SSブログ

『人類の未来 AI、経済、民主主義』 [☆☆]

・「レス・イズ・モア(少ない方がより豊か)」というデザイン界のドグマに挑戦し、「イエス・イズ・モア(すべてを受け入れる方がより豊か)」の精神で急成長を続ける。

・アサド政権は、シーア派の分派ではあるけれども宗教色の比較的薄いアラウィ―派という少数派が占めており、そのことに宗教色の濃いイスラム主義派(スンニ派やシーア派)が反発した。

・ヒトラーがポーランドを侵略した際に使ったのが「自衛」という理由でした。「無謀なポーランドのテロ行為」からドイツを「自衛」するということだった。

・ヘンリー・キッシンジャーは、「一般人は、個人レベルのモラルというものが、国家レベルにも当てはまると考えるけれども、実はそうじゃない。政治家は時として、悪い選択肢しかない中から選ばなければならないこともあるからだ」と言っています。

・もしドイツが罪を犯して、連合国軍側がその罪を犯していなかった場合は、それは犯罪である。しかしドイツが罪を犯して、われわれも同じ罪を犯していたら、それは犯罪にはならない。これがニュルンベルク裁判の論理でした。

・戦争犯罪とは、自分たちが犯さず、相手側が犯した罪のことである。

・世間で騒がれているAIの業績というのは、膨大なデータとコンピュータの高速な計算に頼ったもので、それらは、何を求めるべきかを知っている人間がデザインしたプログラムによって、ガイドされているのです。

・人間の直感は今のところたいてい、1、2、3、4、5、……というふうに、線形の考え方になってしまう。これに対してこれからは、1、2、4、8、……と倍々になっていく指数関数的な見方を、直感的にできるようにすることが大事だという。

・「ゲノム解読プロジェクト」は、1%解読するのに7年かかった。それなら100%解読するには700年かかるというのが線形的な考え方だが、これに対して、指数関数的に解読が進めば、1年目に1%だったものは、2年目に2%、3年目は4%、4年目は8%というふうに、倍々に速度が上がっていくので、あと7年で読み切れると予想したのがカーツワイル氏であり、実際その通りになったのだ。

・動物の移動スピードは一定で、移動スピードが加速し続けるということはなかったから、線形モデルがインプットされたのです。しかもそれが上手く役立ってきた。だからわれわれの将来予測も線形になっていると考えられます。

・基本的には、人生の終盤に出てくる病気に対して、免疫系は役に立ちません。免疫系が発達してくることは、人間が長寿であることにほとんどメリットがなかった。

・これからは、資源が余る時代に移行していく。人々の経済観念は、石油、鉄、食料など、限られた資源をどのように分配するかということに汲々とした時代に形成されています。しかしこれからは、余剰の時代です。

・「知能」をどう定義するかというのは一種哲学的な問題です。私自身は「限られたリソースを使って問題を解決する能力」というように理解しています。限られたリソースの一つは時間です。「短時間で適切な判断ができて問題を解決できる能力」は、「知知能」と言えるでしょう。

・子供たちが言語を早く学習できる理由の一つは、未使用の新皮質がたくさんあって、新知識や新言語を学習する際に、使い放題だからでしょう。

・従来の教育モデルはすでに破たんしています。非常に長い時間を使って、情報を子供たちの脳に詰め込むのがこれまでの教育でしたが、もうそれは完全に時代遅れです。われわれはすでに、情報を常に携帯していることができるのですから。

・子供だけでなく大人にも教育しなければならないのは、入手できる情報を駆使してどのように問題を解決するかという、問題解決能力です。

・計算機導入によって、子供たちの紙の上での計算能力はぐっと落ちました。そして子供たちは。紙と鉛筆を使って計算を早く正確に行なうために振り分けていた能力を、これらの演算機能をさらにどのような問題解決に応用できるだろうか、という方向に使うことが可能になったのです。

・新聞と現代の著作しか読まない人は、分厚い眼鏡をかけた強度の近眼のように見える。自分が生きている時代の偏見や流行に完全に埋没していて、それ以外はまったく目に入らない。

・「世界経済の政治的三すくみ(Political Trilemma)」という概念を提案していました。一つ目はグローバリゼーション、二つ目は主権国家、三つめは民主主義で、三つとも同時に成立することは不可能だと。

・世界全体を見てみれば、グローバリゼーションなしに、過去30-40年にわたるアジアの経済ミラクルはありえなかったでしょうし、その結果、中国をはじめとして、非常にたくさんの人々が貧困から脱出することになりました。

・金融はリスクを負うことが仕事だから、金融危機は避けられない。

・金融部門というものは、リスクを負うことが仕事になっているのです。本質的には不確定な将来について決断をする、ということが金融の仕事なわけで、うまくいかないことも当然あります。

・日本企業の内部留保の割合は、GDPのおよそ8-10%ということですから、これは世界でも最大級の余剰金になります。ですから日本政府の課題は、いかにしてこの巨大な余剰金を取り出すかということです。

・経済に対して無政府主義的なイリュージョンを抱く人たちがいますが、そういう人たちはたいてい強い国に住んでいて、その恩恵に浴しているということを自覚していない。コンゴ民主共和国のように政府が機能していないところに行ってみれば、経済そのものが成り立たないことがわかると思います。

・古代ギリシャに有名なキャッチフレーズがあります。ギリシャ語でミーデン・アガン(meden agan:出るポイのアポロ神殿に刻まれていた言葉)、「過剰にならぬよう」という意味です。

・建築は「アート+サイエンス+エンジニアリング」だ。アートのように人を感動させるものであり、サイエンスのように深い演繹的な思考が要求され、同時にエンジニアリングの仕事のようにきっちりとうまく稼働しなければならない。

・現在の最新テクノロジーを建物のデザインに取り入れれば取り入れるほど、建物が実際に建つ3、4年先にはそれらのテクノロジーは既に古いものになっているでしょう。

・単に一つの条件や要求に対して「イエス」と答えるだけでなく、複数の、しかも対立するような要求に対しても何とかすべて「イエス」と答えようということ。「イエスと言うことでより可能性が広がる」(Yes is more.)ということです。

・メリトクラシー(実力主義)で動いています。独裁ではないし、民主主義でもない。最もメリット(効果)のあるアイデアをわれわれは採用する。

・都市や建物は「住むことのできる風景」であり、人口のエコシステムなんですね。

・マジョリティーに同意するのは知識人にとって時間のムダだ。定義からして、そっちには既に十分な数の人がいるわけだから。

・そもそも世界の「平均気温を測定する」というような、きわめて基本的なことでさえ、十分に正確に測定するのはそう簡単ではない。

・100年前のデータとの比較などが行なわれているけれども、果たして100年前の計測データは、今のものと比較できるくらい正確なものなのだろうか。

・気候科学は宗教の様相を呈してきている。気候変動を信じない者は、いかなる研究もできないようになってきている。

・アメリカやヨーロッパのビッグマネーは、加速器、特にLHCに注入されてきました。これらの加速器には、プログラムされたことしか発見できない。予測していないことは決して発見できないという、非常にリアルな問題があります。

・秘密保持が巨大な官僚機構と化してしまって、ほとんどすべてが機密のハンコを押され、結局すべてが何の役にも立たなくなってしまっています。

・残念ながら学校は、学ぶというよりも、生徒たちの子守をすることや、教室内で彼らを静かにさせることに、あまりにも多くの時間を費やしてしまっています。

・子供というのは残忍です。子供同士で長いこと一緒にさせるのはよくないですね。解決策としては、子供たちをなるべく大人と一緒にいるようにして、大人たちと面白いことを一緒にやるようにする。そうして、子供同士でいじめる機会がないようにするのがいいのではないか。

・いじめ問題の本質は、グループになると、個人をさいなむことに喜びを見出すようになるという点です。しかも大人でも同じことが言える。

・大事なことは、子供をプッシュしすぎないということです。生まれついて自然と知的に早熟であった場合は、大丈夫なケースが多いようです。しかし、親がプッシュしたことで神童になった場合は、非常に有害になるようです。

・われわれにとって最も不自然な行為である「よく考えること」や、「しっかりとした証拠を基に行動を検証していくこと」が大事だという。理性的であるべきだが、理想主義的であってはならない。

・先の見えない不確実社会では感情に訴えるようなシンプルなストーリーは、おそらくすべてプロパガンダであると疑って、とにかくファクト・チェックを重ねて、熱狂を避けることが、個人にできる防衛策なのかもしれない。



人類の未来―AI、経済、民主主義 (NHK出版新書 513)

人類の未来―AI、経済、民主主義 (NHK出版新書 513)

  • 作者: ノーム・チョムスキー
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2017/04/11
  • メディア: 新書



人類の未来 AI、経済、民主主義 (NHK出版新書)

人類の未来 AI、経済、民主主義 (NHK出版新書)

  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2017/04/11
  • メディア: Kindle版



nice!(0) 
共通テーマ: