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『どうせ死ぬから言わせてもらおう』 [☆☆]

・多くの人に知られているということは、必ずしもリスペクトされているとは限らないにしても、承認欲求は十分に満たされる。

・学者が心血を注いで売れない本を執筆するのは、まだ見ぬ自分の知的後継者に向けて書いているのである。知的後継者が現れるとは限らないけれどね。

・ヒトの脳を操作して組織に忠誠を誓わせるための装置で最も一般的なのは式と歌である。

・権力者が国家のためと言い出したら、彼(彼女)の頭の中の国家とは、自分のことだと思った方がいい。ルイ14世ではないが、「朕は国家なり」というわけである。

・小さい時から、「みんな仲良く平等に」というアホな教育を受けてきたので、酷いシステムを変えることに情熱を傾けるより、酷いシステムでもみんなで一緒に耐えた方が精神的に楽であるといった心情の人が多いのかもしれない。

・日本が経済大国であった時には、わざわざ「日本すごい」などと言う必要はなかった。権力者やそのフォロワーたちが「日本すごい」と言いはじめたということは、もはや日本がすごくない何よりの証拠なのだ。

・タバコがバッシングされたのは、喫煙者がマイノリティに転落したからである。飲酒がバッシングされないのは、酒飲みはマジョリティだからである。酒飲みがマイノリティになった途端、世論は酒飲みに厳しくなるだろうね。

・プラトン的に言えば、イヌという生き物(もっと一般的に言えば、イヌと呼ばれるもの)は「イヌ」という同一性を孕むゆえにイヌと呼ばれるのだということになる。プラトンはこの同一性をイデアと呼んだ。

・一度決めた以上、わき目も振らずに頑張ることを善とする感性が、破壊への道だということは、太平洋戦争の敗北を見れば、分かりそうなものだけれども、歴史に学ばない人たちは、同じ過ちを繰り返す。

・普通の風邪であるヒトコロナウイルスに感染した人のメモリーT細胞は、交叉反応を起こして新型コロナ風邪を引いた人はCOVID-19に罹らない、あるいは罹っても重症化しないと推測することができる。重症化する人としない人の違いは案外こんなところにあるのかもしれない。

・貧しさとは経済だけのことではなく、アホな対策を進める為政者と、それを指をくわえて眺めている多くの国民の政治的、科学的なリテラシーの悲しいほどの貧しさだ。

・政府や官僚が、間違いだと分かっても改めないことを「無謬性の原則」と呼ぶ。ある政策を成功させる責任を負ったものは、その政策が失敗したときのことを考えたり議論したりしてはいけないという原則である。

・考えようによっては、もともと病院に行かなくてもいい人が来なくなっただけで、正常に戻ったとも言えるわけで、今までが過剰診療だったのである。

・人為的地球温暖化を推進しているのは、エコという正義の御旗を梃子にCO2削減のためのさまざまなシステムを構築して金もうけを企んでいる巨大企業とそれを後押しする政治権力で、反対しているのは何の利権もなく、データに立脚して物事を考える科学者なのだ。

・科学的妥当性は政治と違って多数決では決まらないので、専門家の多くが支持している仮説が正しいとは限らない。しかし、不幸なことに気候変動を予測する研究は科学というよりも、ほとんど政治になってしまった。

・脳細胞の50~60パーセントは脂質でそのうち三分の一はアラキドン酸やドコサヘキサエン酸といった多価不飽和脂肪酸で、これは植物にはあまり含有されておらず、肉や魚に多く含まれているため、脳の構造と機能維持には動物食は欠かせないのである。そのことを思えば、ベジタリアンはおそらく長生きしない。

・間違ったことをしている人にそのことを分からせようと思えば、正しいことをしなさい。だがその人に分からせようと思わなくて良い。人は、自分の目で見たものを信じる。見せてあげることだ。

・キリスト教国では火葬は一般的ではない。土葬にしないと最後の審判の際に生まれ変われない、と信じている人が多いので、火葬は人気がないのである。



どうせ死ぬから言わせてもらおう (角川新書)

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