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『平等バカ 原則平等に縛られる日本社会の異常を問う』 [☆☆]

・300枚の毛布が届いてもその避難所にいる500人全員に渡せないのなら一切配らないという判断をしたり、せっかく野菜が届いても全員に配れない場合はそのまま配らずに、結果、すべて腐らせて捨ててしまう、といったことが本当に起こっていたそうだ。

・いつなんどきでも「平等だけが大事」と思い込んでいると、「平等な不幸」さえも受け入れるようになってしまう。

・「何がなんでも公平にしておかないとここの住民は許さないだろう」と自治体に思わせてしまう空気の方にも問題はある。

・不正を防ごうとすればするほど手続きは複雑になり、時間も労力もかかるのだが、皮肉なことに実は複雑にするほどややこしくなって抜け道ができやすくなる。

・少子化対策だなんだと国は人口減を食い止めようと必死になっているが、それはできるだけ安い労働力を確保してちょっとでも多く稼ぎたいという旧来型のグローバル・キャピタリズムならではの願望である。

・労働をAIに代替させられる時代になれば、人口が少なくたってなんの問題もない。

・世の中の仕組みの中にはあたかも人がもともと平等であるかのようなフリをして成立しているものが山ほどあり、そのせいでさらなる不平等がもたらされている。

・「ジェンダー」とは社会的・文化的に形づくられる性のことで、生物学的な性である「セックス」とは区別される言葉である。

・脳の視床下部の少し上のところにある分界条床核という領域が大きいと性自認が男となり、小さいと性自認が女になると考えられている。

・男を好きになるか、女を好きになるかという性的指向は前視床下部間質核の大きさと関係があるようで、ここが大きい男性は異性愛者に、小さい男性は同性愛者になると考えられている。

・人間にとって、性に関するカテゴリーは少なくとも3つある。1つめは染色体の組み合わせとしての性、2つめは遺伝子の発現システムの結果としての身体的な性、3つめは心的アイデンティティとしての性である。だから、2×2×2と見積もっても理論上は8通りの組み合わせがあるというわけだ。

・「性同一性障害」などというもっともらしい名前をつけ、障害の一種として扱おうとするのは、「世の中には男と女しかいない」という二分法に社会がとらわれているせいである。

・そもそも計画を立て、そのとおりに実現する夢など夢とは言えないのだ。

・人生を形づくるうえでもっとも重要なのは実は偶然であって、自分の都合のいいように計画を立てたところでたいして役に立たないのである。

・AO入試の実態は、多様性を尊重するフリをした面接官と、利他主義的な夢を持っているフリをした受験生の、美辞麗句を並べただけの茶番だったというのが私の偽らざる印象だ。

・学問の場には本来、選抜する時点では評価不能な異分子こそが必要なのだ。

・同じ言葉や態度でも、誰にでも同じように伝わるとは限らない。相手によって、文脈や状況が異なるのだから当たり前だ。「平等」に怒鳴ったり、「平等」に馴れ馴れしくするというのは、実はかなり危険な行為なのである。

・政治家に対してクソミソに文句を言いながら、平気で選挙を棄権する人がこの国にはたくさんいる。

・人間は加法による変化の探索を体系的にデフォルトとしており、その結果、減法による変更を見落とす。人は状況を改善しようとするときに、現在のルールを廃棄するよりも、新しくルールを付加することを好む傾向がある。

・自分よりもはるかに知的レベルが高い人たちの発言と自分の発言の価値が「平等」だと思っている人が多くて辟易する。発言権は「平等」でも、発言内容の価値は違うのだよ。

・「上から目線だ」と言っている人で、まともなことを言っている人を私はいまだかつて見たことがない。

・構造改革がいかなるものであるかを論理的には理解できないであろう人たちの情緒と感情に訴えて、雰囲気で支持させることに成功した。知的な人を説得するのは大変だが、雰囲気に流される人たちを一律にコントロールすることはたやすい。

・自分の頭で考えることは確かに面倒くさいが、考えることを放棄するのは、人間であることを放棄するに等しい。

・自ら知ろうとしたり、学ぼうとする人ほど得をするのは、この世の常だ。混乱をきたした高齢者のワクチン接種のときだって、パソコンスキルを身につけていた人の方が明らかに得だったと思う。



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