SSブログ

『科学の栞 世界とつながる本棚』 [☆☆]

・いままで少しばかり社会のしがらみにとらわれていたあなたが、本来の宇宙に調律される、それが科学の本を読むということなのだと思います。

・科学の本は絶版になりやすい宿命にあります。速報性、同時代性が高いとみなされがちであることや、単行本が文庫になりにくい(別の判型で再版されにくい)ことなど、理由はいくつか考えられます。

・毎日をほんの少しだけ豊かにできる方法がひとつある。それは何かに興味を持ち、「おもしろい!」と感じる心を忘れずに持ち続けることだ。

・一流のマジシャンは「隠しながら表現する」ことに長けている。これは日常のぼくたちの会話と同じだ。

・才能には二種類あると著者は知る。一部の脳機能が特出した際の能力と、脳全体が協調的に動作したときに発揮される能力だ。

・最初の数か月はヒトもチンパンジーもよく似た発育順序を示すが、やがて徐々に特徴的な知能を発揮し始める。大きな違いは物を介して他者との関わり方だ。ヒトの赤ちゃんは指差しの後「ほら、お花」と母親を振り返って楽しさを共有しようとするが、チンパンジーにはできない。

・人間には自分を抑制できる力がある。「これで十分だ」と考える意志を働かせるべきだ。

・私たちが養子を取るとき、そこには選択が働いている。だがその子に「なぜ君を選んだのか」と選択の条件を伝えてはならない。「あなただったから選んだのだ」と全面的に肯定することによって、子供は養父母を受け入れ、一個の主体として成熟する。

・自然科学は実験結果で世界を捉え、人文科学はまず言葉で世界を定義する。だから自然科学は実験結果によって世界の認識を変えてゆくが、人文科学は言葉に世界を当てはめてゆくように思える。

・優れた科学者は、専門分野を、深めるより拡張する。一般人は科学者に謎の解答を求めるが、彼こそが新たな謎を世に示す張本人。

・ひとりの作家はなぜひとつの世界観でしか世界を描けないのだろう。さまざまな世界観が交叉する世界こそを描くことは可能だろうか。

・DNAのメチル化という現象が病気や個性に深く関わっている。一卵性双生児の指紋が微妙に異なるのは、このメチル化のためなのだ。

・体内に鉄分がたまってしまう病気の遺伝子は、なんと3人にひとりの割合で西ヨーロッパ人に受け継がれている。実はこの病気を持つ人は、免疫細胞に鉄を取り込ませないという性質を持っていて、ペスト菌に感染したとき有利になるのだ。ペスト菌は鉄を好むので、この病気の人が持つ免疫細胞には逆にやられてしまうのである。つまりこの病気のおかげで、中世のペスト大流行時代を生き延びることができたのかもしれない。

・いったん危機が回避されると、まるで季節が移り変わるようにたちまちその存在すら忘れてしまう。そうしてパニックと忘却が繰り返される。

・農村では葬儀の際に集まった全員がイコンの同じ位置に繰り返し接吻していた。彼らは自分たちの信じる宗教が病気を媒介しているとは夢にも思わなかったのだ。

・100年前の人なら現代の小説を読んで、そこに書かれた科学技術に目を丸くするだろう。

・未来には願望の未来と宿命の未来がある。

・ペンギンもクジラも水中では秒速2メートルで泳いでいる。

・4つの力のうち重力は電磁力よりもはるかに弱い。その証拠にこすった櫛は紙切れを持ちあげることができて、そのとき重力は打ち消されているだ。

・勉強とロボットの両立で大切なのは、「凝る」ことではなく「簡単なものを確実に仕上げる」こと。

・天文学はもっとも古い科学で、記録された文明の黎明以前から存在している。



科学の栞 世界とつながる本棚 (朝日新書)

科学の栞 世界とつながる本棚 (朝日新書)

  • 作者: 瀬名 秀明
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2011/12/13
  • メディア: 新書



タグ:瀬名秀明
nice!(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

トラックバック 0