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『さもしい人間 正義をさがす哲学』 [☆☆]

・豊かな生活をしていながら、他の人をさしおいて貪欲に自分の利益を追求することが「さもしい」。

・私たちは既に豊かな生活を享受しているにもかかわらず、さらに「さもしく」人を犠牲にして安いものを追い求めている。

・海外産の食材を食べているのは、人間だけではない。日本のペット様たちが食べる、ドッグフードやキャットフードの材料も海外に依存している。

・コーヒーの出発点にある児童労働という悪もこの複雑な経路をたどることで、道徳的に浄化されていくわけである。私たちは道徳的に無害な商品としてコーヒーを購入することができる。これを「道徳的ロンダリング」と呼んでみたい。

・「等しいものは等しく扱え」という原則と、「差別するなら理由を示せ」という原則の二つが代表的な「正しさ」の基準だ。

・「さもしい」とは倫理的に言うと不正な人間関係を意味している。不正だと言う理由は、自分の「分」を超えて何かを得ようとするからである。

・一人一人が「分」を超えて欲望を追求すると、すごく不平等な人間関係ができあがってしまう。

・無害な私益追求も累積すると、ある種の公共悪を創り出してしまう。その典型が貧困だ。

・共同体での他者援助も、援助者と被援助者が固定されると、どんなに善意に満ちた援助であっても支配が発生したり、被援助者の自尊心を壊したりすることが起こるのだ。

・希少資源はハイテク産業の必需品だ。その一部産出地は紛争地帯にある。紛争地帯の混乱によってかなり安い価格で入手が可能なものもある。紛争が終わり、レアメタルの適正な市場ができあがると、価格が上昇する。価格上昇を抑えたいならば、産出地が混乱している方が望ましい。

・マスメディアで大々的に報道されている惨禍には、多くの人が賛同し寄付をする。しかし、ほとんど報道されない参加には寄付はあまり集まらない。

・「正義の反対は悪ではない。正義の反対は別の正義だ」という名言がある。

・特権たたきの私憤は制度破壊には力をもつとしても、制度形成にはたしてつながるのだろうか。

・お説教は政治家の仕事ではない。上から目線で道徳を語るヒマがあったら、制度構築のために政治学、政治哲学、公共政策学などを学ぶべきだ。





さもしい人間―正義をさがす哲学 (新潮新書)

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  • 作者: 伊藤 恭彦
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/07
  • メディア: 単行本



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  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2012/07/14
  • メディア: Kindle版



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