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『孤独の価値』 [☆☆]

・ネーミングを気にしているあたりが、とてもビジネスライク。

・それは文字どおりの「憧れ」であり、単にその情報の中で、それが素晴らしいものだと語られているのを鵜呑みにしているだけだ。

・まわりのみんなが「寂しいね」と無理に教えることで、寂しさを感じることはあるだろう。

・人がいないから静かで良い、と考える人は少数派だろう。周囲に人がいなくなると、なにか自分だけ間違ったことをしているのではないか、と感じてしまう人が多いはず。

・苛めっ子が一人孤立しているということは滅多にない。必ず仲間が近くで見ている。その仲間に見せているのだ。

・「嫌なものは嫌なんだからしかたがない」と言う人が多い。これは、典型的な「思考停止」。

・思考しなかったら、つまりは人間ではない。人間というのは、考えるから人間なのだ。

・「寂しいといろいろ考えてしまって余計に憂鬱になる」と言う人もいる。この言葉が示しているのは、「賑やかなところではなにも考えなくても良い」という点である。

・普通の人はこれを知らないのだ、という孤独感を抱くほど、科学者や数学者は、その「楽しさ」を独り占めしているのである。

・何故そんな偉業ができたのか。それは不屈の精神のなせるわざだと普通は語られるが、全然違う。ただ単にもの凄く楽しかったからなのだ。

・わいわいがやがやとやっている時間から生まれるものもゼロではないが、そんな例外は、一人のときに悩み考えていた人が、その賑やかな場のリラクゼーションからふと思いつくアイデアである場合がほとんどだ。

・感動とは、みんなで一緒に作るものだ。それが、現代の「良い子」たちである。

・大勢が、「感動」をもらおうと口を開けているヒナのように見える。自分の頭の中から湧き出る本当の「感動」を知らない。

・その選手が勝利したときのインタビューでは、「一人でこつこつとやってきた甲斐がありました」とは言えない。「応援してくれた皆さんのおかげです」といった言葉になるのである。スポーツ選手は、ファンがいなければ業界が傾くから、宣伝文句としてそう言っているだけである。

・苛めが起こる心理には、苛める側の「絆」がある。誰かを犠牲者にすることで、苛めっ子のグループの結束を確かめる。

・僕も子供たちを同じように指導した。嬉しくてもはしゃぐな、悲しくても泣くな、というようにである。それが、「上品」な人間だと考えていたし、もちろん今でもそう思っている。

・スポーツなどに負けたら、涙を見せる方が好印象だと思っている人の方が多いのではないか。僕は、少なくともそうは思わない。動物ではなく、人間なのだ。感情をコントロールすることの方が「美しい」と考えている。

・普通の人の声やしゃべり方は、もっと棒読みだ。もっと「素人くさい」のがリアルなのである。

・他者に理解され、他者によって再現できなければ、「技術」にはならない。

・世界中の人々が、それぞれ自分の趣味に時間を使うようになのどかな生活をすることができたら、世界から戦争が消えるだろう。なによりも鉄道の写真を撮ることが人生だ、みたいになったら、国の争いなど二の次になるはずである。

・昔は、芸術のユーザ(消費者)は一部の王族や貴族だっただろう。でも、今は、大衆が相手になったので、世間の全員から疎んじられていたのでは絵が売れない。

・一万人に一人でも理解者がいれば、食べていけるかもしれない。現に、小説家は、一万人に一人の理解者がいれば、人気作家と呼ばれているのだ。

・部屋をそんなに明るくして何が嬉しいのか、と感じるほど日本の住宅は全般に明るすぎる。明るければ心まで晴れやかになる、という洗脳を多くの日本人が受けているとしか思えない。

・芸術というのは、人間の最も醜いもの、最も虚しいもの、最も悲しいもの、そういったマイナスのものをプラスに変換する行為だといえる。これは、覚えておいて損はない。

・芸術家の一部は、自分の不幸を自慢しているようなものだ。傍からはそんなふうに見える場合が往々にしてある。

・台頭するのが、人間が人間に対してサービスをするような職種である。この中には、情報を伝える仕事や、人を感動させる芸能やスポーツが含まれるだろう。この分野の仕事は、肉体労働や事務労働が減少した分、どんどん割合を増している。

・芸術なんて無縁だという人であっても、これからは、それでは食べていけなくなりますよ、とアドナイスできると思う。

・自然にはそもそも新しいも古いもない。常に変化をし常に新しくなっている。百年前の自然はどこにもない。「古い」というのは、人間が作ったものに対する形容なのだ。

・年寄りが、風景に美を見るのは、おそらくは自分の死を身近に感じているからだろう。「この景色をあと何度見ることができるか」というセンチメンタルな感情が加味されるからこそ、美しく見える。

・金で買った友情なんて、と馬鹿にすることは間違っている。食べるものも、レジャも、知識も、金で買っているではないか。

・子供を作らない夫婦も増えている。ファミリィを美化した宣伝がそろそろ効かなくなりつつある。美化された虚構に憧れて結婚したした人が、簡単に離婚する時代になったし、そういった一般人の情報が広まるようなネット社会にもなった。

・何故結婚しない人が増えているのか、何故子供を産まない女性が多いのか、そういった社会問題について考察した記事をよく見かける。社会福祉政策が不十分だから、というような理由が挙げられているのだが、昔に比べて、その種の制度はずっと良い条件になっているはずだ。昔はなにもサポートするものがなかったのに、そんなことは問題にならなかったではないか。

・核家族だから子育てに不便だ、というのではなく、子育てを犠牲にしてでも、核家族の自由さが望まれた、というだけのことである。

・多くの人が、何を望んでいるのかということは、マスコミの宣伝とは逆方向である場合が多い。そもそも宣伝というのは、売れなくて困っているから、「今、これが売れています!」と呼び込むのである。

・友情も愛情も、相手に向かう気持ちのことであって、相手から恵みを期待するものではない、もし、自分が相手からなにかを受けたいと期待しているなら、それは本当の友情、真の愛情ではなく、単なる妄想である。





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