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『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』 [☆☆]

・遊牧民の場合、主食は自分たちで作れない。肉は主食にならないですから。定住する農耕民がいてこそ遊牧民の生活は成り立つ。

・山の中で鉄器は製造できないし、斧や鉈を持っていないと山奥では暮らせない。

・前近代の東南アジア大陸部では、権力の支配が及ぶのは徒歩五日で行ける圏内だった。

・中国には「穀物は千里(415キロメートル)を越えて売りに行くべからず」という古いことわざもあると書かれていましたね。需要があるからといって、千里以上離れた遠方に物を持っていって売っても、コストがかかりすぎて、儲けが出ないということなんでしょうね。

・日本には、お祭りのときに神輿を出す地域と山車を出す地域があって、基本的に神輿を出すのは山間部の農村で、山車を出すのは平野部の都会なんだと教わったことがあります。山車って車輪で動かしますから、山間部では出せない。

・日常的なものほど流通範囲が狭くて、非日常的なものほど交易の距離が長くなるんだなあってことですね。日常的な産品であるコメなんかは地域経済圏で消費されちゃうけど、北方の産物であるラッコの毛皮みたいな珍しいものはどこまでも運ばれていきますよね。

・日の本て日本のことを表わしてもいるんだけど、元来は「東の果て」という意味なんですよね。「日の出てくる方角」という意味ですから。

・戦国大名もね、二カ国ぐらいを取ると、そこから一気に大きくなるんですよ。周囲がみんな「長いものには巻かれろ」になるから。

・中国から律令国家の仕組みをそのまま輸入してきたわけだから、天命によって王朝が代わる易姓革命の考え方だって併せて輸入してもおかしくないのに、日本ではそれはないことにしている。

・戦争映画なんかで、反戦というメッセージを打ち出そうとしていても、どちらかが「いい者」で、どちらかが「悪者」という構図で描いてしまうと、見ている側はついつい「いい者」に感情移入しちゃうじゃないですか。そうすると、反戦と言いながら、見る人の好戦的な感情をかき立てるところがありますよね。

・これ、ピカレスクロマン(悪漢小説)ですよね。何しろ、正義が存在しないじゃないですか。善か悪ではなくて、強いか弱いかしかない。

・農耕民は汗水流して稲を育て、商売人は銭を稼ぐために精を出す。堅気は生活第一なんです。でも、ヤクザと武士は「男らしさ」のために生きる。

・懈怠(けたい)と懶惰(らんだ)は、強いて訳せばどちらも「怠ける」という意味ですけど、中世では、懈怠は「今日やることを明日やること」、懶惰は「明日やることを今日やること」だったんですって。

・文語体は自由度が少ないという制約があるけど、その制約のおかげで文章が締まるんですよね。



辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦

  • 作者: 高野 秀行
  • 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
  • 発売日: 2018/04/05
  • メディア: 単行本



辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦 (集英社インターナショナル)

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  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2018/04/10
  • メディア: Kindle版



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