SSブログ

『ウェブ社会のゆくえ』 [☆☆]

・「現実の空間」と「メディアの情報」を比べた場合に、現にその場にいる人よりも、メディアの情報に触れている人の方が、その場で起きていることに詳しいというケースはいくらでも思いつく。

・もはや連絡を「取り合う」のではなく、「絶やさずにいる」ことが目的となっている。スクリーンを介してすべての人と一心同体になって、すべての瞬間を共有しながら、同じことを感じ、考え、行おうというのだ。

・「寂しいから」ではなく「一人だと思われるのが怖い」。

・ケータイメールの活発な利用者は、そうでない者に比べて孤独に対する耐性が低い傾向が見られるという。

・ソーシャルメディアといったデジタルな情報が人間関係の基盤となっている現在では、友人関係とは、気の合う間柄で徐々にはぐくむものではなく、知り合ったときに最初に連絡先を交換して、その中からより深い付き合いに移行できる相手を探していく過程で見出されるものになっている。いわば「足し算の関係」ではなく「引き算の関係」になっているのだ。

・困ったことに、普通ソーシャルメディアには一人でアクセスする。じっくりとソーシャルメディアを見る時間があるときというのは、いわば自分以外の人が、自分とは無関係に盛りあがっているのを嫌でも目にせざるをえない時間でもあるのだ。その意味でソーシャルメディアは個人の孤立感を強く煽る設計になっていると言える。

・この「悩みから決意表明へと自己完結するつぶやき」じたい、ソーシャルメディアだけでなく、ポップミュージックの歌詞やケータイ小説などでも見られる定型の展開なのだ。

・「他者の反応を先回りして予期することで立ちすくんでしまう」という場面は、自分のファッションであるとか、あるいは友人との関係の中でまま起きうるはずだ。

・ソーシャルメディア上で「他人からどう見られているか不安」という場合には、「見られたくないところまで見られているのでないか不安」ということではなく、「見て欲しいように見てもらっているかどうか不安」という心理状態が生じるのだと考えられる。

・コミュニケーションが成立したと判断することができれば、たとえ相手がプログラムやロボットであったとしても、生き物を相手にしているのとまったく変わらないやりとりが可能になる。

・テレビのニュースも終わっていた深夜0時過ぎで、マスメディアの報道も追いつかないこの時間帯、ネットでの生中継はいわば「独占」状態だった。

・多くの視聴者が求めていたのは、容疑者逮捕の映像を見ることではなく、他の視聴者とともに、逮捕の瞬間に「居合わせる」ことだったと考えられる。つまり、映像の内容よりも、映像をみんなで見るということそのものが、視聴の目的だったのである。

・何かの目的を持った行為ではなく、それじたいが目的であるような行為が社会の主流になっていく動きのことを、社会学では「コンサマトリー化」と呼ぶ。

・日本における専業主婦の割合が一気に増えたのが1970年代であることを指摘している。この時期に専業主婦になった団塊の世代は、子供だった1950年代にアメリカのホームドラマやマンガで専業主婦のいる家庭を見て育った世代でもある。彼らの親の世代では専業主婦は「普通」ではなかったにもかかわらず、メディアによって与えられたイメージによって、その後の家族の「普通」が変化していった。

・「撮られた人が不快に思うかもしれない」という理由で公共空間での撮影やソーシャルメディアへのアクセスを禁止することは、報道記者の取材活動を規制している独裁国家と変わらない不自由な社会になってしまうことを意味するのである。

・報じられるところによると、2013年3月に発表された公示地価では、住宅地の上昇率全国上位10位のうち8地点を宮城県石巻市、岩手県大槌町、福島県いわき市が占めたという。津波の被害が相対的に小さかったことで、かえって注目が集まったというのがその理由のようだ。

・観光地は観光させる側が自らの「売り」を呈示し、アピールするだけでは成立しない。その情報を消費し、そこに訪れようとする側の動機がなければ、観光地という情報空間は生まれないのだ。

・そもそも、いわゆる宗教的な巡礼じたいが、訪問に先行して教典などの情報によって形成された物語やイメージを追体験するという振る舞いだった。

・記憶というものは個人の身体のどこかに蓄積されるものではなく、個人の外側の要素との関わりの中でそのつど生み出されるものである。たとえば私たちは自分の幼少期について、親や祖父母の思い出話を通じて「知っている」気になっている。だがそれは自分の中にある出来事の記録というよりは、人から聞かされ、いつの間にか自分でもそう思うようになった、自分についての解釈の一面なのである。





ウェブ社会のゆくえ―<多孔化>した現実のなかで (NHKブックス No.1207)

ウェブ社会のゆくえ―<多孔化>した現実のなかで (NHKブックス No.1207)

  • 作者: 鈴木 謙介
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2013/08/27
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



タグ:鈴木謙介
nice!(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

トラックバック 0