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『わかりやすさの罪』 [☆☆]

・文章とはまず、教示ではなく提示である。つまり、あなたに教えてあげますよ、ではなく、私はこう考えています、の提示だ。

・「どっちですか?」「こっちです」だけでは、取りこぼす考えがある。

・AIの力を駆使すれば、「メタリカっぽい曲」はいくらでも作れるようになる。しかし、「これからメタリカが作る音楽」をあらかじめ作ってみせることは難しい。なぜならば、それは、彼らにしかわからない、ではなく、彼らにもわからないからである。

・「人の弱さって、強さの裏返しだもんなぁ みつを」とすれば、ある層には届くかもしれないが、若い世代には通用しない。「人の弱さは強さの裏返しって「風の谷のナウシカ」でそんなシーンがあったでしょ」と言ってみると、人は「うんうん」と頷くことに気づいたのである。ほら、ジブリ作品で、と言われると、無条件に頷くのだ。

・キャベツの魅力を語るためにレタスの悪口をいう。

・用意された選択肢ばかりを甘受していると、「こんな私にも理解できる、わかりやすい○○を提供してください」ということばかりが生じてしまう。

・生半可な専門家は、知っている単語を駆使して、関係者しか理解できない説明文を書いてしまいます。

・池上の話法の特徴である「○○という意見も出ていますが、どう思いますか?」は、「池上無双」などと名付けられて賞賛されている。

・ツイッターを140字以内ではなく、140字以上でないと送信出来なくすればいいんじゃないか。文章を長くすれば、もう少し考えて書くんじゃないか。

・たくさん話したくなるのは、調べたこと、考えたことを全部伝えたい!、「頑張った!」と思ってほしいという話し手のエゴです。聞き手は、必要最低限の情報しか、ほしくないのです。

・自分の考えを他人に押し付けることを、言論の自由を言い始める。

・子供の頃に『11PM』を見ていて、スタジオでスタッフの笑い声が入るのを聞きながら、「何が面白いのか、わからないところがいっぱいある」、でもその「わからないことが(テレビに)興味を持つきっかけ」になったという。

・今や、事件や災害現場の様子をいち早く伝えるのは、そこに居合わせた人のSNSである。

・現象を追いかけるのがニュースなのではなく、ニュースが取り上げることによって「現象化」し、その現象化した状態を再度ネットが拡散するという相互補完の関係でもある。

・人が読みたくなる文章というのは、これまで見たことがない、でも、それがあると知ってはいて、それについて語られているのを初めて見るもの。

・難しい話を難しいまま投じるメディアは、今、根こそぎ排除される傾向にある。

・仲間かどうかを確かめ合う方法が、敵が一致しているかどうかになる。

・「新宿御苑理論」なるものを提唱していた。新宿御苑には、入場料を払わなければ入ることができない。オンラインサロンもそれと一緒で、課金することによって、その中にいる人を絞り込むことができる。平和な空間が保たれる。要するに賛同者だけの空間になり、厄介な議論が生まれなくなるということ。

・持論を公論のようにわかりやすく伝える話者がメディアで重宝された。



わかりやすさの罪

わかりやすさの罪

  • 作者: 武田 砂鉄
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2020/07/07
  • メディア: Kindle版



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