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『人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか』 [☆☆]

・人間には、八つの基本情動があるとされる。ポジティブな情動には、喜び、共感、期待の三つが、ネガティブな情動には、悲しみ、怒り、嫌悪、恐怖、驚きの五つが含まれる。

・ネガティブな情動のほうが分化、つまり発達しているのは、危険を回避し生き抜くうえで不可欠な役割を果たしているからだと考えられている。

・「人の性は悪、その善なるは偽なり」の有名な一節で知られる中国の思想家荀子は、人間性の本質を悪とみなした。

・人の本性が善であるなら、なぜ礼や義が必要なのか。善なる性質は強い意志と努力の積み重ねによって初めて身に付けられる。

・愛などもはや期待しない。一切逆らわずに言いなりになるならよし、さもなければ破壊し尽すのみ。

・イライラすると感情的な言葉を使い、気分が顔や態度に出てしまう人は要注意だ。拒絶反応は着実に累積していくので、その人が弱ったとき、四面楚歌の攻撃を受け、排除されることになる。

・常識やルールの違いは、親密になるほど明らかになるものだが、妥協が難しいことも多い。相容れない常識やルールの人と繰り返し接するうちに、自分の大切にしている信条やアイデンティティが脅かされるような不快さや苦痛が募ってくるものだ。

・まず関心を共有し、話題を合わせるという姿勢が、仲間として認められるうえで必須の条件となる。

・相手の話題を無視して話を変えたり、相手の話していることをすぐ否定してしまう癖のある人は要注意だ。悪意がなくとも、話を共有できない人と思われ、いつしか異物とみなされてしまうだろう。

・「安全基地」になれない典型的なタイプは、ただ話を聞いて共感するということができない人である。すぐにああしろ、こうしろとよけいなアドバイスや指導をしてしまう。相手はそんなことは求めておらず、ただ話をきいて、気持ちを共有してほしいだけだということがわからない。

・なぜ多くの人が、お金を払ってまでカウンセリングを受けに来るのか。それは気持ちを共有してもらえるからだ。多くの現代人にとって、心が通じ合う体験は、普段の生活の中でたやすくは得られなくなっている。

・世話が一番大変なゼロ歳の頃よりも三、四歳の頃に虐待が増えるのは、自分の意思や個性を持ち始めた現実の子供が、母親が理想化し自己と同一視した存在ではなくなり始めるからである。

・乳製品にしろ魚介類にしろ、貧しい時代には、たまにしか食卓に上がることはなかった。時代が変わり、毎日のように食べるようになると、感作が起きやすくなる。イクラのアレルギーが子供に増えているのは、回転寿司などで小さな頃から食べる機会が増えたことによると考えられている。

・花粉症の人がリンゴなどの果物や大豆に対するアレルギーを発症するケースが近年増えている。その原因は、花粉と化学構造が似ている物質が果物や大豆に含まれているため、似た物質をアレルゲンと「誤認」してしまうことによる。

・自閉症スペクトラムの人にとって、周りの人間は、テレパシーで会話する超能力者のようなものだ。自分は明確な言葉で語られたことしか理解できないのに、周囲の人たちは一瞬の目配せや言葉の微妙な抑揚、かすかな素振りで合図を交わしあう。

・三歳になっても一言もしゃべらなかったが、四歳のときには読み書きを始めていた。会話言語の遅れと文字言語のスムーズな習得というギャップは、アスペルガー・タイプの発達にしばしばみられる特徴である。

・母親とそれ以外の存在とのかかわりを観察する中で、両者を区別する決定的な要素は応答性の違いだということを突き止める。母親は絶えずわが子の泣き声や表情に気を配っていて、少しでもわが子に異変を感じれば、抱っこしたり、あやしたりしていた。他の大人たちは、普通の基準では親切で優しい存在だとしても、四六時中その子の様子に目を光らせ、何か異変があるとすぐ手を差し伸べ、求めにこたえてやることまでは期待できなかった。

・優等生を演じることも、見ず知らずの男に体を預けることも、一見正反対のようでいて、相手の気持ちや都合に合わせて偽りの自分を演じることによって認めてもらうという点では、同じなのであった。

・他人を見極め、心を開いたり用心したりする経験を、幼いうちから積むことが、社会生活を営むためには必要なのである。過保護で支配的な養育は、その機会を奪ってしまう。

・近年アレルギーが増えている要因の一つとして、清潔すぎる環境が指摘されている。幼い頃から清潔すぎる環境で暮らすと、不必要な免疫を抑える仕組みが発達せず、アレルギーが起きやすくなるというのである。

・なかなかヒット作にも恵まれず、経済的にも苦しかった。それでも、モームにとっては、人間社会の中で働くよりも、孤独に原稿用紙に向かうほうが楽だったのである。

・消化機能が十分な発達を遂げる四歳頃には、食物アレルギーが収まっていくことが多い。厳密に言えば、アレルギーは残っているが、アレルゲンとして認識された物質は腸までたどり着く前に分解され抗原性を失うので、何も起こらなくなるのだ。

・事実と推測を分離したうえで、推測の部分については、「しょせん、推測だ。事実かどうかわからない。悪く考えて、悩むのはやめておこう」と、繰り返し自分に言い聞かせることだ。

・「煙草や酒と同じく、交際もまた一つの「習慣」であると思う。その習慣がつかない中は、忌まわしく煩わしいものであるが、一旦既に習慣がついた以上は、それなしに生活できないほど、日常的必要なものになってしまう。

・煙草が必要でないように、交際もまた人生の必要ごとではない。だが多くの人々にとって、煙草が習慣的必要品であるように、交際もまた習慣的な必要事なのである。





人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか

人間アレルギー なぜ「あの人」を嫌いになるのか

  • 作者: 岡田 尊司
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2015/06/18
  • メディア: 単行本



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