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『ケーキの切れない非行少年たち』 [☆☆]

・更生のためには、自分のやった非行としっかりと向き合うこと、被害者のことも考えて内省すること、自己洞察などが必要ですが、そもそもその力がないのです。つまり、「反省以前の問題」なのです。これでは被害者も浮かばれません。

・「後先のことを考える」力は計画力であり、専門用語で「実行機能」と呼ばれています。ここが弱いと、何でも思いつきで行動しているかのような状態になります。

・見えないものを想像する力の中で大切なものに「時間の概念」があります。時間の概念が弱い子供は「昨日」「今日」「明日」の3日間くらいの世界で生きています。

・努力しないと「他人の努力が理解できない」。

・対人トラブルのもとになるのが、「馬鹿にされた」と「自分の思い通りにならない」といったものです。これらはさらに、それぞれの個人の思考パターンによって怒りの程度が異なってきます。

・昔に比べ、自然界に働きかけて生計をたてる第1次産業や、職人仕事のような第2次産業は激減し、人間関係が苦手だからといって人間関係に重きを置かない職業を選んではいられなくなりました。つまり、対人スキルに問題があると、仕事を選ぶ上でも不利になるのです。

・現在、一般に流通している「知的障害はIQが70未満」という定義は、実は1970年代以降のものです、1950年代の一時期、「知的障害はIQ85未満とする」とされたことがありました。IQ70~84は、現在では「境界知能」といわれている範囲にあたります。

・「知的障害はIQ85未満」とすると、知的障害者と判定される人が全体の16%くらいになり、あまりに人数が多過ぎる、支援現場の実態に合わない、など様々な理由から、「IQ85未満」から「IQ70未満」に下げられた経緯があります。

・こうやってこうやったらこうなる、といった論理的思考は、「思索の深さ」とも呼ばれています。何ステップ先まで読めるかを予想する力といってもいいでしょう。

・この世の中で普通に生活していく上で、IQが100ないとなかなかしんどいと言われています。

・違いが出るのは、何か困ったことが生じた場合なのです。いつもやっていることならいいのですが、いつもと違ったことや初めての場面に遭遇すると、どう対応していいか分からず思考が固まってしまうことがあります。

・育児は予期できないことの繰り返しです。そこで、もし親に知的なハンディがあれば、パニックを起こす、赤ちゃんが嫌がっていても同じ方法を繰り返す、育児放棄して逃げてしまう、などの行動に出る可能性があるのです。

・少年院の非行少年の中にもいました。少年院で教官の先生から注意や指導を受けると、「僕は褒められて伸びるタイプなのに」と泣きながら言い訳をしたりする少年が。きっと親からそう言われてきたのでしょうが、その結果が少年院です。

・「褒める」「話を聞いてあげる」は、その場を繕うのにはいいのですが、長い目でみた場合、根本的解決ではないので逆に子供の問題を先送りにしているだけになってしまいます。例えば、勉強ができないことで自信をなくしイライラしている子供に対して、「走るのは速いよ」と褒めたり、「勉強できなくてイライラしていたんだね」と話を聞いてあげたりしても、勉強ができない事実は変わらないのです。

・問題なのは自尊感情が低いことではなく、自尊感情が実情と乖離していることにあります。

・漢字が覚えられないというのは、形を認知する力が育っていないからなのです。

・認知行動療法は、考え方を変えることによって不適切な行動を適切な行動に変えていく方法ですが、「考え方」を変える以上、ある程度の「考える力」があることが当然の前提になっています。

・子供の心に扉があるとすれば、その取手は内側にしかついていない。

・いくらWISC検査で判明したからといって、学校の先生に「ワーキングメモリが低いことが原因でした」と伝えたところで、一体何ができるでしょうか?

・コグトレ(認知機能強化トレーニング)は、認知機能を構成する5つの要素(記憶、言語理解、注意、知覚、推論・判断)に対応する、「覚える」「数える」「写す」「見つける」「想像する」の5つのトレーニングからなっています。

・現在、刑務所にいる受刑者を一人養うのに、施設運営費や人件費を含め年間約300万円かかるという試算があります。もしその受刑者の中の一人でも健全な納税者に変えられたら、大きな経済効果があります。

・大雑把に計算して一人当たり年間100万円程度は何らかの形で税金を納めていますので一人の受刑者を納税者に変えればおよそ400万円の経済効果になります。



ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書)

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  • 作者: 宮口 幸治
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/07/12
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