SSブログ

『機械との競争』 [☆☆]

・最も重要な生産要素としての人間の役割は減っていく運命にある。ちょうど農業において、トラクターの導入によって馬の役割が最初は減り、次いで完全に排除されたように。

・未来のいつかの時点で、「平均的な」人間の大多数が従事している仕事を機械がこなせるようになるだろう。そしてこの人たちは、新たな職を見つけることはできまい。

・インターネット通販の浸透に伴い、アメリカ人はセールスマンや店員がいないところでモノを買うことにすっかり違和感がなくなっている。2007年~2009年の大不況では営業・販売職のアメリカ人12人に1人近くが失業し、だいぶ前に始まった傾向に拍車をかける結果となっている。

・人間がしかるべき比較優位を維持できるものは何だろうか。いまのところ人間がまさっているのは、じつは肉体労働の分野である。人型ロボットはまだひどく原始的で、こまかい運動機能はお粗末だし、階段を転げ落ちたりする。

・人間は非線形処理のできる最も安価な汎用コンピュータ・システムである。しかも重量は70キロ程度しかなく、未熟練の状態から量産することができる。

・経済というシステムでは価値の創造が雇用の創出に直結することが前提になっているが、大不況は、この前提が危うくなっていることを露呈した。いま起きているのは単なる景気循環ではなく、根本的な構造変化なのである。

・現在の状況を急発展するデジタル技術と変化ののろい人間のミスマッチと認識すれば、標準的な経済の原則を適用して理解することができる。

・すでに豊かな人がより豊かになるかどうかではなく、あまりに貧しい人にどれだけ十分に与えられるかどうかによって、われわれの進歩は測られる。

・スキルと賃金の関係が、最近になってU字曲線描き始めたという。つまり、ここ10年間、需要が最も落ち込んでいるのは、スキル分布の中間層なのである。最もスキルの高い労働者が高い報酬を得る一方で、意外なことに、最もスキルの低い労働者は、中間的なスキルの労働者ほど需要減に悩まされていない。この動向には、労働需要の二極化現象が反映されている。

・大方の人は知らないと思うが、現在世界最強のチェス・プレイヤーは、じつはコンピュータではないのである。人間でもない。では誰なのか――コンピュータを使った人間のチームである。

・いつもコンピュータが勝つようになって、人間対コンピュータの直接対決が面白くなくなったため、試合は「フリースタイル」が認められることになり、人間とコンピュータがどういう組み合わせで戦ってもよいことになった。

・十分に活用されていない機械を見つけて利用すること、もっとうまく活用できる人材やスキルを発掘して活かすこと、供給が途絶えたときに使える余剰在庫の存在を知っておくことなどは、すぐれた新技術に関する知識と同じぐらい、社会にとって役立つものである。

・アメリカの教育制度は教育費がべらぼうに高い割に成果が乏しいという、効率の悪い部門特有の症状を呈している。

・教室に並んで腰掛けた生徒を相手に先生が授業をするという基本的な指導法は、何世紀もほとんど変わっていないのである。昔からのジョークにもある通り、これでは教師の講義ノートから生徒のノートに情報を移すだけで、どちらの脳みそも通過しない。

・義務教育では、カーン・アカデミーが2600以上の短い教育ビデオと144種類の自己採点テストをウェブ上で、それも無料で公開している。

・大学を出たら毎日上司にやることを指示されるような従来型の仕事に就こうなどと考えていると、いつの間にか機械との競争に巻き込まれていることに気づくだろう。上司のことこまかな指示に忠実に従うことにかけては、機械の方がはるかに得意であることを、ゆめ忘れてはいけない。

・許認可手続きの大半は、既存企業の既得権確保の思惑から定められており、新規参入ひいては雇用の拡大が妨げられている。

・情報は、消費されてもすり減ることはない。エリックは、読み終わった本をアンディに貸してあげることができる。このとき、本の中身はすこしも減っていない。いやそれどころか、エリックが読み終わった本はアンディにとってもっと貴重だと考えられる。なぜなら二人はその本に書かれていることを共有し、それをもとにして新しいアイデアを共同で生み出せるかもしれないからだ。

・インターネットは、人類の歴史が始まって以来最大規模の情報の貯蔵庫である。このようなものはかつて存在したことがない。しかもインターネットは、情報をしまっておくだけでなく、高速・高効率・ローコストで全世界に流通させるネットワークでもある。

・悲しいかな地球上の数十億の人々にとって、声の届く範囲か体が移動できる範囲でしか意思の疎通ができないというのが、現実の世界だった――携帯電話が出現するまでは。



機械との競争

機械との競争

  • 作者: エリク・ブリニョルフソン
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2013/02/07
  • メディア: 単行本



nice!(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

トラックバック 0