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『ミライの授業』 [☆☆]

・イギリスはもとより世界の医療・福祉制度を大きく変えていったのは、看護師としてのナイチンゲールではなく、統計学者としてのナイチンゲールだったのです。

・今や日本人の国民食ともいえる存在となったカレーライスも、このとき高木兼寛が「脚気予防の洋食」として海軍に取り入れたものです。

・ドイツで医学を学んだ鴎外らにとって、麦飯で脚気が予防できるという話は、「古くさい漢方医の考え」でしかありませんでした。

・とりあえずは大雑把な地図と大胆な仮説を胸に、漕ぎ出してみる。冒険とは、「自分だけの仮説を証明する旅」なのです。

・仮説を「どこに」立てるべきなのかは、はっきりしています。仮説の旗は、誰も手をつけていない空白地帯に立てること。それが世の中を変える人の鉄則です。

・蚊を通じて感染する犬のフィラリア症。この病気の予防薬としても、イベルメクチンが使われています。

・そこには「画期的な動物用新薬を作れば、やがて人間にも応用できるはずだ」という仮説があったのです。

・当時の日本には、今でいう「人権」の考えがありませんでした。代わりに「民権」という言葉が使われていました。これはわかりやすくいうと、「日本国民としての権利」であり、国から与えられた権利、という意味です。

・もしも彼女が「男女平等」を訴える市民活動家としてアクションを起こしても、無視されて終わりだったでしょう。不平不満を訴え、自分の信じる正義を訴えるだけでなく、それを「ルール」として形にすることが大切なのです。

・世の中を変えるには、ルールを変える必要がある。

・ごちゃごちゃとした飾りを一切取り払い、シンプルで、無駄がなく、着心地のよい服を作りました。男を喜ばせるためではない、着ている女性自身が喜ぶための服です。

・時代が変われば「モード」も変わる。どんな「モード」もいつか遅れたものになる、だけど、「スタイル」だけは変わらない。シャネルの語る「スタイル」は、「ルール」と言い換えても構いません。いつも「女性たちの自由」というルールを形にしていきました。

・緯度1度の長さは約110.996キロメートル。忠敬の算出した数字は、わずか誤差0.2パーセントなのですから驚くほかありません。

・「他の人がやっているから」というだけの理由で、何かを決めてはならない。何をするかは自分で決めなさい。そして、自分の決断についてきてくれるよう、まわりの人間を説得しなさい。

・彼らは「誰かの夢」を手助けしたのではありません。あくまでも「自分の夢」をかなえるために、影の主人公となる道を選び、夢をかなえてくれる人(忠敬やサッチャー)を支援したのです。

・彼の結論は「世代交代」です。つまり、天動説を信じる古い世代の大人たちは、どれだけたしかな新事実を突きつけても、一生変わらない。何があっても自説を曲げようとしない。地動説が世の中の「常識」になるのは、古い世代の大人たちが年老いてこの世を去り、新しい世代が時代の中心に立った時なのだ。「世代交代」だけが、世の中を変えるのだ。

・古いパラダイムが、新しいパラダイムに移り変わる(パラダイム・シフト)ためには「世代交代」が必要である。古い世代の人たちに世界を変える力はない。世界を変えるのは、いつも「新人」なのだ。

・周囲の大人たちが応援してくれると思ったら大間違いです。大人たちが応援するのは、自分の地位を脅かさない若者だけ。つまり、「世界を変えない若者」だけです。

・世界を変える旅は、「自分を変えること」からはじまるのだ。医学者としての森鴎外、蓄音機のエジソン、そして遺伝子の謎に挑んだメンデルを思い出してほしい。彼らは能力が足りず世界を変えられなかったのではない。自分を変えることができず、結果として自分の手で世界を変えるに至らなかったのだ。



ミライの授業

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  • 作者: 瀧本 哲史
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/07/01
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



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  • 作者: 瀧本哲史
  • 出版社/メーカー: 講談社
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『諦めの価値』 [☆☆]

・「諦めた人」が何を諦めたのかというと、「憧れる」ことを諦めたにすぎない。

・諦めるのは、何か他のもっと大事なものを守るための手段であることを忘れてはいけない。しかし、普通は「大事なものは何か」ということがしっかりと理解されていない。

・重要なことは、目的の抽象化である。人間は、具体的なものに囚われて、本来の目的を見失いやすい性質を持っている。

・本当に大事なものは、具体的な「バッグ」ではなく、自分の「満足」という抽象的な目的なのだ。

・自分にとって、自分自身が頼りになることは、とても価値がある。人生という道を、だいぶ生きやすくなるだろう。

・「デザイン」という言葉は、見えるもの(サイン)を捨てる(デ)、という意味が語源となっている。

・人生設計とは、人生をデザインすることだ。飾り立てること(デコレーション)がデザインではない。いらないもの、無駄なものを排除していくことで、浮かび上がってくるもの、鮮明になってくるものがある。

・どうしても上手くいかない、という窮地に立たされたときには、とにかく、何が諦められるか、と考えた方が良い。諦めることで、救われる場合が多い。

・「大失敗」は、だいたいの場合、諦めないことが原因だ。もう少し早く諦めていれば「失敗」で済んだものが、諦めなかったために「大」が付加される。多くの歴史からそれが学べるはずだ。

・「夢を実現させる」過程において、僕が何を諦めたかというと、それは「日常」である。なにも不満のなかった日常生活を諦めた。

・歴史、音楽、美術、政治、経済、流行りもの……1分以上語れるジャンルが、何もありません。

・「褒められたら味方で、貶されたら敵だ」という単純な反応というのは、幼い子供の精神だといえる。

・人口を増やそうとする計画ではなく、人口が減っていく社会の維持をいかに上手に行うか、が問われている。これが少子化問題の本質である。

・物事を深く理解している人は、全般的で漠然とした質問をしない。もっと具体的で局所的な問題を抱えているからだ。

・そのインスピレーションが、ものになるかどうかは、まあ良くてフィフティ・フィフティ。50パーセントの確率なら、研究では間違いなくゴーサインが出る。

・人とつき合うという行為は、僕にとっては、自分一人ではできないことをするために、「しかたがない」選択だった。

・感情を抑えることは、それが自身にとって有利であり、得だということを覚えてもらいたい。この技を会得すれば、感情を抑えられた自分に満足し、気分が良くなるだろう。笑って済ませることがことができるようになる、というが、その笑いが本当に「愉快」なものになるはずである。

・成人式が中止になって、「一生に一度のことなのに」と残念がる声をマスコミが伝えていた。こういう、なんでも特別なものにしたがる症候群に、現代人は憑りつかれているようだ。

・今まで何十年も「周囲と同じ」生き方をしてきたのに、そうそう簡単に、「人と違う」真似はできない。せいぜい、「人と違う」ファッションを試す程度の外面的な装いだけである。

・目的とか夢として語られているのは、単なる看板やキャッチフレーズ程度の「言葉」に過ぎない。本当の目的は、自分がよくやったな、と毎日満足できることだし、本当の夢というのは、その経験から自分だけが感じられる「幸福」であり、この幸福感を「楽しい」と表現しているのだ。

・クレヨンも色鉛筆も色数を誇って箱に並んでいる。そういうものに慣れ親しむと、色を混ぜ合わせて、自分の色を作る作業を忘れてしまう。そんな発想さえしなくなる。その間に存在するものは、もともとないものになるのだ。結果として、「自分なり」のものが、消えているのである。

・失われているのは、その色を作るために必要だった人間の「感覚」である。見極めること、違うと判別すること。そして、何が不足しているのか、どうすれば「自分」が思ったものに近づくのか、と考える力である。

・夢があるのに、そこへ近づけないのは、言葉だけの夢を掲げて、それを壁に貼ったポスタのように日々眺めているからでは?

・かつては、「無人島へ行くなら何を持っていきたいですか?」という質問が流行ったが、現代人は「スマホに決まってんじゃん」と答えるだろう。おそらく、質問がこう変わるはずだ。「スマホが使えないとき、何をしたいですか?」



諦めの価値 (朝日新書)

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  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2021/08/12
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『東京ディストピア日記』 [☆☆]

・歴史には、正史(国家による歴史)と、稗史(我々庶民の日々の歴史)があるという。

・小泉進次郎環境相は、感染リスクの高いゴミ清掃員を元気づけるため、ゴミ袋に「ありがとう」などの感謝メッセージを書くことを推奨している。……わたしは、フェイクニュースかと思って確認し、本当のことで、驚いた。

・「他者の困窮を自分の幸福として語ることができる」のは、「自分さえ無事なら他の人のことはいい」ということであり、これは失言ではなく、人間という存在への考え方そのものの問題だったと思う。

・自分は、ときどきくる客というモブの一人に過ぎない。

・エタノール99%の消毒液をみつけた。「えっ、99%……? それもう火炎瓶じゃね?」と一瞬思った。

・コロナに感染したのは「本人の責任」と考える人は、欧米などと比べ、日本で突出して多いらしい。そもそも日本では、不運は自業自得だと判断する傾向がやけに強いのだという。

・沈黙は差別への加担と同じ。

・コロナ前は、季節ごとのテーマによって色が変わって楽しかったのに、ここしばらくはパターンが同じなので、「まるで昨日と同じ今日を繰りかえしてるみたい。明日がこないみたい……」と、見るたびに追い詰められる気持ちになっていた。だから、昨夜、ツリーが見慣れぬ赤紫色に光っているのを見て、「いやっほーう!」と思った。

・「信じたいことを、証拠なしに強引に信じ、大声で言い張り続ける」精神……つまりトランプイズムじゃないだろうか?

・「世界は二分されていくが、わたしは理性の側にいるはずだ」という自負が、揺らいでいく。

・世界各国で、感染者も、犠牲となられた方も、男性の方が多いのに対し、インドでは、感染者は男性が多いのに、犠牲となられる方は女性の方が多い。約百年前のスペイン風邪大流行のときも同様だった。これには根深いジェンダーの問題があると考えられている。

・マスクをするかどうかは、やはり、世界の「分断」の象徴のように、私には思えている。「自分さえよければ他の人のことはまぁいい」「個人の自由や利益の方が大事」であればマスクをしない。一方「公共の利益を考える」なら、誰かの命を守るためにマスクをするのだ。

・大人である自分に今できるのはもう「平気なふり」をし続けることだけだったから。

・迷彩柄のキャップ、サングラス、黒マスクの完全防備で外に出かけている。不思議なことに、この扮装だと、男性の通行人は、こちらが意外に思うほどしっかり避けていく。電車内でも、いままでみたいにやけに近くに立ったりしなくなった。

・世界全体が「自分と身内さえよければ他の人のことはどうでもいい」という考えの人と、「いや皆のことを考えよう。社会正義が大切だ」と信じ続ける人とに、ますます二分されていっているように思った。

・世の中にゃ、変えていかなきゃいけない問題がたくさんあるが、他に選択肢がなくなり、もう変わるしかなくなっちまうまで、人間ってのはなかなか変われないもんだよなぁ。

・分断されていく世界で、いま、わたしたちは、どちら側の、どんな人間なんですか……?

・年齢も多様性の一つで、どっちがどうということはないのに。生きてきた時間の長さではなく、個人の経験、知性、戦ってきた歴史にこそ、お互いリスペクトするべきなのだ。

・トランプ大統領が「負けていない」「選挙に不正があった」と証拠を提示しないまま支持者を扇動し続けるという衝撃的な報道が続いているところなので、大阪府の都構想住民投票や愛知県の知事リコール署名運動も、「信じたいものを信じる。時に結果を捏造せんとすることもある」という部分で、わたしには重なって感じられた。

・町を歩き、テナント募集の張り紙をみつけるたび、ふと立ち止まるが、ここになんの店があったのかもう思い出せない。

・付けっ放しのテレビからふいに耳に飛びこむ、イジリや、人の尊厳を地の落として嗤う言葉が辛くなってきて、テレビをクローゼットの奥にしまい、やがて友達にあげたのだ。

・私は旧東ドイツで生まれ育ち、物理学を専攻した。社会主義国がいかに事実を捻じ曲げようと、重力や光の速度などの法則を変えることは決してできないからだ。

・さっきのは、被害者の訴えを根拠なく否定する「二次加害」だったのでは。



東京ディストピア日記

東京ディストピア日記

  • 作者: 桜庭一樹
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2021/04/24
  • メディア: 単行本



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