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『戦争請負会社』 [☆☆☆]

・政府の活動は、情報公開法のような法律の下に国民に公開されるが、会社の契約は所有権法の下に保護されており、しばしばその活動を完全に否定できる。

・民営軍事請負企業(PMF=Privatized Military Firm)。

・政府の絶対的支配を外し、これを民営化して市場に任せることによって、国家の暴力独占は破れる。

・安全保障領域における国家の役割は特権を剥ぎ取られてきている。

・多くの人々は会社を民間軍事会社 Private Military Companies すなわちPMCと呼ぶが、人々が取り上げているのはこの企業体の中のある一つの部門だけである。PMFつまり Privatized Military Firmという言葉は、民営化された軍事業務という現象全体をとらえるのであり、単に戦術的戦闘を行う企業をのみ指しているのではない。

・戦闘では決して負けなかったが、最終的に、カルタゴは物量の劣勢を克服できなかった。ローマがスペインにあったカルタゴの銀鉱山を奪ったときにカルタゴの敗戦は決定的になった。都市国家のカルタゴには、もはや大規模の傭兵軍団を維持する金がなかった。

・ローマ帝国の崩壊以後、西ヨーロッパは暗黒時代に沈んだ。金銭を基盤にした経済は完全に衰微した。

・人間主義的に訓練された君主たちは、たとえばマキアベリがそうだったように、ローマ共和制に幻惑されていた。

・プロシアは軍隊のある国家ではなく、国家つき軍隊である。

・多くの者は過去の時代の鋳型にはまった大言壮語する冒険家で、その関心は長期的な結果よりも冒険家としてのライフスタイルの方にある。

・量より質が大事なとき、傭兵の活動と重要性は通例より大きく、その主たる理由は、熟練した専門家はろくな訓練も受けていない者や国民兵より優れているからである。量が何より大事な大戦争の場合などでは、そこそこ有能な徴募兵が得られるなら、傭兵の役割は割引される。

・除隊あるいは敗北した将校たちの動きによって戦争の流れを詳細に分析できる。これは、ペロポネソス戦争の終わりと、その後に地中海世界の別の場所で続いた戦争の続発といった過去にまでさかのぼることができるものだ。

・最高の頭脳は政府にはない。あるとすれば、実業界がそれを盗んでいくだろう。

・除け者にされた人々は非合法経済や、組織犯罪、武装紛争などの巨大な予備軍である。

・冷戦の終結は、紛争に対する抑制機能を取り去ってしまったのだ。その一方で、未解決の緊張と新たな圧力を解き放ってしまった。

・依頼者に対する企業の付加価値の大半はその従業員だということである。ハードウェアならほとんどどんなところからでも買えるが、適切な専門知識は得がたい。

・PMFの構造的な利点は、依頼者が機能を一つ外注化したり、民営化したりするたびに、依頼者側の依存度が高まることである。依頼者は専門知識や能力を失い、PMFを頼りにするようになる。

・左翼ゲリラや、麻薬テロリストや、軍隊紛いの手合いを撃退するための安全保障費は多国籍企業の総予算の6パーセントを占めている。

・アルファ部隊は、スペツナズ(特殊空挺部隊)の中のスペツナズとして知られ、その隊員のソ連の他の精鋭部隊の優秀者から選ばれた。

・軍事史の夜明け以来、兵站能力が軍事活動の規模、範囲、速度、効果などを支配してきた。兵站能力は敵の攻撃を凌ぎつつ、活動するよう設計されなければならない。すなわち、平和時の効率のよさより戦闘時の有効性を目的に設計されなければならない。

・軍事行動の全過程で、敵に関する知識を得る一方、こちらのことは知らせないという仕事は、軍事的成功には決定的に重要である。

・アメリカの南北戦争の際、ピンカートン探偵事務所は、北軍側の主たる情報組織だった。つまり、北軍が自らのスパイ部隊を作らなければならないほど重要な分野と考えるようになるまでは、情報は探偵事務所が担当する仕事だったのである。

・同社は低強度紛争に、長年の経験から引き出した独自の知識を持っていた。それは、そのような戦争では前線という概念は意味がないことを認識して、敵がどこにいようとも常に平静を失わせることを狙うというものであった。

・燃料気化爆弾というのは、爆発すると巨大な火の玉となって酸素を吸い尽くし、直径1.6キロ以内のすべての生き物を殺してしまう爆弾で、最近では、アフガニスタンでタリバンの洞窟陣地に使われて有名になった。

・新しい物事に遅れないようについていくことだ。さもないと知らないうちに自分が古ぼけてしまう。

・やさしいことなら誰だってできる。いつも先頭を切って行きたいなら、難しいことを選べ。

・選挙戦の最中、チェイニーはクリントン政府を批判し、バルカン半島に米国兵士を送るのは深入りのし過ぎだと批判した。まさにこの米国の兵士展開の急な大波のために、ペンタゴンがハリバートン社のような民間企業へ依存度を増大させたのであった。このことこそ、ハリバートン社の財務を強力なものにした理由であり、それに対する当然の報酬もチェイニーは受け取っていた。

・企業というものは、官庁にいくら請求するかを見積もる際に、本来の経費ではなく、いくらで見積もれば信じさせることができるかを考えることが多い。

・ビアフラ戦争では、ナイジェリアが雇った空軍はビアフラの一つしかない空港を爆撃できなかった。彼らの月給が戦闘実績に対してではなく、勤務した月単位で支払われていたからだ。

・サウジアラビアはたくさんのPMFを雇い、計画策定や訓練から兵器類の整備補修にいたる一切のことをさせている。こうした請負契約のおかげで、この王国は高度に機械化された軍隊を出勤させることができる。

・現在の国連平和維持システムには深刻な欠陥があり、加盟国が意欲に欠けるためしばしば軍隊が揃わない。

・人道的援助を与える仕事はますます危険になっている。世界の事実上あらゆる場所で、貧しい人々への援助活動に従事している人々が、強盗に遭い、ぶちのめされ、強姦され、誘拐されて殺されている。事実、1990年代に殺された赤十字の従業員数は米国陸軍の死者より多かった。

・韓国のような大きな先進国が全軍のわずか1パーセントにも満たない軍人によるクーデターの成功を経験している。

・天意と機会の正しい組み合わせがあれば、クーデターの成功には最小限の支持者しか必要としない。支持者が然るべき位置に配置されているだけで十分なのだ。

・もしある作戦が、大衆や議会の支持が得られず適切な数の兵員を揃えることができないため、民間の援助がなくては展開できないというなら、おそらく作戦をする元々の理由をさらに議論すべきだ。

・民主主義政府とは結果責任を持つ、つまり、説明責任を持つ政府である。そして請負に出すことの本質的問題は、結果責任と説明責任がともにひどく小さくなることだ。

・民間会社は原則としてよいことをするより、うまくやることに関心がある。

・燃料気化爆弾。FAEと略称される。液体燃料を充填した爆弾で、これを投下して破裂させると、周囲の空気と混合された時点で自動的に強烈な爆発燃焼が発生し、付近一帯の空気を消費し尽くして真空状態にする。

・問題は、働き先を国家だけに限れば、PMFは現状維持の代理人となり、一方では、より正当な抵抗運動を抑圧したり、交渉で紛争を解決する機会を妨げ、権力を保持する金のある政権だけを助けることになってしまうことだ。

・率直に言って、俺は政府が戦争からすっぱり足を洗ってすべての争いを民間業者に任せたらいいと思っている。

・役立つかぎり、学者は他の分野からの方法論や発見を統合する意欲を持つべきだ。

・とりわけ国連には、言っていることとやっていることが違うというこうした偽善的二重性がある。

・地球上の世界が今どんなふうになっているかということに、平均的日本人はほとんど関心がない。知る必要があるとも思っていない。しかし、そうした態度は、他国の人々の目には、しばしば驕りと映る。そのことをわれわれは知らない。

・われわれは今のように無知のままではいられない。戦争に顔をそむけるだけで平和は得られない。米国に追随するにしろ、しないにしろ、われわれの選択は日本人のみならず、世界の人々の運命に影響を及ぼす。



戦争請負会社

戦争請負会社

  • 作者: P.W. シンガー
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2004/12
  • メディア: 単行本



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