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『知ってるつもり無知の科学』 [☆☆]

・私たちは頭の中に、世界についての詳細な情報をごくわずかしか保持しない。こうした意味では、人間はミツバチ、社会はミツバチの巣にたとえることができる。知性は個体の脳の中ではなく、集団的頭脳の中に宿っている。

・思考の目的が行動にあると考える理由は、行動の方が思考より先にあったからだ。最も原始的な生物も、行動はできた。

・他者の存在や、他者が達成しようとしていることを認識し、協力することができる。同じことに関心を持ち、目標を共有する。認知科学の用語を使えば、私たちは「志向性」を共有する。このような協力形態は他の動物には見られない。

・何かを始めたときの「自分にはわかっている」という自信が、終わったときにはしぼんでいたということがあまりに多い。

・自然界の複雑さに比べれば、人工物の複雑さなどかすんでしまう。

・「説明深度の錯覚」は、大人が物事は複雑であることを忘れ、質問するのをやめてしまったことに起因するのかもしれない。探求をやめる決断をしたことに無自覚であるために、物事の仕組みを実際より深く理解していると錯覚するのだ。

・前向き推論(原因から結果)の方が、後ろ向き推論(結果から原因)よりも簡単だ。

・人間は出来事の因果を理解するために、自然と物語を作る。だから私たちの身の回りには、これほど物語があふれているのだ。

・優れた物語は、単に何が起きたかを描写するだけではない。起きていないこと、少なくともまだ起きていないことにもからめて、世の中がどのような仕組みになっているのかを伝える。

・いつの世も詐欺師が存在するのは、詐欺がうまくいくからだ。私たちはすぐに騙されてしまう。

・情報は世界に保管してあるので、自分ですべてを記憶する必要がない。何かを知る必要があれば、それを見るだけでいい。このページの1行目に何が書かれてあったかを知りたい場合、覚えていなくても構わない。視線を右にずらして1行目を見ればいいだけだ。

・人間の子供は共同作業をしたいがために、一緒に作業をしようとした。一方、チンパンジーには共同作業という概念が理解できなかった。人間を特徴づけるのは、他者とともに何かをし、それに対する関心を共有する能力であり、またその欲求である。人間は協力するようにできているのだ。

・今日の世界で、私たちは驚くほど人づての情報だけを頼りに生きている。自分の身に起きることのうち、直接的な知覚経験を通じて理解することはほんのわずかだ。

・知識の呪縛とは、私たちは自分の頭の中にあることは、他の人の頭の中にもあるはずだと考えがちなことを指す。

・人は集団意識の中で、他者や環境に蓄積された知識に依存しながら生きているので、個人の頭の中にある知識の大部分はきわめて表層的である。そんな表層的知識でも十分生きていけるのは、たいてい他の人は相手にそれ以上を期待しないからだ。

・何が目標かを確実に伝えるのはあなたの責任だ。機械は協力者ではなく、道具だ。ある意味ではAIというツールは、他の人間より電子レンジに近い。

・情報を共有し、有益な道具にもなるテクノロジーは、知識コミュニティの重要な構成要素かもしれない。しかし人間と対等のコミュニティの構成員ではない。人間は羊と協力しないように、機械とも協力しない。使うだけである。

・GPSを信頼するあまり、GPSに指示されたことは何でもする、という人もいる。GPS様の指示に従うことに夢中になって、川に落ちた、崖から落ちたといった例は枚挙にいとまがない。

・専門家は金銭的インセンティブより、自分が正しいと認められることを喜ぶ傾向がある。ウィキペディアの爆発的成長がそれを物語っている。

・私たちはたいてい新たなテクノロジーや科学的発見に対して、自らの力で十分な知識に基づく精緻な見解を形成することはできない。だから信頼できる人々の意見をそっくり受け入れるしかない。

・アメリカ国民のうち、2014年のウクライナに対する軍事介入を最も強く指示したのは、世界地図上でウクライナの位置すら示せない人々であった。

・概して、問題に対する強い意見は、深い理解から生じるわけではない。むしろ理解の欠如から生じていることが多い。

・無知というのは純粋に自分がどれだけ知っているかという話である。一方、愚かさというのは他者との比較である。誰もが無知であれば、誰も愚かではない。



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