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『ヒトは環境を壊す動物である』 [☆☆]

・「ニッチ」というのはもともと「壁龕(へきがん)」という意味で、西洋建築にみられる彫像などを置く壁のくぼみのことだそうです。

・たとえ同じ物理的環境におかれていても、それぞれの種が知覚している環境はかなり異なっているのです。このような種ごとの知覚世界を「環境世界(ウムヴェルト)」と名付けました。それぞれの種はそれぞれの環境世界に棲んでいるのです。

・地球環境「問題」というのはあくまで私たち人間にとっての問題だということです。人間が適応してきたニッチが失われるからこそ、それが脅威になるのです。

・人類は高度な知能のおかげでこの数万年のあいだに世界中に分布を広げ、地球を破壊できるほどの科学技術をもつようになりました。人類を取り巻く状況は劇的に変化したにもかかわらず、認知能力を含む私たちの生物学的な特徴は石器時代のままです。つまり、私たちの環境世界と、現在人類がおかれている状況とのあいだには、かなりのずれがあるということです。

・精子も卵子も細胞ですから当然ミトコンドリアを持っているわけですが、精子のミトコンドリアは受精の際に、尻尾と一緒に捨てられてしまうのです。このように、父親のミトコンドリアは決して子孫には伝わりません。

・自然にあるものを利用している限り、人類は生態系の物質循環の中に留まっているしかありませんでした。農業というのは、この自然の生態系を構成している要素から、人間にとって有用なものだけを取り出し、再構成することから始まりました。単純化された新たな生態系を作ることで、人類は自然の生態系からほんの少し独立した存在になったのです。

・農業が始まってから、人類を取り巻く環境はかなり変わったわけですが、1万年という時間は私たちの特徴に何らかの大きな進化が起こるには短すぎます。つまり、私たちの身体的な特徴は農耕牧畜以降の環境に追いついていないといえるのです。では、私たちの身体が何に対して適応してきたのかというと、農業以前の生活、つまり狩猟採集です。

・代償を払わずに利益だけを享受する裏切り者がいれば、相互の協力関係は崩壊します。人間が社会を築き上げ、維持していくためには、裏切り者を排除できるかどうかということが大きな淘汰圧になったと考えられます。

・ライオンに追われたガゼルがしなければならないのは、非常に速く走ることではなく、他のガゼルよりもほんの少し速く走ることです。

・現代人、すなわちホモ・サピエンスが持っている大脳新皮質の割合に見合った集団サイズは、約150人である。つまり、私たちの脳は150人の集団の中でうまくふるまうためにできているということになります。

・巻き貝の殻の巻き方がフィボナッチ数列に従っているからといって巻き貝が数学を理解しているわけではない。



ヒトは環境を壊す動物である (ちくま新書)

ヒトは環境を壊す動物である (ちくま新書)

  • 作者: 小田 亮
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/01/10
  • メディア: 新書



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