SSブログ

『2100年の科学ライフ』 [☆☆]

・問題は、現代のテクノロジーと原始的な祖先の欲求との軋轢があるところでは必ず、原始の欲求が勝利を収めていることだ。

・今の我々も、資料というと必ず、プリントアウトしたコピーを欲しがる。人は、コンピューターの画面に浮かぶ電子的な文字を本能的に疑ってしまうため、不必要な時でも電子メールやレポートを印刷する。だからオフィスのペーパーレス化は完全に実現してはいないのだ。

・我々は見知らぬ人に4秒間見られると落ち着かない気分になるという。およそ10秒経つと、気分を害し、敵意を抱く。最初のテレビ電話が失敗に終わったのはこのためだ。

・誰もが、自分の視野の限界を世界の限界と考える。

・バースデー・カードには、『ハッピー・バースデー』を奏でるチップがよく埋め込まれている。このチップはなんと、1945年の連合国軍全体を超える計算能力を秘めている。

・現在家庭に飾られているすべての絵や写真が、動画になり、インターネットにつながると考えよう。外を歩けば、街頭の絵や写真も動く。動画のコストが静止画と変わらなくなっているからだ。

・将来、学期の試験を受ける学生はコンタクトレンズでこっそりインターネットを調べ、問題の答えを出せるようになり、丸暗記させることの多い教師たちにまぎれもない困難を突きつけるだろう。すると教育者は、代わりに思考力と推理力に重点を置かざるをえなくなる。

・インターネットは当時、核戦争のさなかやあとに科学者や当局の人間が連絡を取るものとして考えられ、GPSは当初、大陸間弾道弾(ICBM)の誘導を意図していた。だがどちらも冷戦の終結とともに機密解除され、公衆の手に渡った。

・かつて、「コンピューター革命は我々の人間性を奪い、人を孤立させる」と嘆いた人もいた。実際には、友人や知人の輪を急激に拡大した。

・電子も容易に動きまわれ、原子に対してゆるく結合している。そして髪をとかしたり、絨毯の上を歩いたり、洗濯をしたりするだけで剥ぎ取られる。静電気で服がまとわりつくのはこのためだ。

・真に問題となるのは、ソフトウェアだ。ソフトウェアの作成は、従来と変わらぬ方法でしかできない。人間──ペンと紙とパソコンの前でじっと椅子に座っている人間──が、先述のような想像を実現するコードを1行1行書かなければならないのだ。

・ロバストとは通常からはずれた状況でも正しく動くことをいう。

・ゴキブリさえ、物体を認識して迂回することを学習できる。我々はまだ、母なる自然のきわめて下等な創造物に、最高の知能を持つロボットでも勝てない段階にいるのである。

・捕食者は獲物よりも高度な意識を持っている。捕食者は、隠れる場所を探したり、待ち伏せを企んだり、忍び寄ったり、獲物が逃げるのを先読みしたりして、あらかじめプランを立てなければならない。ところが獲物は、走らなければならないだけなので、意識の尺度では低めにランクされる。

・欲求の満足を先送りできることは、意識のレベルが高いことも指している。そうした子は、未来をシミュレートし、未来の報酬が今より大きくなるというのを理解することができる。つまり、我々の行為が未来に及ぼす影響を予見できるためには、高いレベルの意識が必要なのである。

・特異点について、「IQ140の人々にとってのインテリジェント・デザインだ。何もかもが想像を絶するほど変わってしまう点へ向かっているとするこの主張は、私の見たところ、基本的に宗教的衝動に駆り立てられたものだ」と言っている。

・未来の超高速コンピュータはサヴァン症候群の人のように、大量の情報を記録できるが、他は無理で、現実世界を自力で生きていくことはできないのである。

・コンピュータが脳の計算速度に匹敵しだしても、何でもさせるには、まだ必要なソフトウェアやプログラムが足りない。脳の計算速度に匹敵するというのは、あくまで最初の一歩にすぎないのだ。

・ハードウェアは、ウェハーにエッチングするトランジスタをどんどん小さくできることによって進歩してきたが、ソフトウェアはまったく違い、デスクでコードを書く人間が必要になる。人間がボトルネックなのだ。

・ソフトウェアは、人間の創造的活動の例に洩れず、間欠的に進歩する。あるとき見事なひらめきがあったかと思えば、長いこと退屈な作業が続いたり停滞したりする。

・基礎研究となると、運と技能と突然のひらめきが必要なので、進歩は「断続平衡」的になる。長期間たいしたことが起こらずに過ぎて、いきなりその分野全体を一変させる突破口が開かれるのだ。

・ガンは、基本的には4つ以上の遺伝子が変異し、正常な細胞が「死に方を忘れる」ことでできる。

・科学者は現在、老化とは何かを理解している。それは、遺伝子や細胞レベルでのエラーの蓄積だ。

・熱力学第二法則には、小さいけれども重大な抜け穴がある。第二法則は、「エントロピーの総和は常に増加する」と言っているにすぎない。ならば、他の場所でエントロピーを増加させれば、ある場所で実際にエントロピーを減らし、老化を逆戻りさせることも可能となる。つまり、他の場所に損害をもたらすという犠牲を払えば、若返ることは可能なのだ。

・エントロピーの原理は、冷蔵庫の裏側を見てもわかる。冷蔵庫の内部では、温度の低下とともにエントロピーも減少する。だがエントロピーを減少させるためには、冷蔵庫の裏側でモーターが熱を発し、庫外のエントロピーを増加させなければならない。

・どうやら一部の爬虫類は寿命がわかっていないらしい。もしかしたら永久に生きられる可能性もあるだろうか。

・韓国でも、第三子の65パーセントが男だ。親がこのように性別によって中絶すると、子の世代はやがて結婚適齢期を迎え、数百万人の男性が女性を見つけられないことに気づく羽目になる。すると社会は大混乱に陥るかもしれない。跡を継ぐ男の子だけを欲しがった農民は、のちに孫がひとりもいないことに気づくのだ。

・犬は人間のおよそ7倍速く年をとるので、オオカミと分かれてから約1000世代経っていると考えられる。これをヒトに当てはめると、計画的な育種で人類が数千の種族に分かれるのには、たった7万年あればよさそうだ。

・椅子に腰掛けると、自分の体が椅子に触れているように思える。ところが実は、我々の体は椅子の電気力と量子論的な力によって斥けられ、1ナノメートルも離れてはいないが椅子から浮かんでいる。

・炭素の最も重要な用途はコンピュータ業界にあるのかもしれない。コンピュータ・テクノロジーを支える基盤として、いずれシリコンのあとを継ぎそうな候補はいくつかあるが、炭素もそのひとつなのである。

・世界経済の未来は、とどのつまりこの問いにかかっているとも考えられる。シリコンに代わるものは何か?

・自然界では、多数の分子が凝集して、まるで魔法のように緻密なパターンを形成することがある。これまでのところ、この魔法を確実に再現することに成功した人はいない。

・「願いをかける時には気をつけよう。かなうかもしれないから」という古くからの言い習わしある。

・ナノテクノロジーの聖杯は、分子アセンブラ、すなわちレプリケーターを作ることだが、実際に発明されたら、社会の土台そのものが覆る可能性がある。

・社会主義には、「各自は能力に応じて働き、貢献に応じて受け取る」というスローガンがある。究極の社会主義である共産主義のスローガンは、「各自は能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」だ。

・風力タービンは、自転車のダイナモと同じ仕組みで発電する。回転運動が、コイルの内部にある磁石を回らせるのだ。回転する磁場がコイル内の電子を押し動かすと、結果的に電流が生じる。

・ナチスも、艦船のスクリューの羽根から出る気泡がしばしば光ることから、気泡の内部でなぜか高温が生じているようだと指摘している。のちに、こうした気泡が明るく輝くのは、均等につぶれることによって、気泡内の空気が圧縮されおそろしく高い温度になるためだとわかった。

・前世紀は電気の時代だった。だが今世紀には、物理学者が常温超伝導という聖杯を手に入れそうだ。そうなれば、磁気の時代というまったく新しい時代が到来するだろう。

・磁石が浮く理由は単純だ。磁力線が超伝導体に入り込めないからである。これをマイスナー効果という。超伝導体に磁場をかけると、表面に弱い電流が生じてその磁場を打ち消すので、結果的に磁場は超伝導体から締め出される。

・未来のコンピュータは空気のような存在になっていき、公共サービスと化し、電気や水のように売られる。コンピュータチップが次第に空気のような存在になって、計算は「クラウドで」おこなわれるようになるのだ。

・テクノロジーは、電気や水道のように普及すると、最終的には公共サービスとなる。

・人間が使えるエネルギーは、途方もなく長い年月にわたって5分の1馬力、すなわち自分の筋力に限られており、そのため過酷な環境の中で食料をあさりながら、小さな部族単位で移動する放浪生活をしていたことがわかる。とても長い間、我々はオオカミと変わりがなかった。

・今日、世界経済の影響を及ぼすトレンドを把握せずして、一国の経済を理解することは不可能なのである。

・この惑星規模の文化は、第二次世界大戦後に登場してきた。そのころ、人類史上初めて、若者の世代全体が一般的な文化を変えられるほど可処分所得を得たのだ。

・世界中で教育水準が向上するとともに、国際ニュースの視聴者は圧倒的に増えている。今日の政治家は、自らの行為の結果を考えるにあたり、国際世論も考慮しなければならない。

・科学自体は倫理的に中立なものである。科学はいわば諸刃の剣なのだ。片側の刃は、貧困や病気や無知を斬ることができる。ところがもう片側の刃は、人を傷つけることができる。この強力な剣がどう扱われるかは、手にした者の知恵次第なのである。

・知恵は、自分たちの時代の重要な問題を見つけ、さまざまな観点や視野からそれを分析して、何か崇高な目標や基本方針を実現できる手だてを選ぶ能力だ。

・今日インターネットは、欠陥や行き過ぎがありながらも、民主的自由の守護者として台頭しつつある。以前なら見えないところで議論されていた問題が、今では多数のウェブサイトで事細かに分析されている。

・独裁者はインターネットを恐れながら生き、国民が自分に反乱を起こしたらどうなるかと怯えている。

・残念ながら多くの人は、人類が未来に直面するとてつもない課題について、情けないほど無知である。





2100年の科学ライフ

2100年の科学ライフ

  • 作者: ミチオ・カク
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2012/09/25
  • メディア: 単行本



nice!(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 0

トラックバック 0