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『ザ・セカンド・マシン・エイジ』 [☆☆]

・内燃機関が都市では自動車に、農村地帯ではトラクターに搭載され始めると、馬の需要は激減する。技術が適切に活用されるようになると、働く馬はほぼ完全に姿を消した。

・人間はどんな機械よりも器用で機敏だし、おおむね軽くてエネルギー効率がよい。それに五感が発達しているから、多元的な情報を高速にフィードバックでき、正確な動作や制御ができる。

・人間は非線形処理のできる最も安価な汎用コンピュータ・システムである。しかも重量は70キロ程度しかなく、未熟練の状態から量産することができる。

・投資あるいは消費のための資本を持つこともまた、重要な意味がある。人間と馬の決定的な違いの一つは、人間は資本を持てるが馬には持てないことだ。

・アラスカ永久基金だ。1976年にアラスカ州は州憲法を改正して基金を設立し、以来住民の大半は相当額の資本所得を毎年受け取っている。

・知能テストで大人を負かすとか、チェッカーをするといったことは、コンピュータにとってさほど難しくはない。だが知覚や運動ということになると、一歳児のスキルを身につけることさえ難しく、場合によっては不可能だ。

・バクスターは、ヒューマノイド型ロボットである。その動作は全速力で働く熟練工ほど速くはないし、なめらかでもない。だが、もともとその必要はない。コンベヤベルトや組み立てラインの大半は、人間の全力スピードに合わせて運転されるわけではないからだ。そんなことをしたら、人間はすぐさま疲れ切ってしまうだろう。

・IBMのワトソンは大量の賢いアルゴリズムを駆使するが、それができるのも、コンピュータのハードウェアがあのディープブルーの100倍近く高性能化したからだ。

・核実験シミュレーション用のASCI Redとゲーム機プレイステーション3がほぼ同水準の性能だったように、スーパーコンピュータCray-2(1985年発表)とタブレット型端末iPad2(2012年発表)の演算速度はほぼ同等である。

・キネクトは発売から60日で800万台を売り上げた。これはiPhoneやiPadをもしのぐ快挙であり、消費者向け電子機器として最速の販売記録は今日もなお破られていない。

・デジタル化はまさしく「ビッグデータ」をもたらす。実際、デジタル化がこのペースで進行したら、いずれメートル法の単位系で測れなくなることは確実である。すでに「ゼタ時代」に突入した私たちには、ヨクトまであと一つの単位しか残されていない。

・国が豊かになる方策として唯一実行可能なのは、企業と労働者が同じインプットからアウトプットを増やし続けること、言い換えれば、同じ数の人間でより多くのモノやサービスを生み出すことである。

・やがて電気という汎用技術が蒸気機関に取って代わるようになるが、多くの工場ではできるだけ大型の電動モーターを導入し、単純に蒸気機関の代わりに据え付けるだけだった。新しく工場を建設した場合でさえ、このレイアウトが踏襲された。これでは当然ながら、さしたる効率化は望めない。

・30年が過ぎた頃に、工場のレイアウトは大きく変わる。大型モーターを一つ据え付けるのではなく、機械設備ごとに小型モーターが用意されている。もはやエネルギー消費量の多い機械を動力源の近くに据える必要はないので、レイアウトは自然なワークフローに沿ったものになった。こうして組み立てラインが設計し直された結果、生産性は一気に向上する。

・近年では、スキルの低い仕事が必ずしも自動化されるわけではないことがわかってきた。自動化されやすいのは、「機械のほうが人間よりうまくできる仕事」である。

・人間が日頃あたりまえに使っている知覚・運動スキルの習得は、コンピュータにとっては非常に困難なのである。数百万年にわたる進化の歴史の中で、人類は何十億ものニューロンを身につけてきた。

・一方、「高度な思考」とされている抽象的な推論、たとえば数学的思考や論理的思考といったものは、人類が比較的最近になってから身につけたスキルで、数千年しか経っていない。こちらは比較的単純なソフトウェアで十分こなすことができ、さしてコンピュータの演算能力を使わない。だから人間の能力と肩を並べ、さらには上回ることができてしまう。

・多くの産業で、ナンバーワンとセカンドベストの所得格差は開く一方だ。議論を巻き起こしたナイキの広告にもあるとおり、銀メダルは勝ちとるものではない、金メダルを取りそこなうのだ。

・他の人より少しでもよい地図作製ソフト(データの読み込みが速い、情報量が多い、アイコンがかわいい等々)を書けるプログラマーは、市場を独占することが可能だ。10番目によい地図ソフトでも性能に大差はないだろうが、まずほとんど需要がなくなってしまう。

・消費者は「他よりよいか」ということだけを気にかける。その結果、わずかなスキルの差、あるいは努力や幸運の差が、収益や報酬で大差となって表れることになる。

・かつてアルバート・アインシュタインは、ブラックホールとは神がゼロで割ったところであり、そこでは不可思議な物理学が出現すると述べた。

・ニッチを狙った極端な専門化や特化もナンバーワンになる手段の一つとなっている。子供向けの本の書き手として世界で1001番目になるくらいなら、環境志向型起業家向けの科学技術専門アドバイザーとして第一人者になるほうがいい。

・「技術が生む失業」というのがその病名である。省力化の手段を見つけるペースが速すぎて、労働力の新たな用途を見つけるのが追いつかないために起こる失業のことだ。

・生産の最重要要素としての人間の役割は、縮小する運命にある。ちょうど農業生産において、トラクターが導入されて馬の役割が減り、次いで完全に排除されたように。

・答えしか出せないのは本当だ。コンピュータには、重要な問いを自ら発することはできないのである。問いを発する能力は、いまなお人間にしか備わっていないように見受けられる。

・これから人材を探す企業は、ヴォルテールの次の言葉に従うとよい。「どのように答えるかよりもどのような問いをするかによって、人を判断すべきである」。

・教育メソッドはほぼ千年にわたってほとんど変化がなく、先生が教室の前に立って話し、重要な項目を白墨で黒板に書き出す、というやり方が続けられてきた。いま必要なのは教育・学習のデジタルモデルだ。単に古いモデルにハイテクを付け加えても意味がない。

・学期を長くするのは、とくに貧しい家庭の子供に大きなメリットをもたらす。調査の結果、学期中は裕福な子供も貧しい子供も理解のペースは同じだが、夏休みの間に貧しい子供は大幅に遅れてしまうことが確かめられた。

・アラスカ州は1980年に所得保障を導入している。同州では、豊富な石油資源の収益の一部を運用する目的で1976年に永久基金を設立し、その4年後に、基金の配当金を住民に配布する法案を成立させた。配当金は、その年にアラスカに住んでいた人に毎年小切手で支払われる。




ザ・セカンド・マシン・エイジ

ザ・セカンド・マシン・エイジ

  • 作者: エリック・ブリニョルフソン(Erik Brynjolfsson)
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2015/07/29
  • メディア: 単行本



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  • 発売日: 2015/07/29
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