SSブログ

『「西洋」の終わり』 [☆☆]

・西側諸国は革命(レボリューション)ではなく進化(エボリューション)で適合し、対処する方法を見つけた。

・独裁者は自国民を残虐に扱うが、他国の脅威になることはめったにない。

・自由の代償は永遠の警戒である。

・西洋という理念は、所得や富が平等であるか、平等に近いことに依存しているわけではない。しかし、政治的権利の平等には依存している。

・ボーナス査定の基準にしているのは、公的資金の注入によって恩恵を受けている市場での業績なのだ。

・富の磁力は、富にどう対処すべきかというモラルのコンパスを狂わせてしまう。

・大学の入学者選定方針が、純然たる実力主義だなどと考えるのは、ナイーブすぎるだろう。無数の王子や王族の相続人や、金持ちの息子(や最近は娘)が、一流大学で学んできたのは、知力が高かったからではない。

・発言権の平等と、他人よりも発言力を強めようとする競争意識の対立は、開かれた社会の不可欠な要素ではあるが、そういう社会にとって最大の脅威でもある。

・問題は、やりすぎを防いだり、利益団体が確保した一時的な便宜を恒久化させるのを防いだりする、信頼できる自己規制のメカニズムが民主主義の競争には存在しないことだ。

・社会という船体には利益団体がフジツボのように厚くへばりつき、国家の前進がいよいよ困難になる。

・80年代と90年代に世界中の政府が民営化を図ったことは、競争を取り入れ、効率を向上させただけではなく、利益団体が政府に強要する機会を減らすのに役立った。

・アメリカ市民の成人8人に1人、数にして1500万人が、元受刑者か、服役をまぬがれた重罪犯で、現在服役中の成人は2200万にいるという。

・アメリカの受刑率は、世界一高い――アメリカの人口は世界人口の5パーセントに当たるが、受刑者数は世界の25パーセントを占めている。

・サッチャリズムは、常に歓迎されてはいなかったが、社会に大きな影響を与えた。古い集団、古い忠誠心、古い慣行が砕かれた。新たな自由は、かつての確信を終わらせた。

・以前のEUは、問題ではなく解決策だった。このプロセスがもはや機能しなくなっているのは、ひとつには、EUが15か国から28か国に拡大したからでもある。それによって超国家的な意思決定が困難になった。

・救済の必要があった債務国は、緊縮財政を敷く必要があったかもしれないが、それは「穴の中に落ちたらそれ以上掘るな」というようなものだった。

・パリは21世紀のベネチアとして、美しく、歴史をしのばせる街だと見なされるかもしれないが、もう現役で活動している街ではない。

・郊外という言葉は、ふつうなら樹木の多い庭付き住宅が立ち並ぶ閑静な中流層の住宅地を示すが、フランス語の郊外は、首都周縁の殺伐とした公営団地を指す。

・以前は、のんびりと暮らす余生はせいぜい10年程度だと予想されていたが、いまでは30年以上に延びた。このコストの増大が、他の重要な使い道から資源とエネルギーを奪っている。

・日本には真の中核となる権力や司令塔はなく、政界や大企業、各省庁に属するさまざまなエリートのゆるやかな集合がすべてを誘導もしくは進展させている。

・日本企業は、製品改良のための新技術開発には新しいものを取り入れるが、業務や経営のやり方はあまり刷新しないか、ほとんど変えない。

・ときどき有名企業が、経営幹部の報酬を年功ではなく成績によって決めるとか、上級管理職を他社から雇うといったような過激に思えることを導入する。だが、それは活気あふれる新しい通例にはならず、興味をそそる例外でしかない。

・かつて国際メディアが「スウェーデン・モデル」を取り上げるのを好んだのは、ブロンドの美女の写真を載せる口実になったからだった。

・人権やプライバシーのような感傷的な下らないことに、のめり込み過ぎている。

・海外で軍事介入する衝動に負けるくらい傲慢なのに、その軍事介入を、かつては自分たちの専門だった、征服、占領、植民地化へと推し進める度胸はない。

・デジタルのイノベーション――航空券を携帯電話で受け取ったり、所得税申告をオンラインで行ったりするような、手間ひまを省く新機軸――は、コストのかかる効率の悪い労働者に取って代わったわけだから、生産性はかなり向上しなければおかしいのに、そうはなっていない。

・ヘンリー・フォードが大量生産の先駆者になったときには工場労働者が自動車の消費者になったが、ロボットは消費者にはならないから、賢いロボットが生産する製品や商品を買える人間が必要になる。

・正当とは、「受け入れられている」あるいは「太刀打ちするものがいない」を意味し、力の独占が成し遂げられたということにすぎない。

・2001~07年に彼らがやるべきだった仕事――古い格言にあるように「パーティがたけなわなときにパンチボールを下げる」こと──を怠った。

・アメリカも中国も、他の国とは違う。ルールを策定する国々の小集団に参加するつもりはあるが、ルールに従うかどうかを自分が決める権利を確保しておく。

・アメリカは外国に侵攻し、政権を交代させる。ロシアが同じことをやってはいけないというのか?

・軍事基地の使用を許可するのは、信頼、友好、依存の証だが、中国にはそういう国は現在1か国しかない。アフリカ東岸のジブチで、海賊対策施設を共用しているだけだ。

・ポピュリストは単純明快な解決策を提示して、大衆の今日の支持を得るのに長けている。しかし、明日の支持と長期の支持を受け続けるには、異なる手法が求められる。

・平等とは何か、平等には何が必要か、ということについて、本来の理解を取り戻さなければならない。

・平等についての新しい思考に最も必要なのは、社会主義の残骸から解き放たれることだ。20世紀後半、社会主義は「能力に応じて働き、必要に応じて受け取る」と唱え、再分配と物質的平等に的を絞り、平等の議論を歪めた。

・若年層は礼儀正しいので、教育費削減や労働市場での不平等について祖父母世代を非難することはないが、それでも高齢化が原因だというのは事実だ。

・20世紀の自由民主主義の盛衰は、勃興する扱いづらい労働者階級に政治的発言権と経済的機会を提供できるかどうかにかかっていた。21世紀、それと同じような決定的な点は、世代間不平等を引き起こすおそれがある高齢化をどう扱うかである。

・政府が若者から徴収した税金から所得移転を受けて引退後30年以上も暮らし、医療費も同じシステムでまかなってもらう権利があるという考え方は、あまりにも馬鹿げている。持続できるわけがない。

・退屈で変わらないことが、経済成長の好ましい目標である。予想しやすい環境では、人々も機構も計画を立て、それを続けていける。

・バラク・オバマ前大統領がアメリカの外交政策について述べた、「愚かなことをやってはいけない」という言葉が、先進国の経済政策の抱負であるべきだ。



「西洋」の終わり 世界の繁栄を取り戻すために

「西洋」の終わり 世界の繁栄を取り戻すために

  • 作者: ビル・エモット
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2017/07/06
  • メディア: 単行本



「西洋」の終わり 世界の繁栄を取り戻すために

「西洋」の終わり 世界の繁栄を取り戻すために

  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2017/07/05
  • メディア: Kindle版



nice!(0) 

nice! 0