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『牛丼一杯の儲けは9円 「利益」と「仕入れ」の仁義なき経済学』 [☆☆]

・仕入れ先から「販促協賛金」というものをもらいます。この業界では常識なのですが、「買ってくれた人にお金をあげる」という不思議なことです。しかも、その額は赤字の量販店を黒字にさせてしまうほどのものなのです。

・家電量販店を営む企業の決算書を見ると、営業利益(本業の儲けを示す指標)は赤字かあるいは相当低いにもかかわらず、経常利益(営業外収益を含む企業の採算性を示す指標)は黒字に転換しています。これは、「販促協賛金」が効いているわけです。

・経理部門や仕入れ部門に配属されると、まず覚えなければいけないのは金額の「,(カンマ)」の読み方です。大学で高尚な経済学や経営学を学んだ学生も、「\10,000,000-」という表記からとっさに「1000万円」と読める人はほとんどいません。「,(カンマ)」の位置によって金額を瞬時に読み取る訓練をするわけです。

・日本の自動車メーカーがせめて救われているところは、この国では客と営業担当者のつながりが非常に深く、人間関係が一度できてしまうとなかなかそのメーカーから客が離れていかないことでしょう。客がみな、パソコンとにらめっこして、インターネット上の価格だけで車を決定しようとすれば、利益がもっと減っていくことは必須です。

・多くの水道局では、各家庭に2か月に一度だけ検針を実施し、2か月分をまとめて請求していますよね。これは、検針員の人件費や交通費等を考えると、一家庭あたり100円以上の費用がかかってしまうため、といわれています。

・「仕入れ先との対等な取引」を宣伝しているような有名企業の仕入れ担当者が、ガムを噛みながら仕入れ先を脅していた商談場面を見たことがあります。だから、そんなことをあえて言う企業は、逆に怪しい。

・客から価値を認めてもらえない「こだわり」などは、儲けにほとんど影響を与えることはないのです。

・買うなら少しでも安く買った方がよいですし、少しでもよいものを買った方がよいのは当たり前のこと。でも、もっとよいのは、そもそも買う必要がないものに金を払わないということです。

・持ち家は固定資産税に補修費、経年劣化などがあり、かつ自由に移り住むこともできなくなり、かつこれまた払い終わったときは土地分の価値しか残されていません。しかも、そのときの地価によっては、元手すら取り返せないこともあります。

・週末ドライバーは毎回レンタカーを使用した方が、購入するよりもずっとトクです。

・「公平・公正な取引を進める」とは、むしろ「仕入れ先は隙あらばこちらを騙してくる可能性がある」と性悪説的にとらえ、相手をしっかりチェックすることによって、不公平
・不正な取引ができないようにすることなのです。

・優秀な営業担当者は、人が何かを買うときには、理屈ではなく感情でほとんど決めてしまうことを知っています。それゆえに、まずは商品を売り込んでいるようにみせかけて、自分たちを売り込むわけです。

・売り買いは知的ゲームです。失敗するも成功するも、ゲームをどれだけ把握しているかにかかっています。商品を知らないのは、ルールすら知らないようなものなのです。

・売り手は多数の客先に行き、市場価格を把握していますが、買い手は特定の売り手としか付き合わないため、市場価格を把握していないのが普通です。持っている情報量の多さと、価格決定の強さは比例しますから、どうしても価格は売り手よりの不均衡な状態になってしまいます。

・日本独自の商習慣ゆえでしょうか、今でも、言いにくいものは最後まで曖昧にしておくという態度も蔓延したままです。

・本気で地球のエネルギー消費を抑えたいのであれば、個人生活の小さな積み重ねよりも、企業の活動自体を縮小せねばならないということが明らかになってきました。

・現在はインターネットが世の中の価値を教えてくれる時代になりました。家電製品であれば、価格比較サイトで最安値の量販店を探すのが常識になっています。工業製品でも、海の向こうの仕入れ先の価格を一瞬で調査することが可能です。

・こちらが、既存の仕入れ先よりも安い商品を提供しているところを知るだけで、有利な立場を確保できるのは間違いありません。

・世の中には、ささいな仕事でも請け負いたい人がたくさんいます。ある国では、見向きもされない仕事であっても国が異なれば飛びつかれることがあるのです。

・作り手のこだわりは問題を引き起こしがちです。例えば、過剰性能。作り手は、客の求めているものよりもだいぶ性能の高い商品を作ってしまいがちです。

・性能のよい、味のよい、質のよいものを作ろうと思っても、果てはありません。どの程度で壊れる商品にするか、どの程度の種類にするか、どの程度の質にするかは、「客がわかるかどうか」で決めるべきなのです。

・飲食店でオーナーが店に出て働いておらず、管理だけを行なっている場合は、まず閉店後に調べるのは売れた個数に比して材料を余計に使っていないかということだといいます。一食1グラムでも余計に使っていれば、一日が終わる頃には相当な差異を生じさせるので、そこは徹底的に厳しくするのです。

・集団への忠誠を誓いすぎた社員たちばかりになると、とんでもない非社会的な行為に走ることもあります。公然と偽装が行なわれたり、隠蔽体質ができあがったり。

・一番万引きする人って誰だと思う? バイトの店員だ。最も危ないのは身内だよ。

・小売業は利益が1~2%程度であることは珍しくない。そんな低利益の商売で、何か一個を万引きされたとしましょう。そうすると、単純計算で50~100個ほどの売上げ分利益が吹っ飛ぶことになります。

・文房具やコピー用紙は、自分で買うものではなく、「会社から持ってくるもの」という意識の人もたくさんいます。微々たるものであっても、これは社員万引きの一例です。

・企業は、仕入れ対策として発注企業を決定するまでのプロセスに、多人数を投入しはじめました。一人の思いだけで決定せずに、全体の決定とすることで、不正を防止しようと努めています。どんなに倫理観のある人でも、目の前に100万円ぶら下げられたら、心が動いてしまうかもしれません。そのような、魔が差す状況を回避するためには、やはり群の知恵が必要になってくるというわけです。

・人間は「愉しいと思えること」か「やらされていること」「食うためにやっていること」しか長く続きません。しかし、そのくせ、何かをやり始める決定をしたときには、その決意がずっと続くと思っています。

・文化や政治ではなく、一つの商品で私たちの生活は変わっていく。

・従業員の雇用をひたすら守る企業も、株主のために超効率化を目指すスマートな企業もあってよいと思っています。「どちらが優れているか」でもなく、「どちらがよいか」でもなく、どちらに共感するかという好みの問題だからです。



牛丼一杯の儲けは9円―「利益」と「仕入れ」の仁義なき経済学 (幻冬舎新書)

牛丼一杯の儲けは9円―「利益」と「仕入れ」の仁義なき経済学 (幻冬舎新書)

  • 作者: 坂口 孝則
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2008/01
  • メディア: 新書



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