能力を犠牲にしないで、現在の世代が自分のニーズを満たす」ようにする、ということだ。

・海洋はみんなのものなので、誰も責任を持たない。だから個々の漁師としては、とにかく獲れるだけ獲っちまえ、他のみんなのことなんか知るか、ということになる。結果としてみんなが獲りすぎることになる。

・社会は、別に石油そのものに依存してるわけじゃない。この石油が供給するエネルギーに依存しているだけだ。

・石器時代が終わったのは、別に石がなくなったからではない。同じように、石油時代も終わるだろうが、それは石油がなくなるせいではない。

・ウラン235が1グラムで得られるエネルギーは、石炭ほぼ3トンに近い。

・高速増殖炉は、ウランの99%を占める、はるかに豊富なウラン238を使える。ウラン238そのものはエネルギー生産に使えないけれど、それをウラン235といっしょに反応炉の炉心に入れておこうというわけ。ウラン235の方は普通の原子炉と同じようにエネルギーを作り、その放射能がウラン238をプルトニウム239に変えて、これが原子炉の新しい燃料として使える。

・農業用水が安かったり無料だったりするのは、実質的に莫大な補助金が裏で出ているのと同じことだ。

・水なんかのために戦争する必要がありますか? 戦闘をたったの一週間実施する費用で、海水淡水化工場が五つは建てられる。

・喘息が著しく増大しているかどうかはまだ明らかではないにしても、認知された喘息が大幅に増えているせいで、公共医療予算の負担がどんどん増えている。

・衛生仮説は、ぼくたちが抗生物質やワクチン注射によって伝染病を撲滅したおかげで、免疫系は何もすることがなくなって、バクテリアやウィルスと戦う練習もできなくなったという話。このせいで免疫系は、特に害のない微生物や物質に出くわしただけで半狂乱になるわけだ。

・大衆は動物たちを救いたいと願っている──カワウソ一匹あたり八万ドル、ワシ一羽につき一万ドルかけて──救出によるストレスが、当の動物を殺してしまっても。

・懸念することは正しいことではあるけれど、何が大事かの優先感覚だって忘れちゃいけない。

・喘息の件数は増加したけれど、これはもっぱらぼくたちが実に上手に家を密閉し、室内で過ごす時間がはるかに長くなったからだ。喘息の件数増加は大気汚染とはなんの関係もない。

・雲は太陽光線をはねかえすことで地球を冷やしておく役に立つし、同時に熱を中にため込むことで地球の温暖化にも貢献する。差し引きで、低層の雲は地球を冷やすように作用する。だから低層の雲が増えると気温低下をもたらす。

・エルニーニョが起こる年にはアメリカのハリケーン被害も最少になる。エルニーニョが起こった年に大被害をもたらすハリケーンが2回以上になる確率は、いつもは48%なのに28%に下がる。実は一番危険が大きいのはラニーニャの年で、被害の大きいハリケーンが2回以上になる確率は63%に増える。

・京都議定書は、非効率なことに温度じゃなくて排出量に焦点を合わせている。実際に被害をもたらすのは温度のほうだ。

・WAIS(南極西部氷床)は何世紀にもわたって後退はしているけれど、これは完新世初期に始まったプロセスで、最後の氷河期からの調整が続いているだけで、地球温暖化とは何の関係もない。

・温暖化が3度以上になって、それが1000年続いたら、グリーンランド氷床は完全に融けて、結果として海面は7メートル上昇すると警告していた。でも問題は、千年紀まるごと通じてずっと温暖化が続くなんてことを予測しているモデルなんてあるのか、ということだ。

・テレビの登場人物たちを自分の生活の判断基準にしてしまい、それをもとに自分の価値観やアイデンティティを形成しているのだ。

・豊作だと、価格が下がって農民が苦しむ、という話を聞かされる。でも不作だと、値段が上がって消費者が苦しむ、という話になる。

・心理的に、ぼくたちは大きなリスクを過小評価して、小さなリスクを過大評価するクセがある。

・人は自由意志でやる限り、1000倍も高いリスクですら平気で受け入れることが多い。

・コスト評価と救われた寿命年齢を計算して、数字を比較できるようにした。

・通学用スクールバスすべてにシートベルトを装備すると、5300万ドルほどかかるけれど、でもこれは年に子供1人以下しか救えないので、コストは一寿命年あたり280万ドルだ。1次リン処理工場での放射性物質排出を規制すると280万ドルかかるけれど、でも最大でも10年に1人救うかどうかだ。だから寿命年あたりの推定コストは920万ドルとなる。

・どうでもいい問題に慌ててバカ高いコストをつっこんだりして、リソースを無駄にするような真似はよそう。



環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態

環境危機をあおってはいけない 地球環境のホントの実態

  • 作者: ビョルン・ロンボルグ
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2003/06/27
  • メディア: 単行本



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