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『ひらめき脳』 [☆☆]

・ニュートンは、リンゴをはじめとする地上の様々なものが落ちてくるのに、空の上の月が「落ちてこない」ことが、「腑に落ちない」と感じたのです。

・今までの学校教育の指針では、「正解のはっきりとした問題を速く解く」ことを最優先として教えられ叩き込まれてきました。しかしこうした作業は今や、コンピューターが圧倒的な速力でもって担ってしまいます。

・インターネットのような情報ネットワークがインフラとして発達した世界においては、ひとりひとりがよりユニークな存在であるべきという必要性が高まってきます。

・ひらめきは、脳に最大の喜びをもたらします。しかも、その場限りで消えてしまう刹那的な快楽とは異なって、一生消えることのない豊かな恵みを運んできてくれるのです。

・とにかく、何でもありの世界で何とか自分を表現しなければ、国際的な作家として認められないのが、現代アートの世界なのです。

・リラックスできる環境は、表現を変えると退屈な時間、退屈な場所でもあります。しかしどうやら脳は退屈が嫌いではないようなのです。むしろ「退屈という空白」を補おうと、何かを自発的に作りだそうとします。だからこそ、ひらめくのです。

・スランプの状態にあるということは、本当は自分を救ってくれるはずの大切なことに「気づいていない」状態であると言えます。

・それまで気づかなかったことにパッと気づき、風景が一変するような瞬間というのは人生の素晴らしい瞬間です。また、それがいつ来るか期待を込めて待つことが、人生の楽しみともなります。

・人間の記憶というのは、機械のメモリーのように一度蓄えられたら、入力された時と変わらず同じ状態で残るというものではなく、ずっと編集され続けています。つまり時間を経るごとに結びつきや文脈がどんどん変わっていくのです。

・時には、記憶の編集の過程で、「こんな面白いものができたよ」と側頭葉が前頭葉に教えてくれている可能性もあります。

・暗記する、記憶する、ということと、ひらめきや創造性は正反対であると思う人も多いかもしれません。しかし学習によって記憶のアーカイヴがある程度蓄えられていないと、ひらめきも生まれません。無からひらめきは生まれないのです。

・あるひらめきが起こると、それまでと比べて脳の状態が一変し、ものごとが全く違った見え方をします。しかもその違った見え方は、一度獲得すればなかなか消えません。不可逆的なものです。

・私たちは、母国語の言葉の意味を、いちいち辞書を引いて調べるわけではありません。人生のいろいろな局面でその言葉が使われたエピソードを集積して、その中から言葉の意味を抽出するのです。

・私たち日本人の、ネイティブとしての日本語理解がとても重層的で豊かなのは、膨大なエピソード記憶の蓄積があるからです。学校で勉強したはずなのに英語が苦手なのは、エピソード記憶が少ないままに、言葉の意味を、辞書を引くなどして少ない事例から理解しようとしているからでしょう。

・この男を調べて達した結論は、「この男は他の人の脳に比べて優れた何かが付け加わっているのではなく、むしろ普通の人の脳に比べて何かが欠落している」というものでした。つまり、男は「プラス脳」ではなく、「マイナス脳」だったのです。

・ラスコーやショベの壁画は、約3万年前の旧石器時代後期に描かれたものですが、これらの絵の特徴は、現代で言えばサヴァン能力を持つ人の描く絵に似ていると言うのです。

・脳において不確実性に対処するために最も重要な働きをするのは、「感情」なのです。感情は、生物が生きる上で避けることのできない不確実性に適応するために進化してきたと考えられています。

・「最初のペンギン(first penguin)」という英語圏でよく使われる慣用句があります。ペンギンたちは、海に飛び込む時、足踏みをしてしまい、その場所でモジモジと滞留してしまいます。しかししばらくして最初のペンギンが飛び込むと、一斉に残りのペンギンも飛び込む。つまり「最初のペンギン」という慣用句は、勇気を持って新しいことにチャレンジする人を指すのです。

・生き物は基本的に不確実性の世界で生きています。正解は何も保証されていません。しかしいつか決断し行動しなくてはいけません。時間は最も貴重な資源であるからです。その時、最後に背中を押す直感を支えるのが、脳における感情のシステムなのです。

・脳にとっては、世界について学習するというということが、何よりも大切な課題です。特に、人間のように、生まれてくる時は本能を除けばほとんど「白紙」であり、大人になった時に身につけている知識全てが学ばれたものであるという、「学ぶ動物」にとっては、学習することは何よりも重要な本能なのです。

・常に、別の場所、未知の報酬源を探索する努力を怠ってはならないのです。

・ひらめきには無意識との対話が必要です。自分の無意識に常に耳を傾けていなければ、ひらめきのチャンスは少なくなります。自分が何を感じているかを常に意識してモニターすることが重要になるのです。



ひらめき脳 (新潮新書)

ひらめき脳 (新潮新書)

  • 作者: 茂木 健一郎
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2006/04/15
  • メディア: 新書



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