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『世界が動いた「決断」の物語』 [☆☆]

・難しい状況が発生するとき、それが難しい理由はおもに、検討するときに賛成と反対の理由が同時に頭に浮かばないことにあります。さまざまな目的や気持ちが代わる代わる優勢になって、確信のなさに迷ってしまうのです。

・「決定者」に必要なのは、意思決定の才能ではない。必要なのはルーティンや習慣なのだ。それは問題と向き合い、他にはない特性を探り、選択肢を比較検討するための、明確な一連の手順である。

・議題について討論する前に、出席者全員に前もって自分の意見を簡単にまとめて提出してもらうことだ。こうしておけば、グループ内の知識や意見の多様性を活かすことができる。通常の自由討論では、最初に発言する人や強く主張する人の意見に重みがかかりすぎ、後から発言する人は追随することになりやすい。

・集団はメンバーの間に散らばる形で様々な情報を豊富に有していることが多いが、メンバーが実際に直接集まると共有されている情報ばかり注目する傾向がある。

・集団がうまく機能するためには、認知の周辺にいる人々を活かさなくてはならない。こうした人々が重要であるにもかかわらず、ほとんどの集団では認知の中心にいる人々が議論の行方や結論に過大な影響を及ぼす。

・能力の低い人は自分のスキルを過大評価する傾向がある。最も誤りやすい道は、えてして自分が正しいと確信することである。

・地下室火災の寓話が教えてくれているのは、自分の盲点を知っておくこと、自分が理解していない状況の要素を認めることがいかに重要か、である。

・隊長の長年にわたる消火活動の経験は、彼が地下室火災の隠された真実に気づくよう導いてはいない。彼は自分が何かを見落としていると認識できただけである。そしてその認識だけでも、彼は状況をもっとよく把握するまで建物がら撤退せざるをえなかった。

・選択肢をひとつしか検討しない被験者が最終的に50パーセントの確率で自分の決定を失敗だと判断しているのに対し、2個以上の選択肢が検討された決定は3分の2の確率で成功と感じられていることを明らかにした。

・もし自分が「やるか否か」問題のマッピングをしていると気づいたら、必ずと言っていいほど利用可能な道が見えてくる「どれにするか」問題に置き換える方がいい。

・道Aが自分たちに利用できる唯一のルートだと組織が決めてかかっているようなら、道Aが封鎖されている世界を想像しよう、その場合はどうする?

・人類にふさわしい名前はホモ・プロスペクトゥス(見通すヒト)だろう。なぜなら、私たちは先の見通しを考えることによって繁栄しているからだ。

・私たちは常に近い将来の出来事について予測していて、その予測が人生における選択を導いている。その予見の才能がなければ、私たちは根本的に異なる種になってしまうだろう。

・例外なく制限速度を時速40キロに設定すれば毎年何千人の命が救われることは確かだが、私たちは社会として、制限速度を上げることで得られる運輸や商業の便益が交通事故死亡者という費用に「見合う」と決定したのだ。

・人類史の大半にわたって、大虐殺を抑えていたのは知性や道徳心による歯止めより、テクノロジーの限界だったのだ。

・その生態的地位を私たちが占めているのは、けっしてそこに最適に適応しているからではなく、最初に到達したからである。

・SF小説は1世紀以上にわたって人工知能の落とし穴について思いを巡らせてきたが、問題が現実世界の議論や論争に入り込んできたのは、ほんの数年前のことだ。SF小説のおかげで、私たちは問題をより明確に捉えるための予備知識を得られ、テクノロジーによる限定合理性の範囲を見渡すことができた。

・ただひとつ、はっきり言えることは、心を落ちつけて、考えなおせ、ということだった。重大な決断をする時には、どんなアプローチを採用するにせよ、2つの行動がどうしても必須である。それは心を落ちつけ、そして考えなおすことだ。

・どんなアプローチが一番うまくいくように思えるにせよ、ほぼ必ず恩恵をもたらすのは、時間と新しい視点、この二つなのだ。

・選んでいいと言われると、ほとんどの人は教科書より小説を好み、ドキュメンタリー映画より架空の出来事を描いた映画を好む。つまり、はっきり嘘だと示されているコミュニケーションに、大いに興味を抱いているのだ。この現象はありふれているせいで、根本的なそのおかしさに気づかない。

・映画と写真は見る人を視覚的に真に迫った別世界にいざなうことができるし、音楽は人の体と感情を揺さぶる。しかし、他者の心の内側に広がる風景へと引き込む力では小説に匹敵する形式はない。

・「鋭い洞察力と感受性」をもって状況を把握し、「愚鈍さに五官をふさがれて、のん気に歩きまわる」傾向を避ける。

・小説は、他のどんな創作形式より、私たちが実際に自分の決断下す前に人生の難しい選択をシミュレーションし、予行するチャンスを与えてくれる。



世界が動いた決断の物語【新・人類進化史】

世界が動いた決断の物語【新・人類進化史】

  • 作者: スティーブン・ジョンソン
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2019/03/27
  • メディア: 単行本



世界が動いた「決断」の物語 新・人類進化史

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  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2019/03/27
  • メディア: Kindle版



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