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『学歴の耐えられない軽さ』 [☆☆]

・今の日本は、名ばかり大学生が大量排出されている。名ばかり大学生を今でも日本の企業は笑顔で迎えている。この構図が、企業、学生、ひいては教育界や学生の親御さんをも、すべてダメにしているのだ。

・欧米の大学は、入るのはやさしいが卒業は難しいために、日本のように学力不足のまま卒業できるケースは少ない。日本のAOや推薦とは別物なのだ。

・大学はブランドアップのために、見せかけの偏差値アップを行い、それは、数学のできない上位校生、社会科1教科さえ勉強していない中位校生を大量増産していくことになる。結果、暗算のできない社会人や地図も読めない社会人は、こうして一般入試組からも輩出されていく。

・早稲田なら、英語・国語・世界史で合格できる。高校3年間、ひたすらこの3科目のみを勉強させ、早稲田合格者実績を上げている高校があったとしたら、それこそ、暗算もできない、地図も読めない社会人を大量生産していることになる。

・いわゆる上位大学卒業生が大半を占める大手マスコミは、今回の未履修問題の矢面に立った高校出身者も非常に多かったことがあるのではないか。自分にまで未履修問題の累が及ぶから、追及の矛先を変えた――まさか、そんなことは、あってほしくはないのだが。

・旧来型の学歴者は、やはり「企業においては」優秀だからだ。勘違いしないでほしい。人間として優秀と言ってはいない。あくまでも「企業社会において」優秀なのだ。逆に言えば、企業内には「真の意味で優秀」な人などさほど必要なく、それよりも「学歴的に」優秀なくらいで十分なのだ。

・多くの社会学者や労働関連のコメンテーターが忘れていることだが、大卒フリーター問題も、そもそもは大学生の急増が一番だと、早い段階に気づくべきだった。このことを忘れて、「若者はやる気がない」「最近の男子は……」と言うのはお門違いだろう。

・企業は大学ブランドで学生を選び、学生は人気ランキングで企業を選ぶ、化かし合いか泥仕合とも言えるこの駆け引きが、本当に幸せを生んでいるのかどうか。

・大学生の人気企業ランキングから感じたのは、学生は、従業員としてその企業で働きたいかという視点にも増して、イメージとか親しみやすさといった、つまり顧客としての視点が強い。

・「就社ではなく、就職を!」運動にご熱心なのは、往々にして大学の先生、就職課の職員、行政関連の人、マスコミなど。

・「偏差値教育批判」「個性ある大学経営を」「就職ありきでない大学進学」、偏差値の意味さえわからない人たちが、ヒューマニスティックに洗練された主張をした結果、欠陥の多い試験制度としての「推薦、一芸、AO、帰国子女、留学生」入学が浸透していく。





学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識

学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識

  • 作者: 海老原 嗣生
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2009/12/18
  • メディア: 単行本



タグ:海老原嗣生
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