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『魂に息づく科学 ドーキンスの反ポピュリズム宣言』 [☆☆]

・利己的な自己複製する分子の命令に打ち勝ち、自分自身と世界をコントロールし、未来を想像してそれに影響を及ぼす力を、人間だけが持っている。

・遺伝子組み換え作物のあり得るリスクに対して寄せられるヒステリックな抵抗にはひとつ、心配な面があります。それは、すでによく理解されているのにほとんど無視されている、決定的な危険から人の注意をそらしてしまうことです。

・「である」を「であるべき」や「であってほしい」と混同してもしかたがない。

・「中絶反対論者」は、生命は計り知れないほど大切だと疑いもせず主張しながら、陽気に大きなステーキにかぶりつきます。そういう人々が「大切に」する「命」が、人間の命であることは明白です。

・ダーウィン主義の基本的論理はこうです。誰にでも祖先はいるが、誰にでも子孫がいるわけではない。私たちはみな、祖先になれない遺伝子を犠牲にして、祖先になるための遺伝子を受け継いでいます。

・車軸、ブレーキ、ピストン──すべてが故障しがちだった。しかしひとつだけ顕著な例外が注目された。スクラップされた車のキングピンはきまって、何年も寿命が残っていたのだ。フォードは冷静な論理で、モデルTのキングピンは役割の割に質が高すぎると結論づけ、将来的にもっと低い仕様に合わせて作るべきだと命じた。

・機械でも動物でも、理想はすべてのパーツが同時に摩耗することです。他のパーツが摩耗した後も、きまって何年も寿命が残っているパーツがひとつあたら、それは無駄に頑丈なのです。それを強くすることに使われた材料は、他のパーツに転用されるべきです。

・私たちは高いところや鋭い先端を怖がるように遺伝子にプログラムされているが、高速で車を走らせるのを怖がることは学ぶ必要がある(そしてあまり得意でない)。

・あなたは明らかに何か現代の源、今どきの自由主義的な総意か何かから、価値観を得ているのです。そうでなければどんな基準で、聖書の良い部分を選びながら、たとえば申命記の処女でない非情な花嫁にはっきりと死を命じるくだりを否定するのでしょう?

・デイヴィッド・キャメロンは国の、ヨーロッパの、さらには世界の長期的未来を、ロシアン・ルーレットで決めることにした。

・科学はすごく楽しいことを示すために、おかしな帽子とふざけた声の奇抜な「パーソナリティー」が、爆発を起こしたり変な奇術をしたりします。

・私が心配しているのは、科学を愉快でやさしいものとして宣伝することで、将来的なトラブルをため込むことです。軍隊の新兵募集広告がピクニックを約束しないのは、同じ理由からです。

・本物の科学は難しいかもしれませんが、古典文学やバイオリンの演奏のように、苦労する価値があります。

・文学や報道の世界には、科学への無知や無理解を誇らしげに、はては嬉しそうに自慢する人たちがいます。

・クラークの第三法則は、逆は真ではありません。「十分に進歩したテクノロジーは魔法と区別がつかない」としても、「いつであれ誰かが魔法だと主張するものは、将来いつか実現するテクノロジーの進歩と区別がつかない」ということにはなりません。

・中絶反対論者は、中絶をする医師に「殺人だ!」と叫び、家に帰ってステーキの夕食を口にする。ドリトル先生を読んで育った子供は、このダブルスタンダードを見逃すことはできない。聖書ばかり読んで育った子供には、間違いなくそれができる。

・最近の世論調査によると、アメリカ市民の約45パーセントがいまも、神が人間を「過去1万年の間のいつか、ほぼ現在の形で」つくったのだと信じている。

・運よく、私たちにはちょうどいいものがある。数世紀にもわたって磨かれ、何世代も受け継がれてきた、既存のマインドコントロールシステムだ。大勢の人々がその中で育てられている。それは宗教と呼ばれ、理由はいまのところよくわかっていないが、ほとんどの人が引っかかっている。

・科学はなぜ津波が起こったのかを知っているだけでなく、貴重な警告の時間も人々に与えられる。教会やモスクやシナゴーグに認められている税控除のほんの少しでも、早期警戒システムに回されていたら、亡くなった何万人もの人たちが無事に避難できただろう。

・プラセボ効果については十分に実証されています。薬理学的な効果がまったくない偽薬が、はっきりと健康を改善するのです。ホメオパシー治療薬が効くように見える理由もそこにあります。とても薄く希釈するので、有効成分はプラセボ対象と同じ量しか入っていません──分子ゼロです。

・蛾の焼身自殺行動が有益な光の方位磁石の副作用であるのと同様、宗教行動は子供の従順さの副作用なのだ。

・コリン・パウエルとバラク・オバマは黒人と言われている。彼らはたしかに黒人の祖先がいるが、白人の祖先もいる。それならなぜ私たちは彼らを白人と呼ばないのだろうか? 「黒人」という表現が遺伝学でいう優性の文化版として働くのは、おかしな習慣である。

・映画に関していうと、国によって吹き替えと字幕に分かれる。ドイツとスペインとイタリアは吹き替え文化である。その理由は、無声映画からトーキーへの移行が、国の言語を浸透させたがる専制政権下で起こったことにあるといわれている。それに対して北欧とオランダは字幕を使う。

・物事が上手くいけば、神は感謝される。上手くいかないときは、もっと悪くなっていないことを感謝される。

・マザー・テレサは貧しい人の友ではなかった。彼女は貧困の友だった。



魂に息づく科学:ドーキンスの反ポピュリズム宣言

魂に息づく科学:ドーキンスの反ポピュリズム宣言

  • 作者: リチャード・ ドーキンス
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/10/18
  • メディア: 単行本



魂に息づく科学 ドーキンスの反ポピュリズム宣言 (早川書房)

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  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/10/25
  • メディア: Kindle版



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