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『人が自分を騙す理由 自己欺瞞の進化心理学』 [☆☆]

・高額医療サービスはたしかに病気を治すが、同時にそれは精巧に作り上げられた「痛いの痛いの飛んでいけ」の大人版だということである。

・医療は健康のためのものだけではなく、「衒示的ケア」つまり見せびらかしのケア行為なのである。

・私たちの脳は私欲のために行動するよう作られている一方で、他者の前では利己的に見えないように努力するのである。そして、私たちの脳は他者を惑わすために「自分自身」すなわち意識にさえ真実を明かさない。自分の醜い動機など知らなければ知らないほど、他者からそれを隠すことが容易になる。

・贅沢品の需要はおもに社会的な動機に突き動かされている。すなわち、富を見せびらかすためなのだ。

・学校の機能は役に立つ技能と知識を教えることにあると言われている。それにもかかわらず、学生は教えられたことのほとんどを覚えておらず、覚えていることの大半はあまり役に立たない。

・皮肉と人間不信──人間の「動機」を悪く言うことと「人間」を悪く言うこと──の違いは曖昧であることが多い。

・酔っ払いが家の鍵をなくして、「そこしか明かりがないから」と街灯の下だけでそれを捜すように、人類の進化を研究している人は明かり、つまり証拠が信頼できるところだけに説明を見出そうとしがちである。

・それは奇妙な、いやむしろ間違った光景だろう。なぜなら不自然だからだ。開けた草地にありながら、なぜ高くなるためにエネルギーを無駄にするのか? したがって、セコイアが生まれた環境は開けた草原ではないことは難なく推測できる。その代わり、セコイアは密林から進化してきたに違いない。

・人間の社会的地位には実質的に二つの特色がある。それは「支配」と「名声」だ。

・剣なき契約は単なる言葉にすぎない。

・大きくて強いアルバートは弱虫のボブからの仕返しを恐れることなく簡単にボブからものを奪うことができるが、人間の集団では、アルバートは後にコミュニティ全体から制裁を受ける。つまり「集団での執行」が規範の本質なのである。

・第三者による集団での執行こそが人間に特有なものである。つまり人間では、最強のサルが集団を支配するのではなく、それ以外の集団が力を合わせることによって最強のサルを支配し、かつ効果的に牽制できるのだ。

・遠距離武器がなければ、すべての暴力は至近距離での取っ組み合いになる。そうなれば、一人の人間を襲うための仲間がだいたい三人を超えたら何の足しにもならないこと請け合いだ。四人目の攻撃者は邪魔になるだけである。けれども遠距離武器があれば、連合勢力が五人でも七人でも、自分たちの身をあまり危険にさらすことなく、徒党を組んで横暴な最優位の人間に立ち向かえる。

・モデルにひとつだけシンプルなあるものを加えると、モデルは善良な人に有利に働く。そのあるものとは、「他者を罰しない人を罰する規則」だ。それを「メタ規則」と名付けた。

・一片の情報が集団内で「共通知識」になるためには、単に全員がその情報を知っているだけでは十分ではない。全員がその情報を知っているということを全員が知っている、その全員が知っているということをまた全員が知っている、という具合に延々と続いていかなければならない。

・口実はすべての人を騙さなくてもよい。単に人々に「他の人」が信じているかもしれないと案じさせることができるくらい、一見信頼できそうであればよいのだ。

・価値があるのは、自分で自分の首を絞めていると「他者に信じ込ませる」ことにある。チキンゲームなら、ハンドルを切れないからではなく、ハンドルを切れないと相手が「信じるから」から勝つのである。

・心理学的に、政治家は「嘘」をついているというよりむしろ自己欺瞞を繰り返しているのだ。どちらも他者を欺く方法だが、自己欺瞞の方がはるかに発見されにくく告発されにくい。

・人が何かをする時には理由が二つある。良い理由と本当の理由だ。

・自己は独裁者というよりむしろ報道官の役割を果たしている。すなわち自分自身の仕事は、意思決定をすることではなく、単にそれを弁護することである。

・踊りを説明することはできません。もし言葉で言い表せるのなら、踊らなくてもいいでしょう。

・言うべきことを言うのは簡単だが、やるべきことをやるのは難しいのである。

・ある読者には当たり前のことが他の人にとっては新発見かもしれないし、その逆もありうる。

・支配を予測する最適な方法のひとつは「聞いているときの視線合わせ」と「話しているときの視線合わせ」の比率を見ることだ。心理学者はそれを「視覚支配率」と呼ぶ。話す時も聞く時も同じ時間だけ視線を合わせたのであればその視覚支配率は1.0となり、優位性が高いことが示唆される。しかしながら話すときの方が目を合わせた時間が短いのであれば、比率は1.0より小さくなり(典型的な例では0.6付近)、優位性が低い。

・ある人にとっての聖域が、別の人にとっては笑いの対象にすぎないこともある。

・二人の人間が同じ理由で同じジョークを笑うと、親しくなれる。しかし相手が神聖視しているものを笑えば、お楽しみはそこで終わりだ。

・心理的に自分から遠いほど感情移入が薄く、その人の苦痛を笑えることが多い。

・悲劇とは自分が指を切ったときだ。喜劇とは君が下水溝に落ちて死んだときだ。

・公の場ではエコ商品を好み、オンラインショッピングではエコ商品を好まないことがわかった。明らかに、人々の動機は環境を助けるためではなく、環境を助けているように「見られる」ためでもあったのだ。

・買わない人をターゲットにする理由のひとつは、羨望を作り出すことである。BMWのほとんどの広告は実は、実際にBMWを買うかもしれない人よりむしろ、BMWを羨む人に向けたものである。

・アメリカ海兵隊は、体と精神を鍛える場として自分たちを広告している。そうすることで、入隊希望者だけでなく一般市民にも、海兵隊で兵役についた人物は体も精神も鍛えられていると伝えている。

・教育とは鑑定書を通して生徒の価値を高めることである。

・家畜化できる動物が少ないおもな理由の一つは、群れのボスの役割を人間に任せるのは社会的な動物だけであり、そのような動物はまれだからだ。

・おもな兆候は、学校教育を受けていない労働者は言われた通りに行動しないことである。

・私たちは、病院から患者を早期に退院させるより、集中治療室(ICU)に長く入れておく方が、患者が長生きするだろうと考えがちだ。しかしながら調査結果は反対である。ICUにいる時間が1日増えるごとに、患者の余命は推定で40日短くなっているのである。

・ほとんどの学者は。先進国におけるほとんどの健康増進と長寿が医療の恩恵だとは考えていない。おそらくもおそらく重要だと考えられているのは、栄養、公衆衛生の改善、安全で楽な仕事などの要因だ。

・患者とその家族は「リラックスして、質の良い食事をとり、よく眠って、運動をする」というような簡単で安い医療方法にはそっぽを向くことが多い。その代わりに彼らは、最新機器、希少な物質、複雑な手順など高額で技術的に高度な医療を、、願わくば「町一番の医者」に施してもらいたいと考える。

・アメリカでは毎年医療事故で4万4000~9万8000人が死亡していると推定されている。

・私たちは信じているから信仰するのではない。社会的な動物としての自分にとって有益だから信仰し、そして信じるのである。

・キリスト教やイスラム教のような教義に基づく宗教は通例というよりむしろ例外である。古代ギリシアや古代ローマのような昔の宗教は「ゼウスがオリュンポスの神々を支配している」というような教義上の主張にはあまり関心がなく、祝日には祝典に参加するというような儀式の順守が重要視された。

・多くのユダヤ人は自分自身を無神論者と考えているが、それでも神殿を訪れ、食事既定のコーシャを守り、大祭日を祝って、ユダヤ教の習慣を続けている。



人が自分をだます理由:自己欺瞞の進化心理学

人が自分をだます理由:自己欺瞞の進化心理学

  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2019/02/27
  • メディア: 単行本



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『サブカル勃興史 すべては1970年代に始まった』 [☆☆]

・子供の頃のテレビの話は、同学年以外とは、「話が通じない」ことが多い。10歳前後までの幼少年期の2歳の年齢差は「世代が違う」。見ているものは同じでも、感じ方は異なる。

・「変身もの」「石ノ森ヒーロー」「東映ヒーロー」については、傍観者でしかない。ただ、「傍観」であって「無視」していたわけではない。

・この頃は雑誌連載の作品がほぼすべて自動的に同じ版元でコミックス化されることはなかった。つまり、「雑誌は赤字でも単行本で利益を出す」というビジネスモデルはまだ存在せず、雑誌だけで利益を出していたのだ。

・別の番組にするのではなく、コンセプトを維持しつつ新たなキャラクターを生み出すという発想をしたことで、「仮面ライダー」はシリーズ化に成功し、長寿化できたのだ。

・教員を徹底的にからかい、どうしようもない人間として描いた「ハレンチ学園」は、教員たちの逆鱗に触れた。このマンガが学校と教員の本性を暴き、からかったことが、気に入らなかったのだ。

・編集部は、人気作家の連載を取るには「描きたいものを描いてくれ」と頼むのが一番効果的だと知っていたのだろう。好きなように描かせた結果、ひとりよがりの作品となり、人気が出ないケースもあるが、大化けする可能性があった。

・なんと、人気絶頂のテレビアニメ「マジンガーZ」を打ち切るというのだ。超合金マジンガーZの売れ行きが鈍ったので、新しい番組にして、新しいロボットを考えてくれという。

・彼女たちの作風も、ストーリーも画もさまざまで、共通するものは、「それまでと違う」という点くらいだ。

・通俗だから多くの読者を得ているのだが、評論家やマニアは、「面白いもの」を蔑視する傾向があり、24年組を高く評価したい時、池田理代子は除外する。

・「アトム」が描く未来と、「ヤマト」が描く未来とは、雰囲気が異なっていた。明と暗の違いというより、空想的か科学的かという違いだろうか。

・テレビでは5パーセントでは失敗だが、1億人に対する5パーセントの500万人が映画館へ詰めかければ、空前の大ヒットとなる。どちらに向けて作るかだ。

・複数の企業、大勢の人間が関わるプロジェクトには、関係者の証言の食い違いはつきものだ。

・アニメに限らず、どんな映画でも同じで、第一作がヒットしてから、第二弾、第三弾が実現する。大ヒットすれば、監督が作りたくなくても、映画会社から作ってくれとの依頼がくる。

・1980年代はビデオがあるだけで、それも1本2万円前後と高価だった。ノベライズやコミカライズが必要とされたのは、安価に映画の物語を再確認するためだった。



サブカル勃興史 すべては1970年代に始まった (角川新書)

サブカル勃興史 すべては1970年代に始まった (角川新書)

  • 作者: 中川 右介
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2018/11/10
  • メディア: Kindle版



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『超AI時代の生存戦略』 [☆☆]

・日常にもたらされる奇跡とブラックボックス化の断絶が今後ますます、様々な社会変化をもたらすだろう。

・明文化することのできない不安から、明文化し不安のみを抽出することによって、そして、その技術革新による明るい展望を明文化しないことによって、メディアは不安を扇動的に切り出してきた。

・一人ひとりが責任感を感じられるレベルは、だいたい30人くらいが限度だと言われている。

・Uberの運転手は責任と戦略を委譲した上で、ゲーム感覚で人を乗せていくことによって、そのゲームにされた作業をするとお金が貰えるという状態なわけだ。

・自分にとっての報酬が何かを考えないと、継続性が生まれないし、モチベーションが起きない。

・射幸心とは別に、ひたすら積み上げていくのを眺めることに喜びを見出す人もいる。貯金が好きな人もそうであるし、コレクションが好きな人もそうかもしれない。

・インターネット時代には、「何に使えて、どういうものである」ということがもっと明確になり、技術側もそこに特化して尖っていれば、それは必然的にマーケティングも兼ねている。

・ひと昔前は、会社の寿命は長かった。なぜなら、技術革新が遅いスピードで進化していたからだ。イノベーションはそう簡単には起こらないし、情報の伝達形式もマスメディアが担っていたから遅かった。

・会社の寿命やビジネスモデルの寿命、メディアの寿命がすべて長かったので、40年もの生涯雇用が可能だった。

・ニッチを攻めるならハードウェア、最大公約数を埋めるならソフトウェア、という状態になっている。

・人間相手に発注する時は、モチベーションと結果と抽象化がすごく重要だけど、機械に発注する時は、具体的な指示が大事になる。

・あらゆるものを、「ググればわかる」というレベルの状態で頭の中に保持しておく知識の付け方がすごく重要だ。そのためには、「一度は自分で解いたことがある」という状態がベスト。

・ジャガイモを「貧者のパン」と呼んだ論があったが、現実を自由に振る舞うことのできない人々にとっての現実が有史以来ずっと存在していたのだ。

・共同幻想を失った私たちは共同幻想が回帰しうる10万人程度の世界を7万個作り出し、70億人を分割することで暮らしていくのではないだろうか。

・このポスト真実、虚構と現実の混濁した時代では、人はSNSを通じて、貧者のVR=「あってほしいそれっぽい現実」を生きている。



超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト

超AI時代の生存戦略 ―― シンギュラリティ<2040年代>に備える34のリスト

  • 作者: 落合 陽一
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2017/03/18
  • メディア: 単行本



タグ:落合陽一
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