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『認知療法の世界へようこそ』 [☆]

・人前で発言を求められるという「状況」下で、不安という「感情」に襲われ、指名されないように「行動」しているあなたの脳裏に、さまざまな思考やイメージ、すなわち「認知」が去来する。

・うつ病の患者は自分のことを能力のない、役立たずの駄目な人間だと思いやすいだろう。それから、目の前の問題を、途方もなく大きくて、手に負えそうもないと考えてしまう。

・うつ病になると、楽しみを実感することが難しくなるから、「しなければならない」ことよりも、「したい」ことを生活の中に取り戻す必要がある。

・白か黒に二分されてしまって、中間の灰色が欠けた世界には、陰影のある段階的な評価法を持ち込む価値がある。一か五かだけではなくて、二も三もあると。たとえ誰が見ても納得できる数量評価でなくても、その患者の中には一定の尺度が出来上がっていく。

・たしかに、「なぜ?」と問いはじめると、答えはどんどん過去に戻っていく。「なぜ悲しいの?」と聞かれると、「叱られたから」と返答する。「なぜ叱られたの?」「言うことを聞かなかったから」「なぜ言うことを聞かなかったの?」「嫌だったから」。どんどん理由が続いていく。だが、「何が?」と尋ねると、少し違った答えが返ってきそうだ。過ぎ去った時に遡るのではなくて、時間が止まって、今そこにある隠された何かがはっきりする感じと言ったらいいのだろうか?

・否定的な考えに挑戦して、修正して、「この状況を最後まで耐え抜くことが大切だ。そうすれば、恐怖を克服できるし、習慣化している自己非難を克服できるだろう」と言いきかせるのです。

・約束の時間に遅れてくる妻を待ちくたびれる夫や、服を脱ぎ散らかす夫に辟易している妻は、相手の行動ではなく、相手の行動に対する自らの意味づけ・解釈によって怒りを覚えているのである。「妻は渡しを気づかおうとしない」とか「夫は鈍感だ」という認知が、憤懣の裏には存在している。



認知療法の世界へようこそ―うつ・不安をめぐるドクトルKの冒険 (岩波科学ライブラリー)

認知療法の世界へようこそ―うつ・不安をめぐるドクトルKの冒険 (岩波科学ライブラリー)

  • 作者: 井上 和臣
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 単行本



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